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今回紹介いたしますのはこちら。

「食糧人類 -Starving Anonymous-」第3巻 原作・藏石ユウ先生 漫画・イナベカズ先生 

講談社さんのヤンマガKCより刊行です。


さて、ナツネの衝撃の正体が明かされた前巻。
自分の呪われた運命を覆すために、人類を支配する巨大生物を全滅させると誓うナツネですが、相手はあまりにも強大な存在で。
屋根裏に潜み暮らす小倉と出会い、ある程度施設内を動き回れるようになったのですが、それでも巨大生物を倒すというのはあまりにも途方もない話におもえます。
ナツネは本当に生身であの生物を絶滅させるというのでしょうか……



巨大生物を一体、文字通り身を挺して仕留めたナツネ。
屋根裏で一休みと行きたいところでしたが、小倉はもう慌て放題に慌てています。
ナツネに貴重な衣服を奪われ、山引と伊江にはプライベート空間(?)で我が物顔でくつろいでいますし……
なにより、この施設が何より大事にしているあの巨大生物を、一体とは言え殺してしまったのですから……ただでは済まないでしょう!!
屋根裏の中にはないとはいえ、施設内にはおびただしい数の監視カメラが設置されています。
ということはおそらく、巨大生物が殺されたという事実は施設側に知れ渡っているはず。
となればこの場所もそう遠くないうちに突き止められ、追手がやってきてしまう……
小倉は荷物をまとめて逃げ出そうとするのですが、そこでもナツネが小倉を慌てさせるような言葉を発するのです。
俺は逃げない。
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「俺は残らず奴らを殺す」と言ったハズだ。
こんな施設はブチ壊す。
そう言い放つナツネですが、彼の真剣な表情をあざ笑うかのような笑い声があたりに響き渡りました。
山引です。
山引は、無謀なんてものではないナツネのその言葉がおかしくてならないようなのです。
なにせナツネが持っているのは大ぶりの包丁が一本。
対して、巨大生物の数は数え切れないほどの多数……
いくらナツネが特別な体質と言えども、多勢に無勢が過ぎるというものです。
くわえて問題なのは、その巨大生物を守ろうとしているこの施設の管理者でしょう。
毎日のように大勢の人間が食料とされ、その食糧の中に時として一国の首相が混ざることもある。
そんな大事件が起きているというのに、情報が漏れている様子は一切ない……
これほど完璧な情報操作ができる存在がこの施設を運営している。
それほどの巨大組織が超巨大生物の言うなりになってしまっている事実から、山引はこの施設の中の関係をこう例えました。
ペットの爬虫類と、餌として繁殖されるコオロギやミミズのようだ、と。
そしてその例えを用いて、こうも付け加えました。
その一匹の餌が、「ヘビを殺してシステムをぶち壊す」と言っても、絶対無理に決まってますよね、と。
それだけ無謀を説いているんですから、小倉は当然山引も自分と同じように逃げ出すのだと判断。
したのですが、そこで発揮されるのが山引のとんでもないところ。
こんな面白いことを言う人はそうそういないんだから、最期まで行動を共にしてことの顛末を見届けたいと思うのが普通でしょう、と独特すぎる普通感を振りかざしてきたのでした!!

小倉は一人で逃げると息巻くのですが、そこでおずおずと伊江が手を上げます。
正直を言うと、伊江も到底巨大生物を絶滅できるなんて思ってはいないのでしょう。
どこに逃げるのかを小倉に尋ねる伊江ですが、小倉がこの施設の別の場所に隠れようと提案してきたのを聞くと、逆にこう提案し返すのです。
だったら、施設から脱出しませんか?
以前は小倉もさんざん考えたことでしょう。
ですが、どうあがいても警備の厳重さに阻まれて断念しているうちに、すっかりそのことは頭の中から消え失せてしまっていたのです。
しかしそれはあくまで一人ならば、の話。
複数人数居る今ならば、脱出の光明が見えるかもしれない!!
そんな可能性すら忘れてしまっていたのでした!!

ナツネと山引が居残り組、伊江とカズ、そして小倉(と裕子さん)が脱出組。
二手に分かれて一同は行動することになりました。
小倉は居残り組に、この施設が三層に分かれおり、その最下層がC地区と呼ばれる玉座のある場所だということを教えます。
最深部まで通じているエレベーターもあれば、電源のシャフトやダクトもそこまで通じているはずだと細かなアドバイスも送りました。
まぁ頑張ってくれ、と送り出す小倉に、山引は痛み入ります、と丁寧に返事。
ナツネはと言いますと……伊江にこう尋ねてきました。
友達と別れる時、なんて言うんだ?
ずっと一人きりだったナツネは、友達ができたことなどなかったのでしょう。
伊江はそんな彼の心中を慮りながら、教えるのです。
「じゃあまたね」、かな。
またね。
二度と会うことはないであろう相手にかける言葉ではないかもしれません。
ですが伊江はあえてその言葉を選んだのでしょう。
そして、少し驚いた表情をしたナツネもまた……
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じゃあ、またな、と言い残し、暗闇へと消えていくのでした。


一方、施設の職員たちも動き出していました。
巨大生物一体の死と引き換えに、差し出すように命ぜられたのは施設職員17名の命。
そこで施設の所長は、その命に報いるためにある人物を呼び出したのです。
その紳士然とした怪しげな人物は、「夕凪の会」の代表である桐生。
その夕凪の会というのは、恐ろしい人体実験を行う組織のようで、桐生はその実験の成果を所長に次々と披露します。
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人間の目を4つまとめた驚異的視力を持つ人間。
眼球を摘出し、聴力を異常なまでに強化した人間集音機。
口吻部の延長手術を施してすさまじい嗅覚を有する人間。
人間の頭をやすやす潰す怪力を持つ人間……!
そんなおぞましい改造人間の数々が披露されるのですが、最も恐ろしいかもしれないのが改造人間全員が「死ね」と言われたらためらいなく自らの命を絶つような忠誠心を植え付けられていることでしょう!!
そんな改造人間たちが……ナツネ達を捕えるため、放たれたのです……!!



というわけで、いよいよ物語の方向性が定まってきた感のある本作。
謎の施設で謎の怪物から逃げ惑うパニックホラーといった形で始まった本作でしたが、ナツネの復讐を物語の軸に据え、巨大生物の正体を探り、襲い来る改造人間の猛攻をしのぎつつ、そして施設を脱出する……
という話になりそうな雰囲気がしてきました!!
ですがそうすんなりいかないのが漫画というもの。
改造人間は予想を超える能力を持っており、伊江たちを始末するために容赦なく襲い掛かってきます。
伊江たちはその存在すら知らないわけで、いくら注意深く進んでいようともその脅威から逃れることができるとは思えません。
戦力的にも手薄と言わざるを得ない伊江たちは、本当に脱出できるのでしょうか!?
おぞましき改造人間たちは、まだまだ未知の能力を秘めた個体もいるようで……
逃げる伊江たち、追う人造人間!!
恐怖の脱出劇が繰り広げられ……そして、予想外の展開が巻き起こるのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!