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今回紹介いたしますのはこちら。

「好角家 愛敬紗英 今日の一番」第1巻 林ふみの先生 

アース・スターエンターテイメントさんのアース・スターコミックスより刊行です。

林先生は95年にガンガンの漫画賞を受賞し、96年にデビューした漫画家さんです。
主にスクウェア・エニックスさん系列の雑誌と、角川さんの月刊あすかなどで作品を発表しておられまして、代表作は丸3年の連載となった「新世紀エヴァンゲリオン 鋼鉄のガールフレンド2nd」のコミック版でしょうか。
そんなメディアミックスモノの作品も多い林先生ですが、完全オリジナル作品となる本作、その内容はと言いますと……?



愛敬紗英。
アラサーOLの彼女は、くそ真面目、と言うイメージを持たれている、パッとしないビジュアルの女性です。
ですが彼女には、会社のみんなに内緒にしているある趣味がありました。
それは……

土曜日の朝、彼女は同僚の代わりに休日出勤に向かっていました。
が、休日出勤と言うことでいつもと比べて遅めに出勤できることを利用し、彼女はある場所へと立ち寄るのです
それは……会社の近所にある、相撲部屋の名古屋宿舎です。
そう、紗英はこうして、相撲部屋の朝げいこを見学するほどの相撲好き、好角家だったのです!!
そんな彼女のお気に入りは、前野川と言うまだ19歳の幕下力士。
十代にして幕下西三十七枚目という有望株なのですが、紗英がお気に入りなのはその強さやあどけなさの残るかわいらしい容貌……だけではなく、
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立ち合いの時にフリフリとフラれる彼のおしりなのです!!
立ち合いの時に力を溜めるために尻を揺らす相撲取りと言うのはそれなりにいるのですが、この前野川ほどフリフリ振るものはなかなかおりません。
そんな彼がかわいくて仕方のない紗英なのですが……この前野川、生来ののんびり屋気質がたたってか、今一つ伸び悩んでいるのです。
最近は幕下の中位を行ったり来たりしている始末で、ファンとしては何とかこう、もう一つ上に行ってほしい所。
そんな親心めいた感情で稽古を見ておりますと、そろそろ行かなければいけない時間になってしまいました。
そこで紗英は、稽古途中で失礼します、と大きなスイカを差し入れに渡し、宿舎を後にしようとしたのですが、そこにこの山里部屋の後援会員である宮下さんがちょうどやってきました。
農家である宮下さんの持ってきた差し入れは、たっぷりのお米。
自分もあれくらい差し入れできたらなぁ、と思いつつ、宮下さんに軽くあいさつをして紗英は去っていくのです。
宮下さんは、そんなあいさつをしてきた紗英に今一つ心当たりが見当たらないような顔をするのですが……?

お昼にご飯を買いに会社を出た紗英。
すると、偶然買い出しに来ていた山里部屋の力士たちと鉢合わせする幸運に恵まれました!
しかもそこにはひいきの前野川もおりまして、彼は大好きな駄菓子をたっぷり買い込んでおります。
感動しながらも、そんなものじゃなくてご飯をたくさん食べて立派な体を作りなさい、と心の中で喜びながらしかりつける紗英……!
ですが、おもむろに封を開けて、俺めんたい味が一番好きだな!と、駄菓子の代名詞ともいえるおいしい棒の奴を食べる前野川の笑顔のまぶしさにやられてしまうのです!!
できることならたっぷり差し入れしてあげて、立派な力士になってほしい。
そして、インタビューなんかでずっと応援してくれた愛敬さんにお礼を言いたいなどと言ってくれたりしたらもう……!!
そんな妄想がはかどる紗英ではありますが、彼女はしょせんOL。
名古屋場所はもちろんの事、他の場所にも2~3回は観戦に向かう彼女、当然お金がそれほどあるわけもありません。
紗英にできるのは、結局全力で応援することくらいなのです。

