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今回紹介いたしますのはこちら。

「BERSERK(ベルセルク)」第39巻 三浦建太郎先生 

白泉社さんのヤングアニマルコミックスより刊行です。


さて、目指していた妖精の島にようやくたどり着いたガッツたち。
ですがそこに待っていたのは、多くの呪術や結界による妨害でした。
救いを求めた先での手荒い歓迎、果たして一同は潜り抜けることができるのでしょうか!?



一同はエルフヘルムで様々な魔法使いや妖精と出会い……そして、とうとう探し求める「花吹雪く王」に出会うことができました。
この妖精の王、ダナンならば、壊れてしまったキャスカの心を取り戻せるかもしれない。
そのわずかな希望に縋り、ガッツはここまでやってきたのです。
その思いはかなり長い間ガッツの中で燃え滾っていたわけですから、その治せるかもしれない人物がそこにいれば食いつかずにいられるはずもありません!
ダナンもガッツのその思いはよくわかっているようで、早速本題に入ってくれるのです。

「夢の回廊」を使えば、あるいは。
ダナンはそう言いました。
早速その儀式を行ってくれるというダナン、キャスカだけでなく、ファルネーゼとシールケにも一緒に来るよう告げてきました。
何でもこの儀式には、被術者と強い絆を持つ者が手伝うのが最適なのだとのこと。
キャスカはファルネーゼのよくなついていますし、シールケはダナンもよく知る高名な術者、フローラの愛弟子ですから魔術儀式も慣れているだろう、と考えたのだそうです。
だったら俺も手伝う、とガッツは名乗り出るのですが、それはダナンのほうから却下されてしまいました。
今のキャスカは、ガッツに対して強いおびえを感じている為、帰って儀式の妨げになってしまうのだとか。
確かに思い当たるところはありますが、自分が手を出せないことにガッツは強い憤りを感じてしまうところ……だったのでしょう、かつてなら。
ですが今のガッツは、旅を共にしてきたシールケたちを信頼できるようになっているのです。
ここは私たちを信頼して任せてくださいと言うシールケに、任せた、よろしく頼む、と返答するのでした。

キャスカをもとに戻せるかもしれない儀式、「夢の回廊」とは何なのか。
当然湧いてくる疑問ですが、ダナンは文字通り夢の中に入る儀式だ、と答えます。
シールケとファルネーゼが、キャスカの夢の中に入り、ちりばめられた事象を読み解いて答えを探す。
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忘れてしまった忘れられない記憶。
秘められた思い。
それがちりばめられた、夢の回廊を廻る……

二人は自らの夢の中から出て、儀式によってつながったキャスカの夢の中へと入ります。
そこはまるで、小さな子供の落書きのような世界でしたが……この夢はあくまで今のキャスカが通常見ている夢の世界にすぎません。
二人が行かなければならないのは、もっともっと深い所。
ダナンが撒いてくれた花びらの道しるべに従い、あとを追っていくと……いつしか二人は、キャスカの壊れた深層心理の中へと入っていたのです。

そこは荒野でした。
空にはどんよりとした真っ黒な雲が厚く層を作り、その厚い層を貫くように黒い太陽が照らしています。
大地には黒い旗のようなものが点々と、そして延々と建てられていて、遥か遠くには針の山を連想させるような山影が見えて。
この空間が何を意味するのか、二人にはまだわかりません。
それを探るためにも、まずはこの空間でのキャスカを探さなくてはなりません。
広大な土地と言えども、ここは夢の世界。
目を凝らせば必ず何かを示す印があるはず……とあたりを探してみますと、早くも何かを発見します。
それは……
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棺桶を引いて歩く、一匹の犬でした。
犬は体中に何本も槍が刺さっている上、左前脚が失われています。
そして、棺桶には鷹の団の紋章が印されていました。
その時、上空から黒いマントのような、蝙蝠のような、奇妙なものがやってきて、その手にしている槍で犬に襲い掛かるではありませんか!
シールケは、犬に加勢します。
魔術で黒い蝙蝠を倒し、犬に治癒魔法を施術。
蝙蝠には果敢に吠えかかっていた獰猛な犬ですが、どうやらシールケたちが敵ではないことはわかっているようで、その術を大人しく受けてくれました。
近づいてみれば、その犬の首筋には……烙印が刻み込まれているのが見て取れます。
これでもう間違いはないでしょう。
この傷だらけの犬は、この世界におけるガッツです。
ということは……この引き摺っている棺桶の中にいるのが……?
恐る恐るそのふたを開けると、中にあったのは
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ボロボロに砕けた、がらんどうの人形……
ですが、その胸に刻まれた烙印が、ひとつのことを示しているのです。
これが、キャスカであると……



というわけで、とうとうキャスカの心を取り戻すシリーズが始まった今巻。
エルフヘルムが安全だからと目指し始めたのが22巻(01年)とたどり着くまでにも相当時間がかかってしまいましたが、キャスカが正気を失ってしまったのは14巻(97年)と、ここまで実に20年もキャスカさんはああなっていたわけです!!
この後も簡単に元通りになるはずもないでしょうし、キャスカさんが元通りになるまでかかった時間はどれだけのものになっちゃうのでしょうか!?

というツッコミはさておきまして、その内容のほうはやはり興味深いところです。
キャスカの今の心の中がどうなっているのかが見られるというのも楽しみなのですが、個人的にもっとも気になるのは正気を失うほどのショックを受けていたキャスカが正気に戻ったとき、どんな気持ちになるのかと言うところ。
今まで通りの関係をガッツと続けられるわけはありませんし、鷹の団時代のように良い感じに戻れるとも思えません。
正気に戻った時にどうなってしまうのか。
その時が恐ろしいような、待ち遠しいような……!!

そしてベルセルクと言えば鬼気迫る描き込みですが、その描き込みぶりは今巻でさらにパワーアップ!!
ものすごく細かい描写がされているのはいつも通りなのですが、なんだかすごく大きく絵を描いて縮小してません?と感じるほど細かい線でびっしり描き込まれたコマもチラホラ……!!
雑誌連載のほうはまた休載に入ったとのことですが、これだけ書き込んでいれば仕方ない、と思ってしまうほどすごいことになっています!!
それを見るだけでも価値あり……かもしれません!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!