tz0
今回紹介いたしますのはこちら。

「トミノの地獄」第3巻 丸尾末広先生 

エンターブレインさんのビームコミックスより刊行です。


さて、運命に翻弄されるトミノとカタンの地獄巡りを、艶やかに描いていく本作。
トミノはエリーゼとともに汪に連れられて怪しげな宗教の運営に協力させられ、カタンも謎の老人に連れられ体を変形させる器具をつけられた状態で監禁されることに。
さらに二人が身を寄せていた一座の面々も散り散りになってしまい……


カタンを改造しようとしていた謎の老人の手伝いをしていた少女、アヤ。
彼女は何も知らず改造されつつあるカタンを哀れに思う気持ちから徐々に彼に惹かれていき、ついに謎の老人を裏切ってしまいます。
老人が家の中にいる時を狙い、扉を施錠!
がっちりとした作りの小屋の扉は中から開けることはできず、老人を閉じ込めることに成功したのです。
とはいえこのまま閉じ込め続けていくわけにもいきません。
アヤは取り急ぎ、カタンをどこかに隠そうとします。
ここは断崖の絶壁の上、身を寄せる場所に思い当たるところもなく、焦りを募らせるばかりのアヤ……
一方の閉じ込められた老人は、怒り狂っていました!
おのれアヤ、見ておれ!
そう叫びながら、老人はシーツを引きちぎり始めます!!
もちろん八つ当たりなどではありません。
帯状に破ったシーツを結んでいき、一本の長いロープにした老人。
そして窓を蹴破り、ロープを使って弾劾を降り始めたのです!!
……ですが老人の試みはあまりにも無謀なものでした。
断崖はあまりにも高く、切り立っています。
シーツの長さが足りるのか、強度に問題はないのか?
そんな不安もあるのですが、ここで立ち塞がったのが……この何もない断崖に住まい、飢えて餌を求めていたカラスでした。
カラスは足場を確かめるようにしてゆっくり降りていた老人に狙いを定め、強襲!!
背中に、顔にとくちばしが襲い掛かり、老人はついに悲鳴を上げ、シーツをつかむ手を離してしまいました。
真っ逆さまに落下していく老人……ですが、幸いにも断崖に体を打ち付けることもなく、海へと落下することができました。
……が、だからと言って命が助かるというわけではないのです。
老人が、自らの拠点をこの場所に選んだのは、おそらくこの逃げ場のなさゆえなのでしょう。
落ちた海の中には、獰猛な鮫が得物を待ち構えていたのです。
カラスの攻撃によってできた傷から流れ出す血液の匂いは、すぐさまその鮫たちを呼び寄せます。
tz1
鮫は大きな口を開き、その鋭利な牙を老人に……!!

老人の遺体は、惨たらしい姿で発見されました。
手足はもぎ取れ、腸は零れ落ちていた。
そう話し合う村人たちの誰も、悲しそうな顔一つしません。
確かにあんな場所で、あんな怪しげな行動をしていた老人のことを好いていたものなど存在しようもないわけで。
アヤは一人ぼっちになってしまった、とカタンに漏らし……そしてこう続けるのです。
ここで私と一緒に暮らさない?と。
……黙って彩の顔を見つめ続けるカタン。
やっぱり東京に帰るの?
今度はそうたずねても、カタンは彩の顔を見つめ続け……

一方のトミノは、得体のしれない男性に養子として見受けされていました。
画家らしいその男は、トミノに寝床焼き物と言った様々なものを与えてくれ、ついには「お友達」まで与えてくれます。
タミとヤヨイと言う名らしい彼女たちを紹介された後、すぐに今度は家庭教師が来たという知らせが。
友達二人にはもう帰っていい、と告げる男。
そして目まぐるしい変化に戸惑うばかりのトミノに、男はどんどんと言い続けるのです。
先生がここへきてくれる、君は学校には行かないのだ。
必要なものは何でもある、何の不自由もないよ。
……一見すれば夢のような生活にも見えます。
ですが、トミノは得体のしれない不安のようなものを感じてならないのでした。