そして、名古屋場所の初日がやってきます。
前野川が全力でぶつかる今場所の初日、自分も覚悟を決めてしっかり見てこなきゃ!
そう考えた紗英は、気合十分、おめかしをします!
化粧もばっちり、髪の毛は後ろでまとめ、いつもの眼鏡をコンタクトに。
そして何より大事な
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和服で準備完了!
流石の紗英は、前相撲が行われる前から会場入りし、じっくり腰を据えて観戦しております。
が、やはり気になるのは前野川。
幕下以下の相撲取りは一場所につき基本的に七番しか相撲を取りません。
それだけに、ひとつの星が大きく番付に影響を及ぼします。
しかも幕下と言うのは、下位から駆けあがってきた相撲取りと、関取の座を明け渡した相撲取りがひしめく激戦区。
一戦一戦の重みは相当なものなのです!
難しい顔をして取り組み表を見ておりますと、そこにあの宮下さんがあらわれ、にこやかに紗英にあいさつをしてきました。
どうやら宮下さん、この感染時の勝負服の紗英の姿のほうが印象が強いせいか、あの普段の地味モードの紗英を同一人物だと認識できていない様子……
そんなある意味失礼な事実にお互い気が付かず、宮下さんは前野川は調子がよさそうですね、と声をかけて自分の席へと向かって行くのです。
緊張の初日……前野川はいつものフリフリの後、相手へとつっこみます。
差し手争いに勝利し、前野川は得意の右四ツに!!
そのまま見事な下手投げで勝利をつかみ取ったのでした!!

前野川の取組を毎回見に行く紗英。
前野川はどうも連敗癖があるようで、負けると負け続けることも多く……見ている方も安心できません。
そんな紗英の心配をよそに、前野川は白星を積み上げていき、まさかの七戦全勝を果たしました!!
ですが今場所は調子のいい力士が多かったようで、4人での優勝決定戦を行うことに、
全勝した時点でバン助の大幅アップは確実だから、期待しすぎないようにしよう、と心に言い聞かせ……薄めで決定戦観戦に挑む紗英。
初戦、前野川は東十一枚目の須々木と対戦することになったのですが、気合が入りすぎていたのか、須々木は腰砕けで自滅。
前野川はラッキーな勝利を手にすることができたのです。
宮下さんは、ツイてる、ひょっとするかもしれないね、と笑うのですが、なんだか優勝するすると言っていると、優勝しないフラグが経ってしまうような気がして紗英は飢餓じゃありません。
でも次に勝ったら、本当に……と、胸は高鳴ってしまうのです!
決勝の相手は……
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東五枚目、宇羅留。
ロシア出身、身長2メートル近い、長身の筋骨隆々の相撲取りです!!
素早い動きと鋭い突きを武器とし、レスリング経験もある宇羅留、先場所は十両だったものの怪我で途中休場していた、関取クラスの実力を持つ超難敵です!!
果たして前野川は勝つことができるのか!?
怪我した箇所にまだテーピングしているから本調子じゃないかもしれない、いやいやでも……
期待と不安が入り混じる紗英、やっぱり薄めで観戦。
熱い視線が集中する中、立ち合い!!
宇羅留が選択したのはカチ上げで、その肘を前野川は顔面にもらってしまい……流血!
ですが何とかこらえ、右を差し……?
果たしてこの勝負、勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか!?



というわけで、紗英の相撲愛に満ちた日常を描いていく本作。
この後も、紗英……と、前野川の奮闘は続いていきます!!
前野川のいろいろな行動を、一喜一憂していく紗英。
そんな様子を相撲ファンのあるあるや、本場所や巡業の観戦マナーなどを交えつつ描かれていくわけです!
さらにこの後は前野川のライバルで友人の力士が登場してみたり、同じく相撲好きの観戦仲間であり、意外な職業についている女性キャラが登場したりと、にぎやかさを増していきます。
相撲ファンならば楽しめること間違いなし、相撲ファンでなくともキュートなキャラクターの見せる真剣な応援とお茶目な姿にほっこりできることでしょう!!

現実の相撲も最近では盛り上がりを見せているだけに、漫画のほうも今までにないほど相撲漫画が増えてきております。
相撲漫画自体は昔から途切れず発表はされていましたが、本作のような「相撲ファン」漫画と言うのは本作が初めてではないでしょうか……?
本作でそんな、独特の味わいを堪能してはいかがでしょうか!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!