ys0
今回紹介いたしますのはこちら。

「火傷少女」第1巻 原作・貫徹先生 作画・里見有先生 

双葉社さんのアクションコミックスより刊行です。


貫徹先生はweb小説をメインに活動されている小説家で、代表作は「監獄実験」のタイトルで漫画化もされた「監禁ゲーム」。
今作品で再び先生の著作の漫画化となりました。

里見先生は10年ごろから活躍されているイラストレーターですが、14年ごろから漫画にも挑戦。
今やホラー漫画家としてその地位を確立させた感のある外薗昌也先生原作による「蟲姫」はその画力で読むものを惹きつけました。

そんな二人がタッグを組んだ本作は、とある共通点を持つ高校生の男女を中心に描く物語となっています。
二人の持つ共通点は、二人を奇妙な形でつなぎ合わせることになるのですが……


逢崎要(あいざきカナメ)は、ただただ日々をすごしていました。
ある理由によってあまり居心地の良いとは言えない家も、友達もおらず一人で過ごす学校も、彼にとってはほとんど興味の持てない空間で。
その日も学校に来たものの、一人静かに自分の机で本を読んで授業の開始を待っていたのですが……
そこに、騒がしく教室に駆け込んでくる少女が現れます。
左目を眼帯で隠したショートカットの少女、雛見秕(ひなみシイナ)。
にぎやかでいつも友達に囲まれて楽しそうにしている彼女は、カナメからすれば別世界の存在。
ですがその特徴的な眼帯もあり、カナメが名前を覚えた数少ない人物の一人ではありました。
あの眼帯の下はどうなっているのか?誰も突っ込まないんだよな。
そんな風にシイナに対して興味は持っているものの、それ以上に自分とは関係ない存在だとも思っていまして……深入りすることはなかったのです。

放課後、一人で教室に残っていたカナメ。
夕暮れの色が濃くなったころ、ようやく腰を上げて家に帰ろうと席を立ちました。
教室を出たところ、そこでカナメは何かにぶつかりました。
派手にプリントやらノートやらをぶちまけて転んだ、ぶつかってきたその対象は……シイナでした。
お互いごめんと謝ったものの、ぶつかった衝撃でカナメの眼鏡が落下し、レンズが割れてしまっているのに気が付いたシイナは大慌て。
弁償する、いや、させてくださいと慌てふためく彼女に、カナメは度があってないから別にいいよ、それより散らばったものを拾うのを手伝うよと声をかけるのです。
散らばった紙は、窓から吹き込む風邪などでまた散らばり、シイナはひとり大わらわ。
そんな様子を、騒々しいななどと考えながら見つつ、紙を拾っていたカナメですが……そんな神の中に、「思想ノート」と書かれたノートが混じっていることに気が付きました。
何となく拾い上げて中を開いてみると、そこには
ys1
びっしりと「死にたい」と書かれているではありませんか!!
これ、シイナが書いたのかと冷や汗をにじませるカナメ……
直後、シイナはカナメがそのノートを見ていることに気が付きました!
シイナの表情は、恥ずかしさや困惑……ほかにも様々な感情がないまぜになったもので。
カナメからひったくるようにノートを取り返すと、うっすらと瞳に涙をにじませて……違うの、何となくと言うか、時々止まらなく、じゃなくて……と、しどろもどろになって言い訳を繰り返すのです。
あのいつも明るく騒がしいシイナの見せた思いがけない表情。
それを見るのは自分が初めてかもしれないと感じたカナメは、ついこんなことを口走ってしまいます。
好きだよ、そう言うの。
そのノート、もうちょっと見たいんだけど。
カナメの中には、今まで考えもしなかった感情が沸き上がっていました。
自分とは関係のない世界側の人間だったはずのシイナ。
そのシイナがなぜか、僕の目の前にいる。
初めてかもしれない、人のことを知りたいという感情が……
シイナは、少し驚いたような顔をしたものの、いいよ、この後時間ある?と、意外にも快諾。
そして、カナメを引っ張るようにしてファミレスへと連れていくのでした。

