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今回紹介いたしますのはこちら。

「レイリ」第3巻 原作・岩明均先生 漫画・室井大資先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックス・エクストラより刊行です。



さて、「戦って死ぬ」、そして先に逝った家族に会うことのみを目的に生きている少女、レイリの数奇な運命を描いていく本作。
彼女は思いもよらないことから、なんと武田の未来を担う少年・信勝の影武者となることに!
他の影武者の少年たちとともに、影武者としての技術を磨いていたのですが、突然そこに刺客がやってきて……!?



飛来した矢に体を貫かれる、信勝の影武者の一人・和助。
目の前でその惨状を見てしまうことになった信勝は、思わず悲鳴を上げてへたり込んでしまいました。
続いて飛んでくる第二射は、また何本も和助の体を貫き……へたり込んでしまっていた信勝のすぐ横の柱にも突き立ちました。
和助はその傷によって腰から崩れ落ちます。
血まみれの和助の姿は、さらに信勝をおびえさせ……
その時あげられた悲鳴を聞きつけ、レイリと土屋が駆けつけます!!
完全に腰を抜かしてしまった信勝は、けがはないかと尋ねてくる土屋に対し、おびえながら矢の飛んできた方向を指さすのが精いっぱい。
そしてすぐ、屋敷の奥へと逃げ込んでいくのです。
土屋は庭に降り立ち、敵襲ぞ、出合え、と大声を張り上げて臨戦態勢を整えます。
レイリはと言いますと、すぐに和助の傍へと駆けつけるのですが、彼女の役目を考えれば和助のことは放っておいて、信勝のもとへ急がねばならない所。
土屋はそう指示するのですが、レイリはわかっていると答えながらも、和助のそばを離れません。
土屋はそんなレイリに何か言いたそうですが、こちらもそれどころではなく……やむなく部下たちと曲者のウイルほうへと走るのです。

荒い息を吐く和助。
しっかり、大丈夫、必ず助けるから、ととにかく気をしっかり持たせるための言葉を告げるレイリ。
ですが和助の耳にはもうその言葉は届いていに要です。
涙を流しながら、必死に絞り出す言葉は……おっ母、おっ母、と言う……母を呼ぶ声。
レイリはそんな和助の手をそっと握り、優しく語りかけるのです。
大丈夫、心配しないで。
……そんな優しい声と、微笑みを見た和助は……安心したかのように目を細め……
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そのまま俯き、二度と動くことはありませんでした。

誰もいない、真っ暗な部屋の中で一人座っている信勝。
そこにレイリがやってきて、お怪我は、と尋ねました。
信勝はそれに答えず、背中を向けたまま動きません。
レイリは続けて、和助どのは死にました、と告げると……わずかに信勝の体が震えだします。
本当だったんですね、影武者は遊びじゃなかったんだ。
レイリが今になってそんな感想を漏らしますと、信勝はようやく口を開き始めます。
当たり前じゃないか、わしを誰だと思ってる!
和助の役立たずめが、まだ全然ワシに似ておらんじゃないか、話にならん!
そんな心ない言葉に、レイリは和助は立派に身代わりになったのに何でそんなことを言うのか、と思わず反論してしまいます。
信勝は、だがそれが本来の役割だと答え……そして、レイリに尋ねてくるのです。
死にたがりだそうだが、和助に先を越されてうらやましいか?と。
レイリはと言いますと、うらやましくはないけど、私もちゃんと身代わりになって死にますよ、ともの叔父もせず答えます。
……信勝はぐっと自らの拳を二位切り締め、怒りのままに叫びます。
どいつもこいつも気楽なやつらめ、自分1人が死ねば終わりか、じゃあ死ね、とっとと死ね!!
そう怒りを吐きだした後は、恐怖が襲ってきたのでしょうか。
レイリに、レイリは零里と書くのだから、常に一里以内の場所にいて、自分が呼んだらすぐに来い、と先ほどとは打って変わって弱々しく語りかけたのです。
わかりました、矢が飛んできても私が盾になり……と、レイリが信勝の言葉を受け止める返答をしておりますと、信勝はようやくレイリに向き直り……その服の袖をつかんで……
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とうとう涙をこぼしたのでした。

後日、信勝はこんなことを言いだしました。
影武者育成を再開する。
あの屋敷ではない違う場所で、「こっそり再開しました」と言う形で。
そんなことをすれば、また襲われてしまうかもしれない、とレイリが口をはさむのですが、それこそが信勝の狙いなのです。
影武者育成の屋敷に迎撃の人員を配置し、信勝本人を餌にして刺客をおびき寄せる!
そんな諸刃の剣ともいえる作戦……!!
敵も領地の外から潜入してくるならせいぜい数人がいい所、だから警備もできるだけ人数を少なくしてより資格がやってきやすくしよう、と信勝はいいます。
腕の立つ土屋がいるなら10人もいればいいだろう、と信勝が言うと、そこでまたレイリが私も結構腕が経ちますよ、と口をはさみました。
すると信勝、だったら七名で良い、と言い残し、会議の場から出ていきます。
レイリの余計な一言で警備は一層手薄になってしまったわけですが……
一体信勝はなぜこんな作戦を考えたのでしょうか。
土屋は、あの方は武田の希望なのだ、信勝さまが来るというのだから刺客は来るのだろう、と盲従するかのような言葉を繰り返すばかりです。
レイリはと言いますと……あの日のことを思い出し、信勝のことをこう例えました。
小さな両肩がガッチガチで、普通の子供にはあり得ない姿って言うか……
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この子、背中に山でも背負ってんのかな、って思いました。
……そう、信勝が背負っているのは武田家という巨大すぎる山。
土屋はレイリの言葉を聞くと、何も答えることはできなかったのです。

……やがて、その日は本当にやってきてしまいました。
信勝の言う通り、影武者育成の場となった屋敷に……賊が侵入するという、事態が!!



というわけで、信勝のもとに刺客が放たれてしまう今巻。
影武者の道を歩き始めてからは、どこかのどかな感じもあった本作ですが、子の襲撃から一気に物語全体に危険な香りが漂うことになるのです!!
織田に狙われている武田、その跡取りと言う信勝が狙われるのは自然と言えば自然。
ですが、その危険がこうもあっさりと襲い掛かってくるとは、レイリはもちろんの事、信勝自身も思ってはいなかったのでしょう。
この出来事をきっかけに、信勝の心の中で大きな変化が起こったことは間違いありません。
その変化が、この後の物語にどんな影響をもたらすのか?
この後、襲い掛かってくる刺客との戦いを経て、物語の毛色はさらに変わっていきます!!
変わっていく信勝、そしてその変化に翻弄されるレイリ……
しかしレイリもあの性格ですから、翻弄されるまま流されるということなどあり得ません!!
一体この後、物語はどう転がっていくのか?
そしてその先に待っているのは、史実通りの武田家の最後なのか、それともレイリの望む終焉なのか?
これから先の展開も楽しみでなりませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!