そしてその不安は現実のものとなります。
タミとヤヨイと遊んでいたトミノですが、そのお友達二人がちょっとしたきっかけで喧嘩をしてしまいます。
もう帰る、とその二人はぷりぷりと怒りながら帰っていってしまうのです。
最初は怖い顔の女中が4時までは遊ぶ約束だ、とすごんだものの、彼女たちはそれでもつまらない、もう来ないと言い残して強引に去っていって……
その様子を見ていたトミノは、何かを思い立ちました。
そして夜になると、すぐにその思いたった行動……脱出を試みようとしたのです!
周囲が静かになったのを確認すると、すかさず扉に飛びついたのですが……何と言うことでしょう、扉にはしっかりとした施錠がされているではありませんか!
tz2
あの謎の男は、自分をこの屋敷の中から一歩たりとも出すつもりがない。
その思惑に気が付き、トミノは絶望に暮れるのです……

一方、二人をバラバラにした元凶である汪と張はと言いますと……こちらも何か不穏なことになっていました。
エリーゼを生き神とした宗教の運営は順調に進んでいった、かに見えていたのですが、まるでトミノをエリー座から引き離したのをきっかけにしたかのように悪いことが続き始めていたのです。
教団のシンボルにしようと建設を急がせていた巨大エリーゼ像。
その建築中に相次いで事故が起こり、瞬く間に三人もの犠牲者が出てしまいました!
これで三人目か、と教団を仕切っている張は柱にもたれかかりながらうなだれます。
ちょうどその横では、トミノがいなくなって以来不機嫌が続いているエリーゼが、食事を嫌がっているところで。
作業者たちは不気味に思って仕事に来なくなりますし、張にまつわる噂も広がり、たまたまなのか、信者の中にも病でなくなるものが続出。
教団はどんどんと勢いを失っていくのです。
そんな光景を目の当たりにさせられてしまった張。
その中には、どんどんと不安が広がっていきます。
tz3
ただの見世物小屋の太鼓叩き、何もできるわけがない。
張は自分に言い聞かせるように、胸の中でそうつぶやくのですが……
その絶望は、やがて張を押し潰すほどに大きくなっていくのです……



というわけで、それぞれに圧し掛かってくる絶望が描かれる今巻。
エリーゼのもとで暮らしていた頃のトミノは、カタンがいないということ以外はそれなりに幸せな日々を送っていました。
ですが謎の男に養子に出された後は、かごの鳥のような生活を強いられてしまい……
この謎の男の目的はいったい何なのでしょうか。
まさか本当にこのまま自分の娘として、大切に育てていってあげよう、などと言う考えなわけがないはず。
おびえるトミノは、この鳥かごの中から逃げ出すことができるのでしょうか。
仮に逃げ出せたところで、身を寄せる当てもないわけで……
トミノの地獄めぐりは、まだ終わることはないようです。

逆に解放された形になるカタンは、これからどうするのでしょうか。
自分に思いを寄せているアヤと添い遂げるのか、それとも自らの半身であるトミノを探し彷徨うのか。
心の奥の深い部分で繋がっている2人だけに、トミノの運命を左右するのはおそらくカタンでしょう。
果たしてカタンの取る道は?
トミノを助けるのか、それとも……?

さらにエリーゼを巡る話も一応の決着を見ることとなります。
あどけない子供のようにふるまうエリーゼですが、本当にその真実の姿はただの何もできない子供なのでしょうか?
彼女の神秘性に翻弄される形になった張、彼が選ぶ道とは。
エリーゼはその張の行動に流され……そして……?

そんな残酷な運命を、丸尾先生の筆致で劇的に、艶めかしく描いていく本作の魅力は健在。
グロテスクでありながらエロティックな描写に引き込まれ、そして物語の全体を流れるように描きつつも、登場人物一人一人の物語もしっかりと描くストーリーにも惹きつけられる。
目も心も離せない本作ですが、いよいよ次巻で完結!!
この美しくも残酷な世界で、物語はどのように終着を迎えるのか?
やはり最後の最後まで、本作から目を離すことは許されないようです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!