kj0
今回紹介いたしますのはこちら。

「好奇心は女子高生を殺す」第1巻 高橋聖一先生 

小学館さんのサンデーうぇぶり少年サンデーコミックスより刊行です。


高橋先生は09年に小学館さんの漫画賞を受賞し、デビューした漫画家さんです。
デビュー後は月刊!スピリッツさんで不定期に読み切りを発表し、それらをまとめた単行本「高橋聖一のよいこのSF劇場」を刊行されました。

そんな高橋先生が挑む新作は、やはりSF……「すこしふしぎ」作品。
とある女子高生2人にスポットライトを当てたお話になっているのです。



入学式の日のことです。
式やそのほかのもろもろが終わり、先生も明日からの学校生活を頑張るようにと言い残して教室を出ていきますと、生徒たちもそれぞれ帰路につき始めました。
そんな中一人でおにぎりをもぐもぐやっていた少女、柚子原みかん。
みかんは、前の席に座っていたクラスメイトが帰ろうとしたところを見計らったかのように、声をかけていきました。
あれ、なんの建物かな?
そう尋ねるみかんの指した先には、「初」と書かれた大きな看板が目につくひときわ高い建物でした。
前の席のロングヘアのクラスメイトは、初対面でため口なんて、おかしいと思いませんか?といきなり険悪な空気を出してきました。
同級生に敬語のほうがおかしいわ、とみかんは言うのですが……それならば、と自己紹介をして、よろしくねと右腕を差し出すのです。
その手が意味するところは分かりますが、答えようとはしない彼女。
ちょっと行ってみない?とそれでも誘うみかんでしたが、学校は知識をつけるために通うモノ、くだらない遊びに誘わないでください、と折れません。
それじゃあ友達出来ないじゃん、と不満げに漏らすみかんでしたが、その言葉に彼女はカチンときてしまった様です!
kj1
私には友達がいないって言いたいんですか!?
大きな声を張り上げ、机をたたいてしまう彼女。
残っていたクラスメイトもみなそちらを振り向き、ざわざわと騒ぎが起こり始めるのですが……
そこでみかんが機転を利かせ、劇の練習だったようにふるまって彼女の手を引いて教室を出ることで、彼女に初日からいきなり悪評が立つのを防いでくれたのでした。

少なくとも数日間は仲良しのふりをしようと彼女に言うみかん、せっかくだとばかりに、あの「初」の建物へと彼女を連れていきました。
世界一好奇心旺盛なのは女子高生なんだよ、と嘯くみかん、強引に彼女をその建物の中へ入ります。
その建物は、「初体験館」。
なんでも「未体験の出来事を体験できる」施設なんだそうで……
そのうさん臭さにみかんは物怖じするのですが、今度は今までとは逆に、彼女がやる気になってきました。
体験料の500円を払う彼女、みかんは帰る……かと思われましたが、付き添いは無料だとのことでみかんも同行することになりました。
二人は真っ暗な部屋に通されたのですが、受付の人がスイッチを押すとものすごい爆発が起こり……
気付けば
kj2
二人は小さな無人島に立っていたのでした!!

サバイバルの知識があるという彼女は、木の棒を木の板の上で回転させて火を起こそうとしますが、もちろんこんなやり方で簡単に火がつくはずもありません。
何らかの初体験をすれば帰れるのだろうと二人は考え、彼女はいろいろとサバイバルの知識を総動員して「火をつける」と言う行為を始めて行って帰ろうとするのです。
が、何をやっても火は点きません。
みかんは初体験と聞いてアレを想像して一人で盛り上がったり、やっぱり大事にしようと落ち着いたりするのですが、その間も彼女はいろいろ試し、いつの間にか12時間が経過。
疲れ切った彼女に、みかんは何の具が合うか研究しているという自作のおにぎりをいくつかと、バッグにたっぷり入っていたお菓子を出してご飯にしようと持ち掛けるのです。
友達だからといって提供しようとしているみかんですが、彼女はおいくらですか、とあくまで対等な取引としてその食事を受け入れるのでした。

その後も、何の進展もありません。
時間ばかりが過ぎていくのですが、食料も尽きるころ、島の中央に生えていた木のはっばにペットボトルをつけて密閉するというやり方で、わずかながら水を得ることに成功します。
残念ながらこれは理科の実験でやったことがあるので初体験ではないのですが……そのわずかな水を、彼女はみかんにも分けてくれたのです。
さすが前髪パツ子、と謎の称賛をしてみかんはその水をありがたく拝借。
その水で回復した体力で、みかんは木に旗をくくりつけて通りがかった船に気付きやすくするのですが……

それでもどうにもならないまままた時間が過ぎていきます。
パツ子(仮)が地面に寝転がってぼーっとしておりますと、みかんがおもむろに服を脱いで海に入っていきました。
そして彼女は、そのまま……姿を消してしまったのです。
ほらね、自分を大きく見せるため友達を増やし、役に立たないとわかったら捨てていく。
全部私の思ってた通り。
わかってたからいいもん、東京でも無人島でも一人なのは同じ。
そうつぶやき、涙をこぼすパツ子(仮)ですが……その時、みかんが両手に魚を持って帰ってきたのです!!
お刺身にして食べようぜ!と興奮するみかんに、パツ子(仮)は驚きを隠せません。
二人で食べたほうがおいしいでしょ、パツ子は二匹の魚のどっちがいい?と尋ねてくるみかんに……パツ子(仮)はこう言うのです。
パツ子とか呼ばないで!
……私、青紫あかね子。
よろしく……
そして、そっと右手を差し出すあかね子。
みかんは、うん、よろしく!と手を握ると……突然ナレーションが響き渡りました。
kj3
初体験完了!アトラクションを終了します!

ボロボロになった状態で初体験館を出る二人。
みかんは、何が初体験だったんだろう、私はよく魚を取るからあんなのは初体験じゃないし、納得できない、まだ初体験してなおから500円返してもらう、と息巻くのです!!
あかね子は、500円分は楽しんだからいいじゃない、と答えるのですが……
彼女は心の中で千佳宇のです。
初めて友達ができた、っていうのは秘密にしておこう、と。



と言うわけで、お友達になったあかね子とみかんの日常を描いていく本作。
この初体験館の体験がきっかけだったのか、それとも他に何かきっかけがあったのかはわかりませんが、これから二人は実に様々なすこしふしぎ……いや、とっても不思議な出来事の数々を体験していくことになるのです!!
いつもの電車に乗ったはずが、土星についてしまったり。
雷王星なる異星人が現れ、地球を救うためにとんでもない選択を強いられてしまったり。
放課後、ゼリー人間と言う変な生き物が現れ、ふとしたきっかけで殺してしまったり。
美少年の幽霊が、みかんを「連れて行こう」としたり。
あかね子が変身ヒロインに任命されてしまったり……!!
サイエンスフィクションのほうのSFあり、オカルトあり、ファンタジーありのオールジャンルで、その上規模も教室の一室内で完結するものから、地球の命運がかかっていたり、この世ではない場所まで関係してるものもあったりとそちらの方もバラエティ豊か!!
そんな様々なお話の中で、育まれていく二人の関係もほほえましく、彼女たちの絆を楽しむのも一興!
多種多様なお話そのものを楽しみ、なんだかんだととっても仲良しの二人の関係を楽しめる、作品になっているのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!