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今回紹介いたしますのはこちら。

「ジャガーン」第2巻 原作・金城宗幸先生 漫画・にしだけんすけ先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


さて、普通の人々が「キチガエル」にとり憑かれ、「壊人」となって暴れまわる事件が頻発する中、自身も壊人となってしまった蛇ヶ崎。
ですが幸運にも彼に取り付いたキチガエルはまだオタマジャクシで、壊人の力を持ちながら人間の自我を保つ半壊人の状態で保たれることになりました。
突然現れた「ドクちゃん」と名乗る喋るフクロウに導かれ、壊人を倒す使命を与えられた蛇ヶ崎。
壊人と化した恋人、由利子をもその手にかけた蛇ヶ崎は、苦悩しながらも、壊人の力を解放するときの気持ちよさに魅入られ、戦いを続けるのです。



壊人を倒し、そこから出てきたキチガエルをドクちゃんが食べ、その後ドクちゃんが排出するふんがーボールを食べて壊人化の進行を抑える。
期せずしてヒーローのような活動をすることになったひびが先は、今までにない充実を感じていました。
それは、壊人を倒すために自らの腕を銃に変化させた「蛇ヶ崎銃(ジャガン)」をぶっぱなす快感や、人知れず人を守っているというかつてあこがれたものに臨んだ形とは違えどなれている嬉しさ……もあるのですが、ドクちゃんから聞いたある事実に由来しているのです。
キチガエルを食べるたび、知識が増えていくというドクちゃんが、何匹目かのキチガエルを食べたときに得たその事実、それは壊人を全員倒した時に与えられるご褒美に関してでした。
壊人を全部倒した後、蛇ヶ崎は自殺をする。
そうすると壊人はすべていなくなり、その後ドクちゃんは一つだけ命を作りだせる……と言うのです!
ドクちゃんは、元の人間の体で蛇ヶ崎を復活させてやると言うのですが、蛇ヶ崎はそれを拒否。
そのかわり、
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自らが殺めてしまった由利子を生き返らせるというのです!
その先に何も待っていないなら、いくらぶっぱなすのが気持ちよくてもむなしいだけ。
そう考えていた蛇ヶ崎は、由利子を生き返らせることができるならむなしくない、と考えたのです!
明確な自分が生きる理由を見つけ、そしてその先にどうしようもない自分の人生の終わりも待っている。
そう考えると、蛇ヶ崎の中に今まで渦巻いていたものが、すっきりと消えてしまったかのように充実感を感じるのでした!

その様子は、同僚であるベルちゃんも感じていました。
蛇ヶ崎のことなんてどうでもいいと感じている、かに思えたベルちゃんですが、最近は先輩が壊人事件に巻き込まれて突然死んでしまったこともあってか、蛇ヶ崎を機にかけることが多くなっています。
蛇ヶ崎が死んだら泣く、と公言してみたり、いつも作り笑いばかり浮かべていた蛇ヶ崎が本当の笑顔を浮かべていることに気が付いてみたり、明らかに蛇ヶ崎に注目している様を見せるのです。
が、正直言っていまの蛇ヶ崎にベルちゃんの思わせぶりともとれる、程度の態度をどうこうしようと考える気持ちは全くありません。
勤務を終えた後、公園で一人考え事にふける蛇ヶ崎。
ヒーローってこんな気持ちなんだ、小学5年生のあの時感じた以来の、万能感を感じる。
漏らしてしまった友人がバカにされているのを見て、1対3で喧嘩して、ぼこぼこにされたけど勝ったあの時以来の。
今思えば、あの気持ちが警官になったきっかけかもしれない。
でも、大人になったら「自分は対した人間じゃない」って気付かされてしまった。
みんなその現実に負けないように生きていくんだ、自分もそうだった。
でも、今はもう違う、この右腕がある。
今の俺は、ぶっちゃけ最強だ。
……そんなことを考えている蛇ヶ崎の背後に、
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顔と左半身を木で包んだ怪しい男が迫っていました。
……壊人か!?
問答無用で殴り掛かってくるその男の攻撃を回避した蛇ヶ崎は、すぐさま体制整えてジャガンを発射!!
したものの、その男は木の枝を伸ばして弾丸を包み込むようにしてキャッチしてしまうではありませんか!!
渾身の一撃をあっさり防がれて驚く蛇ヶ崎ですが、驚く暇はありません。
気付けば足元から木の根が生えてきていて、瞬く間に蛇ヶ崎は全身を木で包まれ、身動きができない状態にされてしまったのです!!
死を覚悟した蛇ヶ崎ですが……そこで、その男は蛇ヶ崎に話しかけてきたではありませんか。
おーいジャガーン、弱いぞ、ヒーロー気取り。
そう言って男は、顔を包んでいた木の根をほどき、自分の顔をさらしたのでした。

