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今回紹介いたしますのはこちら。

「いつかみのれば」第1巻 西あすか先生 

一迅社さんの百合姫コミックスより刊行です。


西先生はアニメ制作をメインに活動されておられましたが、09年に四季賞で佳作を受賞し、そのあたりから漫画家としての活動も始められました。
11年には自身がデザインしたカードゲームのマスコットキャラクターを主役にした漫画「しよ子といっしょ」を連載されまして、本作はそちら以来となる新作、初のオリジナル作品の単行本となるようです!

そんな本作は、連載雑誌の特性上必然ともいえる(?)女性キャラクターをメインに据えた作品なのですが、その雑誌の中では珍しいといえる「格闘ゲームプレイヤー」の漫画になっております。
格闘ゲームプレイヤー漫画、と言うのは「ハイスコアガール」あたりから徐々に増え始めておりまして、実在のレジェンドプロゲーマー・ウメハラの伝記的な作品「ウメハラ」シリーズや、萌え系4コマ「かくげいぶ」、プロゲーマー密着リポート型の「突撃!となりのプロゲーマー」、架空の格闘ゲームを中心にしたドラマを描いた「バトルメサイア」など、多くはないながらも一つのジャンルとして数えられるまでになってきています。
こちらの作品はそんな中で、「七海の623」に通じる、光るもののある初心者がステップアップしていく系の作品となるのですが、さりげなく注目したいのが、いわゆる「3D格ゲー」を取り上げたものであること!
他の格闘ゲームプレイヤー漫画は俗にいう「2D格ゲー」を中心にしたものがほとんどだっただけに、格ゲープレイヤーとしてはまずそこが引っかかってくるところ!
……前置きが長くなりました。
そこはそれとしまして、お話の内容はと言いますと……?



プロ格闘家の娘である揺篭みのる。
その格闘家であるお父さんはもう39歳、キャリアもまさに最終版を迎えるころになっていました。
そこで最後の最後に本場で限界に挑戦したいとのことで、家族でラスベガスに引っ越そうと言いだし……
急なアメリカへの引っ越しの話を持ち出され、みのるは悩みます。
確かに父の格闘家としての最後の願いを聞いてあげたいところなのですが、みのるは高校に入学したばかり。
自分の生活があるのに、アメリカに急に行くことになっても困る……と言いたいところだったのです、が。
あまり人と接することが得意ではないみのる、学校でお友達もおらず、寂しく学校で過ごしているうちに、心機一転引っ越すのもいいかも、と思い始めてしまいます。
ところが先日行われた英語のテストが悲惨な結果だったのを知ると、やっぱりラスベガスなんて無理!と一気にその気持ちがなえてしまうのです。

家に帰ればきっと、両親のアメリカ行きへの熱のこもった説得が待っているはず。
それを考えると帰る足取りの重くなるみのるでしたが、そこですれ違った女の子になぜか視線がひきつけられてしまいました。
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同じ学校の生徒らしい彼女は、街の中をずんずんと歩いていき、とあるビルの地下への階段を降りていきます。
それを追いかけていくみのるでしたが、薄暗い階段はなんだか危険な匂いがするようなしないような。
みのるは意を決し、その階段を降りていくのですが……そこは、ゲームセンターだったのです。
一人でゲームセンターに入るのが始めたなみのるは緊張しますが、勇気を出してあの女の子を探します。
するとちょうど格闘ゲームの大会の映像が流れておりまして、その映像の大会はものすごい盛り上がりを見せていました。
思わずその様子に見行ってしまうみのるでしたが、その大会を制したのが女性だったことにさらに驚かされるのです!

先ほどの大会でプレイしていたのはこのゲームかな、とあたりをつけたみのる。
すると探していた女の子は、そのゲームをプレイしておりました。
うちの学校でもゲームをやる子がいるんだ、などと思いながら、女の子の向かいの席に座り……探り探り、筐体に100円を投入します。
もちろん何も知らないみのる、これで向かいの女のことの対戦になるなんて思いすらしなかったわけで。
何もわからないまま、とりあえず画面に表示されたキャラクターの中から、プロレスラー的なキャラクターを選んでみるのです。
もしかしたら自分も、あの映像の女性のようにかっこよくプレイできるかもしれない。
そんな淡い思いを抱きながら。

ところがどっこい、待ち構えていたのは現実です。
開幕に浮かされ、そのまま空中コンボを叩き込まれるみのるのキャラクター!!
何をどうすればいいのかわからないままゲームは無情に進んでいき、私のキャラがずっと空を飛んでる、と絶句しているうちにゲームは終了……!
一瞬で終わった初体験に、思わず涙目になるみのるですが、そこで向かいの女の子がもしかしてこのゲームやったことないのか、と話しかけてきたのです!

