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今回紹介いたしますのはこちら。

「累」第11巻 松浦だるま先生 

講談社さんのイブニングKCより刊行です。


さて、野菊の顔を得て女優・咲朱として羽ばたき始めた累。
その卓越した演技力で累はどんどんとその評価を上げていくのですが、そんな時彼女の前に、少女時代一度顔を奪ったことのある少女、幾が現れます。
かつてと同じように明るく、演技に真剣に向かい合う彼女。
彼女を見て、累は何を想うのでしょうか……?



累……咲朱と幾のダブル主演で行われる「流れ星」。
準備は着々と進み、ゲネプロの日を迎えます。
ゲネプロとは、お客さんは入れないものの、それ以外はほとんど本番と同じ状況で行う最終リハーサルのようなもの。
そこで、累は私は私、あなたはあなたらしく流れ星を演じよう、と幾に告げるのです。
自分でそう言っておきながら、累は自分自身に問いかけていました。
私らしく、か。
けど、「私らしい私」ってどんな人間のことかしら。
私は……

私は……光!!
とおくの恒星、地上の者ども。
見て!あたしを!
幾がのびやかにそう言謳いあげる「流れ星」。
古くから絵本で語り継がれる、「誇らしい自分(わたし)」を失う一人の女性の物語。
煌々とした光も、飛ぶ力も失って、自分が輝く星だったなどと誰にも信じてはもらえず、高い空へ戻ろうとあがくほどその身は下方へ流されて……
それでもあがいて、また流され、泉から川へ、川から海へ。
やがて精根尽き果てて、通りかかった大クジラの姿を見て流れ星は思った。
彼ならあたしを呑んで、この身を腹で溶かしてくれるのではないか。
溶けて死ねば、魂だけでも天にも昇れるだろうか。
しかし、白く尾を引く輝くものが消えようとした命をクジラの腹から攫って行った。
それは泉で出会った白ヘビ。
白ヘビは言うのです。
もう一度君に会いたくて追ってきたんだ。
星だろうと石だろうと、君は君じゃないか。
気付けば、海は広大な鑑となって宇宙の星々を飲み込んでいた。
海と宙とに、今何の違いがあるのだろう。
最期の命の瀬戸際に、流れ星は知ったのだ。
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この身がどう変わろうと、私が私であることに変わりはない。

幾が主役を演じたゲネプロはつつがなく終わり、会場は拍手に包まれます。
自分の番のゲネプロに向かう累。
累はその道のりの間に、演出家の冨土原にこう問いかけました。
誰しも、あなたですら過去の話を辿ると全て淵透世に行きついてしまう。
この劇だってそうですよね。
「流れ星」は、淵透世なのでしょう?
すみません、ただの勝手な憶測です。
精一杯演じて見せますね、あなたの大事な「流れ星」を。
……そう言ってほほ笑む累の顔には、あの淵透世のすがたが重なって見えて……
冨土原は、その背筋に恐ろしいものを感じるのです。

累の演じる流れ星は、やはり圧巻のものでした。
やはり母の心と、流れ星はシンクロすると感じる累ですが……クライマックスに差し掛かるにつれ、徐々にその考えの違い見えてきてしまうのです。
冨土原は、母の苦しみの輪郭しか知らない。
だから、母にとって、私にとって、この物語は……
クライマックスで、「君は君じゃないか」と白ヘビに抱きかかえられながら告げられる累。
そこで彼女は……何を思ったのか、自ら台上から身を投げてしまったのです!!
そして、涙とともに最期のセリフを絞り出しました。
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どう変わろうと……私が私であることに……変わりは、ない……
そのラストシーンにあったのは、果てのない「絶望」。
希望で彩られるはずのラストを、累は演じることができなかったのです。
だというのになぜなのでしょうか。
会場には、鳴りやまない拍手が響いていたのです。

あすからの本番も同じように演じる、ということで累のラストの変更は活かされることになりました。
その帰り道に、幾と変えることになった累。
累の中にある壮絶な自己否定感、その絶望があるからこそ希望に向かって演じ続けられるという累の演技へ向かいあう力の根源。
そんなことから始まり、旧知の友人のように他愛のない話を交えながら会話をしていた二人。
ですがそこで、累のもとに思いもよらない事実を告げる電話がかかってきたのです!
羽生田からのその電話は……「野菊が逃げた」というもの!!
そしてその事実に驚愕している累に、さらに追い打ちをかけるように……幾が、こう言うのです。
……ごめんね……
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かさねちゃん。



というわけで、まさかの急展開を迎えることとなった本作。
咲朱としての人生を順調に歩み始めた矢先に現れた、幾。
それは、過去の決別した自分を嫌でも思い起こさせる存在で、咲朱としての人生に暗雲を立ち込めさせる存在ではありました。
ですが、裏表のなさそうな、優しく快活な彼女がまさかこんな直接的な方法で累の運命を左右する存在になろうとは!
幾のその性格を知っている累は、わずかながら彼女に心を許してはいたのでしょう。
そんな彼女に裏切られた語りになった累は一体どんな行動をとるのでしょうか。
一度逃げてしまった野菊が返ってくることはないでしょう。
帰ってきたとしても、それは大人しく累に顔を提供するためにではないことは明白。
天ヶ崎と野菊がこれからどうするのかも不安です。
また、幾は何のためにこの作戦に協力をしたのかもまたこの後の物語のキーとなってくるようで……
再び顔を奪われたるいはどうするのか。
自らの夢が再び頓挫してしまう羽生田は?
幾は、野菊は……?
物語はいよいよ最終章へ!!
呪われた物語の結末はどうなるのか、そこまでにどのような道のりが待っているのか!?
期待して待つしかありませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!