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今回紹介いたしますのはこちら。

「SHIORI EXPERIENCE(シオリエクスペリエンス) ジミなわたしとヘンなおじさん」第8巻 長田悠幸先生・町田一八先生 

スクウェア・エニックスさんのビッグガンガンコミックスより刊行です。

さて、ジミも認める一曲がとうとう完成した前巻。
ですがその会心の一曲が完成した時に井鈴の姿はなく……
抜群の手ごたえがあるからこそ、その現実に戸惑う一同の前にようやく姿を現した井鈴は、その手に退部届を携えていて……!?



一同の前から姿を消していた井鈴は何をしていたのでしょうか。
自分の力不足を実感した彼女が向かっていたのは……吹奏楽部の光岡の元でした。
彼女は川崎から渡されていたCDを聞き……悩んでいました。
この曲に自分が必要なのかどうかはわからない。わからないが……
これを聞いてから、頭の中でサックスが鳴りやまない。
だからと言って才能のない自分では、この曲をアレンジし自分の居場所を作り、皆で演奏をするという望みを達成することはできないことは重々承知。
だから井鈴は考えました。
光岡に、サックスを教えてもらおう、と!!

意外なことに、光岡はそれをあっさりと受け入れてくれてくれました。
もともと井鈴をある程度認めている節のある光岡ですが、だからと言ってここまであっさり引き受けてくれるとは。
驚きながらも喜ぶ井鈴ですが、光岡はたった一つだけ条件を出すのです。
それは……どんなことがあっても、光岡の指示に従う、と言うこと。
彼女と指切りをして、条件を受け入れると約束するの井鈴でしたが……

ですが、なんと言うことでしょうか。
光岡が井鈴を連れていったのは、すばるの元だったのです!!
すばるのレッスンで、井鈴を扱き倒してほしい。
そんなことを言いだす光岡!
もちろん井鈴もすばるも困惑。
すばるはあからさまに機嫌を損ね、なんでそんなことせなあかんねんと猛烈な勢いで嫌悪感をしましますし、井鈴もおびえまくって挙動不審に……
対した努力もしていないのに才能を語る人間が許せないので、スバル先生ならこの子の目を覚まさせたあげられるのではないかと思って、と光岡はすばるに進言するも、すばるはまったく取り合いません。
……が、光岡はそこですばるに耳打ちをします。
軽音部の部員は現在5名、この子があきらめれば4名になって廃部に追い込むこともできる、と!!
軽音部が目障りでならないすばるは、それを聞いてにやりと笑い……こういうのです。
才能を嘆いてええのはな、限界まで努力したモンだけや。
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連れてったろやんかいさ。
限界の向こう側へ。

それから、猛特訓が始まりました。
すばるの吹奏楽部を全国へ導く手腕は確かなもので……傍から見れば、いじめとしかとれないような壮絶なしごきが行われています。
ほんのわずかなほころびも見逃さず、ねちねちと、激しく、罵倒と、確かな指導を与え……
その訓練をこなす井鈴は、舌がしびれてまともに声が出せなくなり、サックスを抑える手の力も入らなくなっていました。
それでもめげずに練習を続け、そしてすばるの指導通り朝から晩まで音楽漬けの生活を続けるのです。
……やがて、井鈴の体は限界を迎えます。
酷使しすぎた舌は、血を流し始めました。
井鈴はそれでもありがとうございます、とすばるに指導のお礼を言うのですが、すばるはここぞとばかりに、痛いだろう、つらいだろう、だったら軽音部なんてやめろ、と迫るのです。
が、それでも井鈴は練習を続けて……

井鈴はその練習の日々の中、少しでも軽音部のみんなに近づこうと、自己流のアレンジを施そうと試し吹きをしていました。
それを偶然、すばるが聞いていまして。
何の曲を弾いていたんだと聞いてくるすばるに、井鈴はありのままを話し、そして尋ねます。
こんなこと先生に聞いていいのか分からないんですけど、今の私の演奏、どうだったでしょうか、と。
自分の目指している場所がどこなのか、正解がわからない。
すばるに意見をもらえればと尋ねたわけですが……
先生に関係ないことを聞いてすみませんと言う井鈴でしたが、すばるは意外にも真面目な意見で返してくれます。
ですがその意見は、辛辣極まりないものでした。
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「無音」と言う。
無色透明で無味無臭、存在が感じられない、当たり障りなく不自由で窮屈、聴くものをイライラさせる不愉快な印象。
アレンジと言うのは演奏者の表現で1を10や100にすること。
けれど「無音」は曲を殺す……

それは必死で0から1を生んだ作曲家に対する冒とくだわ。
……さらに、すばるは井鈴を追い込みます。
今までどんな気持ちでサックスを吹いてきた?
はみ出ないように?浮かないように?笑われないように?嫌われないように?
ひとりぼっちは嫌だから?
誰かに気にいられようと媚びを撃った守りの演奏で、バンドと言う居場所に所属して安心を得たいから?
そんな人間がいくら技術や知識を身につけたって、人の心を動かす音なんて一笑出せない。
もしもこのままごまかしの音を奏で続けるのなら、世界中全ての楽曲をあなたには一息だって吹いてほしくない。
辞めなさい、今すぐに。
……そう言ってたちさるすばる。
残された井鈴は、今までのことを思い起こしていました。
子供のころ、無口で暗い彼女はいじめられているわけでもないのに、自然と暮らすで孤立してしまう存在でした。
いつも一人だった彼女は、高校進学を期に心機一転、無理やりひたすら元気に明るくおしゃべりなキャラを演じます。
協調性を退治にして、自分の意見は二の次で、ひたすら愛想よく引き立て役に徹する。
いつしかそれが井鈴の処世術になり……それでもまた一人になりかけた。
そこで手を差し伸べてくれた本田……
本田の誘いによって、初めて居場所ができた、初めて一人じゃないって思えた。
……ですが、今……軽音部のみんなは、井鈴を置いて上のステップに踏み出そうとしています。
必死に追いすがろうとする自分は……その場しのぎの愛想笑い、何の主張も響きもない無意味な音色、秦のない空っぽな空洞。
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私の全部が、音に出るんだ。

レッスンを受け始めてから10日。
井鈴はとうとう、約束の時間にすばるのもとを訪れなくなったのでした……



というわけで、井鈴の孤独な戦いを描く今巻。
地獄を見た本田達に追いつくために、自らも地獄へと飛び込んだ井鈴でしたが、そこで思い知らされたのは、自分の本当の姿でした。
ギリギリまで体が追い詰められた中で直面することになった、内面の問題。
井鈴はそんな状況で、それを受け入れることができるのでしょうか。
そしてそれを乗り越えることができるのでしょうか……?
井鈴の戦い、その結末は……ぜひ皆様の目でご確認ください!!

そして物語は次なる展開へ。
いよいよ今まで決まっていなかったあれを決める段階になり、久しぶりにネガティブな要素がゼロで一丸になる物語が描かれます。
扱いが適当に見えたあのキャラもちょっと救われたり救われなかったりもします!!
そしてその段階を乗り越えた後、個人的に一押しの光岡さんが主役となる様子のエピソードが開幕!!
こちらもこれから先が見逃せない展開になっていきそうです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!