その男は、松屋町散春。
蛇ヶ崎と同じような相棒の鳥、極楽鷹のナラクを伴った、半壊人……壊人戦士です。
ナラクは散春を「ヒダリキッキー」と呼んでいるようですが……どうやらこの散春も、蛇ヶ崎と同じ、壊人を倒すために戦っているようです。
散春は、蛇ヶ崎に語りかけます。
人間がなんで壊人になるか知ってる?
脳内麻薬、それに反応して俺たちの体破壊人化してる。
つまり壊人ってのは、人間の喜びを追及する存在だと思う。
俺はそう言うわがままなやつが好きだ。
命って最後に死ぬ以外のルールがないんだから、もっとわがままに生きるべきだと思う。
わがままに生きる勇気のない、思考停止して大人ぶってる奴ほど死んだ方がいい。
でも殺人はあんまりやりたくないから、木にして生かす。
俺はそうやってつまらねぇ命をリサイクルする。
これが俺のわがままだ。
……そう言って、散春は蛇ヶ崎がなぜ戦っているのか、蛇ヶ崎の「わがまま」が何か、を尋ねてきます。
彼にとって、物事の判断基準は「わがまま」がどれだけ強いかどうか、のようです。
蛇ヶ崎は困惑しながらも、身動き一つとれない今の状態ではその質問に答えるほかなく……素直に答えるのです。
生き返らせたい人がいるんだ、俺の命なんてどうでもいい。
……それを聞いた散春は……こう言い放ちました。
それが一番普通でつまんない思考だよ、だからあんたは弱いんだ。
他人のために生きるってのは人間らしくまっとうに聞こえるけど、その実一番楽なわがままなんだよ。
わがままを表現しないやつに興味はない。
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ここで木になって朽ちていけ。
バイバイジャガーン。
散春がそう言うと、蛇ヶ崎を拘束する木の力が増していき……そして……!!!



というわけで、新たな壊人戦士が登場し、蛇ヶ崎と衝突する今巻。
壊人がどれだけの数居るのか見当もつかない本作で、共に戦う仲間となる人物の存在は心強いはず。
ですが、人間を怪物にしてしまうキチガエルに憑かれて変化する壊人、その力を制御する壊人戦士はやはりだれ一人としてまともな人物は存在しないようで。
いきなりこんな衝突を生んでしまうことになるのです!
窮地に立たされた蛇ヶ崎は、どうするのでしょうか!?
奇妙な行動原理を持つ散春の目的は?
謎とバイオレンスが吹き荒れる本作、今巻尾目の離せない展開が待っています!

さらにこのほかにも気になる要素は満載です。
蛇ヶ崎の物語と二元中継で送られる、怪しい趣味を持つ男・呂場端の物語。
今までにないほどの大規模な被害を及ぼす凶悪壊人の登場。
そして、さらなる気になる言葉やアプローチをかけてくるベルちゃん……!!
様々な物語が交錯し、一層混迷を極めていく本作。
予測不可能としか言いようのない混沌の物語は、果たしてこの後どうなっていってしまうのか!?
これから先も見守っていくほかありません!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!