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今回紹介いたしますのはこちら。

「WONDERFUL WONDER WORLD(ワンダフルワンダーワールド)」第1巻 乾良彦先生 

少年画報社さんのYKコミックスより刊行です。


乾先生は01年ごろから活動されている漫画家さんです。
連載デビュー後からヤングチャンピオンをメインに活動後、活躍の場を少年画報社さんや双葉社さんの青年誌、そして週刊少年チャンピオンなどにも広げていきました。

そんな乾先生が16年より連載を開始した本作は、昨今流行りのゾンビもの。
アクションものやスポーツもの、時代ものと様々なジャンルを手掛けてきた乾先生が描くゾンビものは、いわゆる普通のゾンビパニックものとは違う作品となっておりまして……?


仲睦まじく、向日葵畑で写真撮影をする夫婦。
その時は予想もしていなかったことを、5年と言う月日はやすやすと成し遂げてしまうようです。
新型の狂犬病がはやっているというようなニュースが流れるキッチンで、黙々と出社の準備を進める俊明。
キッチンの机の上には、1枚の書類が置かれています。
離婚届です。
離婚届には、すでに俊明の名前が書きこまれていました。
彼の妻である奈那子は、体調が悪そうにせき込みながら、俊明に今日も遅くなるのかと尋ねてきました。
振り返りもせず、たぶんなとそっけなく返す俊明ですが、奈那子は早く帰れそうなら待っている、と言うのです。
それは、離婚についてもう一度話し合おう、と言うためのものではありませんでした。
今日、出ていく前に最後に、昔みたいに話ができたらいい。
そんな彼女の、最後の願いだったのです。
約束はできないが、と家を出ていく俊明……
会社に向かう彼の視界の端には、同じように会社に向かう近所の男性の姿が映っていました。
ですが俊明と大きく違うのは、その男性は奥さんと娘さんに見送られているということ。
その姿を見て、俊明はこう思わずにはいられなかったのです。
俺たちにも子供がいれば、今とは違っていたのか、と。

結局俊明が帰ってきたのは、夜遅くなってからでした。
扉を開けて中に入ると、家は真っ暗で静まり返っています。
電気をつけようとしても、明かりはつきません。
電球が切れてしまったのか、と眉を顰める俊明ですが……この時間では奈那子も出ていってしまったことでしょう。
暗闇の中部屋の中へと進んでいく俊明でしたが、そこで何かにつまずいてしまいます。
目を凝らしてその躓いたものを見てみると……それは、床に倒れこんでいた奈那子だったのです!
慌てて彼女を揺り動かそうとするものの、彼女の体は驚くほど冷たくなっていて……脈も、ありません。
予想外の出来事に慌てふためく俊明ですが、何とか気を落ち着けようと務め、電話をかけようと懐を探すのですが……その時、目の前で驚くべきことが起きてしまいました!
完全に死んでいたはずの奈那子がむくりと起き上がり……
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うめき声とともに、俊明に襲い掛かってきたのです!!
いくら呼びかけても奈那子は聞かず、俊明に噛みつこうとしてきます。
俊明は顔をひっかかれたりしたものの、何とか手近にあって電気の延長コードをつかみ、彼女を縛り上げることに成功。
とりあえず難を逃れることができたのですが……

朝を迎えても、彼女の様子は変わることはありません。
今日は昼から大事な会議がある、でもこのままにしてはおけない、しかし病院に電話してもなんて説明したらいいんだ!?
そんなことを考え、堂々巡りに陥っていると……玄関のチャイムが鳴り響きました。
……昨夜の格闘の音を聞きつけ、誰かが通報していたようで、警察が訪ねてきたのです。
テレビの音かもしれない、これからは気を付ける、ととりあえずごまかしてその場をしのぐのですが……部屋に戻ると、椅子に縛り付けていたはずの奈那子の姿がないではありませんか!!
慌てて探し回りますと、彼女は一心不乱に部屋の片隅にある戸棚を掻きむしっています。
いくら彼女を抑えようとしても、奈那子はそれをやめません。
俊明はこんなになってまで俺を困らせて楽しんでいるのか、とストレスを募らせ……その頭に椅子の破片を叩きつけようとするのですが……
その時、彼女が掻きむしっていた戸棚が壊れ落ちます。
一体そこに何があるというのか?
俊明が様子を見ていますと、彼女は……その中に入っていた指輪を取り出したのです!
それは……
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奈那子の、結婚指輪でした。
彼女はこれを探し求めていた……?
もしかしたら、二人の思い出が彼女をもとに戻すキーになるのかもしれない。
俊明は彼女を再び椅子に縛り付け、その前に二人のアルバムをひろげます。
その中の写真を見せているなかで……俊明もまた、その写真の中に込められた思い出を振り返り始めてしまいます。
あの、向日葵畑での思い出……
そこで二人は、いつか子供ができたら、パパとママの若い姿を見せたいでしょう?
そう言って二人は写真を撮ったのですが、現実はあまりにも残酷でした。
彼女は子供を作ることができず、そのショックで心に深い傷を負ってしまいます。
そして、一番彼女に寄り添っていなければいけないその時に、俊明は仕事に打ち込むことで現実から、彼女から逃げ出してしまっていたのです……
その時になって、ようやく俊明は自分のしてきた愚行に気が付くことができました。
俊明は、そっと彼女の指に結婚指輪を嵌め……そして、こう語りかけるのです。
奈那子、もう一度俺にやり直すチャンスをくれないか。
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次は必ず、何があってもこの手を離さない。

……そして、6日後のことでした。
かいがいしく俊明が世話をした結果……奈那子は……



というわけで、ゾンビ化する感染症が広まった世界で営まれる様々なドラマを描いていく本作。
紹介したエピソードを皮切りとして、場所や登場人物、シチュエーションを変えてそれぞれの物語が展開することとなります。
家の中で疎外感を感じる中年の父親の物語、結婚を目前に控えたカップルに降りかかった悲劇、老夫婦が迎える別れの時……
そんな人間ドラマを、ゾンビ化という病を通じて描いていく、オムニバスドラマなのです!!
ゾンビものと言うのは基本的に感染におびえながら逃げ惑う人々の、ゾンビに対する恐怖と人間同士のいさかいをメインにしているものがほとんど。
「Z」や「血まみれスケバンチェーンソー」のような、ちょっぴりそことは違った作品もありますが、本作はさらにそことも違う、感動系の物語となっているのです!
「ZOMBIE MEN」のようなこっち方面の作戦もありますが、本作はきっちりとゾンビもののポピュラーな世界観を踏襲しながらと言うところで独自の色を出しております。
今までアクション要素の強い作品のイメージが強かった乾先生の新境地と言えるかもしれない本作。
乾先生の確かな画力から生まれるしっかりした恐怖描写と、心動かされる物語、そしてホラーに欠かせないグロテスクさも併せ持った、ビジュアル面も充実しております!
そんな絵柄で紡がれる、ホラーであり、感動ドラマでもあるこの作品、今後どのようなお話が用意されているかも楽しみですね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!