何も知らないみのるに、女の子はいろいろと教えてくれます。
まずは技の出し方、レバーの持ち方、そしてガードの仕方、と基本をノリノリで教えてくれる彼女。
みのるはそんな教えに、幼いころ父から教わった格闘技のことを思い出しました。
格闘技はうまくできなくてすぐやめてしまったのですが、なぜ彼女は初めて会ったみのるにこんなに真剣に教えてくれるのでしょうか?
教えてくれてありがとうとお礼を言ったみのるに、女の子はこう返しました。
初心者への指導も業界の発展には重要だからね。
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私、プロゲーマーになりたいの!

プロゲーマー志望の彼女は、四条と名乗りました。
四条は、対戦で実際に教えたことをやってみよう、とみのるとの対戦を開始。
まずはガードをしてみて、と攻撃を繰り出すのですが……
その練習中も、父のことが頭によぎるのです。
父もすごく努力して戦ってるんだから、応援しないといけない。
やっぱりラスベガスだ。
そんなことを考えておりますと、向かいから四条がなんでこのゲームをやろうと思ったのかと尋ねてきます。
素直に先ほどの映像を観て、女性プレイヤーがカッコいいと思ったから、と答えるのですが……
その女性プレイヤーの映像を観るなり、四条の表情が険しくなるのです。
その感情をぶつけるかのように、早い攻撃を連打してくる四条!!
最初は面食らうみのるでしたが、早い攻撃はあまりダメージを負わず、遅い攻撃をもらうと大きなダメージを受けるということにいち早く気が付いたようです。
そして四条を驚かせたのは、ふいに出した足払いをきっちりしゃがみガードして見せたこと!
なかなか反応が難しい下段をガードしたことにも驚きなのですが、みのるは中下段連係と言う知っていないとガードするのが難しい連携もガード!!
さらに、発生18フレームと言う見てから反応するのが難しい下段技も確実にガードして見せたではありませんか!!
何を振ってもガードされる……!?
まさかの「ガードしているだけ」の相手にプレッシャーを感じてしまった四条は、とうとう投げからの起き攻めというガチの攻めで勝負をつけてしまいます。
みのるは、やっぱり難しいですね、とお礼を言って立ち去ろうとするのですが……
まったく他のゲームをプレイしていないという彼女が見せたあのすさまじい反応速度を見せられた四条は……こう声をかけずにはいられなかったのです!
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私と一緒に格闘ゲームやって、と!!



というわけで、二人の出会いから幕を開ける本作。
いきなり主人公がラスベガスに行くことになる直前に出合った二人、当然ネックになるのはその引っ越しになるわけですが、そのあたりはこの後解決(?)することになります。
そして格闘ゲームの練習に打ち込むことになるのですが……
やはりと言いますか、四条は最初からものすごい勢いでいろいろ教えようとしてきまして、その圧にみのるはドン引きしてしまうことになります!!
困り果てる彼女ですが、そこでもう一人の主要キャラクターであるZTTという少女が登場し、物語が本格始動!!
女の子同士が真剣に格闘ゲームに打ち込み、そして打ち解けていくドラマがスタートするのです!!

そんなソフト百合要素もたいへんよろしいのですが、やはり目を惹くのは格闘ゲームの入門書的な要素です!
フレームと言った格闘ゲーマーには常識でも、一般的には知られていないものの解説から、3D格ゲー……といいますか、ぶっちゃけ「鉄拳」シリーズの基本(作中では「アイアンキャットデストロイヤーズ7」という作品ですけど!)をどんどんと盛り込んでいるのです!!
3D格ゲーをプレイしようと言う人はもちろんの事、すでにやっている方も頷ける内容となっています!!
主人公のみのるの、人間性能の高さには正直クリビツですけど……!!
ともかく、今後につながる要素も用意され、格ゲーでの対戦及び練習とその楽しみ方、ストーリー、そしてソフトな百合要素とあれこれ盛り込まれた本作の今後に期待せざるをおえません!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!