ファミレスで、メガネのお詫びといくつかメニューを注文し、いよいよノートの中身を見ることになりました。
「好き」だなんていわれたの初めてだったから、となぜかほほを染めてノートを差し出すシイナですが、そのノートとともにこんな言葉を投げかけてきます。カナメは死にたいと思ったことある?と。
ストレートな質問に少し驚くカナメでしたが、その後あっさりとあるよと返答。
ホンキノヤツで、結局失敗してここにいるわけだけど、とうつむくカナメに、シイナは死ねなかったことに後悔してるのかとまた直球の言葉を投げかけてきました。
その言葉は、カナメの心を揺さぶります。
そう言えば、あんなに死にたがっていたのになぜ今も平気で生きているのか?
わからない、僕は本当に今も生きているのか……?
突如沸き上がった黒い感情に胸中が掻き乱されるカナメ。
ですがその感情は、いただきます、と丁寧に手を合わせて食事を始める彼女の姿を見て振り払われました。
自分は死にたいというくせに、命の恵みに感謝、的な行動をすることに少しだけ違和感を感じるカナメですが、なんでもそれは昔すぎだった人がやっていたのがうつってしまったのだということ。
恋愛談義はとりあえずおいておきまして、今度こそノートの中身を見る時が来ました。
改めて開いた今度のページは、何かをびっしりと書きすぎて真っ黒になってしまったページでした。
その他には、日記のように書かれた死に対する欲求と、思うがままに感情を書きなぐったような文章がしたためられていてたのですが……カナメがわずかに期待していた、死を望むようになった理由は記されていなかったのです。

帰り際、カナメは思い切ってシイナに尋ねてみました。
死にたくなるような嫌になることがあったわけではないの?
例えば、その左目……
と、尋ねようとした言葉を食うようにして、彼女は答えました。
左目は潰されたんだ。
あの瞬間、いまでも思いだす。
ys2
あれは素敵だったなあ……
そう語る椎名の表情は、幸福感に満ち溢れています。
そこから感じ取れるのは、彼女の「死は至高のものである」という感情……
シイナは、何か気が付いたかのように振り返り、突然カナメに口づけをしてきます。
ys3
明日の放課後、4時に校門集合ね。
連れていきたい場所があるの。
ほんの今まで唇に触れていた彼女の口は、カナメの耳元へと運ばれ、そう囁きます。
そして……彼女は、普段のにこやかな顔に戻り、家へと帰っていくのでした。



というわけで、死を求める少女と、彼女とその思想に何か感じるものがある少年の物語を描いていく本作。
この後カナメとシイナはその距離を急速に縮めていき……そして、シイナの心の奥底に広がる、広大な闇を見ることとなるのです!
死に対する強い欲求を持つ彼女が、カナメを連れていくその場所とは。
そしてその場所で行われる、思いもよらない行為とは。
シイナの行うその行為を見た、カナメは……?
シイナの闇に触れていくにつれ、カナメの中で眠りにつきつつあったある感情と記憶も蘇っていきます。
二人は一体この後どうなってしまうのか?
待っているのは闇に埋もれる終焉か、それとも……?

カナメとシイナ、二人の出会いは破滅を呼ぶのか、その先に何かを見出すのか。
シイナの過去にかかわっているらしい数名の人物も登場し、物語はどんどんとより深い渾沌となっていきます。
そんな貫徹先生の紡ぐ、人の感情の絡み合う気になる物語とともに、「蟲姫」とはがらりと絵柄を変えてきた里見先生の絵柄も魅力です!
「蟲姫」よりもあっさりした絵柄になりつつ、あの独特の雰囲気は保たれておりまして、ショッキングな展開もある本作にマッチ!
予想できない展開のなか、キャラクターの魅力をさらに深めてくれているのです!
触れれば壊れてしまうような危うい二人の関係、まさに目が離せませんよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!