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今回紹介いたしますのはこちら。

「君花さんのスイーツマッチ」 石坂リューダイ先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。


石坂先生は10年に週刊少年チャンピオンの新人賞を受賞してデビューした漫画家さんです。
その後読み切り、短期連載を経て、15年より「羽恋らいおん」を連載。
連載終了後の16年より本作の連載を開始しました。

石坂先生と言えばバドミントン漫画、と言うイメージがありましたが、本作はテニスと言うラケットつながり(?)のスポーツを取り扱いつつ、昨今流行りの食事漫画となっております。
その内容はと言いますと……?



テニス部で、ちょっとした事件が巻き起こっていました。
一年生のエースである千夏が、まだ入部して半年もたっていないというのに、部のエース君花に勝負を挑んだのです!
生意気だとささやく声も聞こえるなかでも、君花は動じません。
たまにはこう言うのもいいんじゃない?
むしろ、私に挑戦するその意気やよしだわ。
でも、勝つのは私。
そう自信を漲らせて行われた戦いで……
君花は、まさかの敗北を喫してしまうのでした!!

日も暮れ、部員たちは次々に帰宅していきます。
そんな中、君花は一人部室に残り、ゆで卵をもぐもぐと食べながら物思いにふけっておりました。
二年の自分が、入部して半年の一年に敗北。
情けない、明日からどんな顔して部活に出ればいいのか……
そんなことを考えながら沈んでいた君花ですが、そこに一人の男が現れます。
また運動後のゆでたまごか、テニスのための食事ってのはわかるが、精進料理みたいだな。
そう言いながらやってきた彼は、このテニス部の監督である仲田です。
彼の目的は当然ゆで卵へのツッコミを言うため、ではありません。
話がある、と切り出してくる監督……
断る理由もない君花は、大人しく監督に導かれるままついていくことにしました。
監督直々に話がある、と言われ、しかも部室ではなく場所を変えて、というシチュエーション。
君花は、おそらく先ほどの敗戦についての話だろう、やはりレギュラーから外されてしまうのだろうか、と不安を募らせるのですが……

監督が足を止めた場所は、まさかのスイーツ屋さん。
きらびやかな外見に、うら若き乙女たちが楽し気に談笑しながら舌鼓を打っているその光景に、君花はすっかり気後れしてしまいます。
こう言ったお店に入るのが初めてだという君花、まるでおとぎの国の様だ、と複雑な胸中が一層複雑になっていってしまいます。
そこでようやく切り出された監督のお話。
その内容は……気分転換だよ、という実にあっさりしたものでした!
近頃「美味しいもの」を食べていないであろう君花に、たまには甘いものでも食べて気分を変え、ついでにテニスの調子も好転させようと考えたのだとか。
ちなみにこの監督も甘いものが大好きで、この機会に一人では入りづらいこのお店に入ろう、という私欲もあるようですが!
……ところがその話を聞いて、君花の機嫌は一層悪くなってしまいます。
自分にとって食事は、いかにテニスにつながるものかどうかで、「美味しい」など必要ない。
それにスポーツマンにとってカロリーの高い甘いものは毒でしかない!
そう断言し、自分は水だけで良いと監督の誘いをきっぱり断ってしまうのです!!
が。
もうすでに注文はされた後でした。
机に運ばれて来る、チョコムースサンデーふたつ。
かたいこと言ってないで、注文したんだから食えよ。
監督はそう言って自分温分を食べ始めてしまいました。
流石の君花も、このまま意地を張って一口も食べない、などと言う子供じみた真似はしません。
甘いものを食べて調子が良くなるほどテニスは甘くない、とスイーツに対しての対抗心を燃やしながら、スプーンでひと掬い、バニラアイスを口に運びます。
するとどうでしょう。
まるでチョコパフェが放つ強烈なスマッシュを受けたかのような衝撃が襲い掛かったのです!!
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目を輝かせつつも驚愕する君花!
一口口に含んだだけで、チョコレートとクリームが力を合わせて私の舌を……!?
体のバランスに良いものだけを取り続ける食生活、そこに明らかに上限を超える糖分・カロリーが含まれたチョコレートパフェ……
沁みる、身体に!!暴力的なほどに!!
食べるだけで普段はしない変な顔になってしまう、と言うところまで追い詰められてしまった君花でしたが、まだ彼女は踏ん張ります!
こんな甘いものなんかに絶対屈したりしない!!
そう思っていた矢先に襲い掛かってきたのは、別添えのチョコレートソースです。
それをこのパフェに少しずつかけながら食べていくといい、と言う監督のアドバイス……その通りにしてしまえば、どうなってしまうか……君花は薄々わかっていながらも、自分の手を止めることができませんでした!!
チョコレートソースをアイスクリームやバナナにかけ、そして口に運ぶ……
そうして生み出される美味しさは、今までの10倍、いや20倍!?
顔をとろけさせながら、おいしい、と漏らしてしまいそうなところをかろうじてこらえる君花!!
ですが、その味は彼女に認識を改めさせるのには十分なものでした。
自分はテニスに対して少しまっすぐすぎたかもしれない。
時にこう言うものを食べて喜ぶゆとりが心の中にあれば、今日の試合結果も違ったかもしれない……
そんなことを考えながらパフェを口に運んでいますと……自然と、漏れだしてしまうのです。
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美味しい、と言う声と、涙が……

翌日から、嘘のように君花の調子は復活!
千夏へのリベンジに向けて、着々とパワーアップを遂げているようです!
俺のおかげか、パフェのおかげかと笑う監督でしたが、君花はそんな監督にこう言うのです。
先日は少し不覚を取りましたが、私は甘いものを認めたわけじゃありません。
次は勝つ。
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次の甘いものには、絶対負けたりしないですよ!!



というわけで、君花のスイーツとの戦いを描いていく本作。
テニスのシーンもあるにはあるのですが、なんといっても本作の肝は君花がスイーツを食べ、スイーツには勝てないよとなるシーンでしょう!!
実在する様々なお店に足を運んでいく君花さんは、その行く先々でスイーツたちの繰り出してくる強烈なショットにメロメロ!!
いつものツンツンした彼女の表情が、スイーツによってとろけさせられる姿をたっぷり堪能できるのです!!
さらにこの後、宿命のライバル(?)である千夏や、転校生のエイミーと言った新キャラも登場し、スイーツ仲間が増加!!
もちろんただ登場するだけではなく、彼女たちの魅力もしっかり描かれておりますし、お話し的にも絡んでくることになるのです!!

全1巻となっている本作ではありますが、千夏のストイックさの源泉であるある人物のお話など、物語の背景なども投げっぱなしにせず消化。
スイーツを食べてとろんとする漫画にもかかわらず、ラストもきちんと感動させてくれるまとめ方もされておりまして、巻末のおまけ漫画まで含めて最後までたっぷり楽しめる内容に!!
そして「羽恋らいおん」時代からさらに磨きの掛けられた女性キャラのかわいらしさがそれらに拍車をかけてくれているのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!