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今回紹介いたしますのはこちら。

「鮫島、最後の十五日」第14巻 佐藤タカヒロ先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。


さて、激戦の末決着を見た鯉太郎VS毘沙門。
その興奮も冷めやらぬうちに、今度は常松と百雲の取組となります。
乳の前で相撲を取ることになる常松と、偉大すぎる横綱、泡影の力に充てられて完全に自分を見失ってしまっている百雲。
対峙する両者、勝利を収めるのは……?



土俵で向かいあう二人。
百雲はいつものように相手をすさまじい殺気を込めた目で睨み付けてきます。
実際口には出さないまでも、百雲はその胸の中で潰れて消えろ、と壮絶な敵意を向けていました。
常松はそんな殺気を真っ向から当てられながら、その表情を変えません。
問題ない。
そう言って廻しをはたき、仕切り線へ向かうのです。
かつての恒松もまた、強さだけを求め、鯉太郎をはじめとした力士を見下しているようなところがありました。
が、鯉太郎の放つ力強い光に充てられ、百雲とは逆に自らの光をも強めていったのです。
泡影と言うあまりに強い光を受け、闇に埋もれてしまった百雲。
鯉太郎の光に照らされ、自らも光の中へ立った常松。
そんな、対照的な二人の取組は、観客だけでなく、多くの力士、親方たちも注目しています。
勿論、常松の父親も……!
そして会場は、大松明コールに包まれます。
強さを求めすぎるあまり、ダーティな手も辞さない百雲は、すっかりヒール扱いされています。
力はあるというのに荒々しい相撲を取る百雲への失望などが渦巻き、場内には常松を応援する空気が生まれてしまっていたのです。
が、そんな状況も百雲には関係ありません。
そんなコールなどくその役にも立たない。
そうつぶやき、変わらぬ殺気を漲らせるのです。
そして、このコールが関係ないと思っているのは常松や鯉太郎も同じです。
今の自分を、父に見せてやれ。
鯉太郎の言葉に常松はうなずき……立ち合いとなったのです!!

百雲の立ち合いで最も気を付けなければならないのは、何人も病院送りにしてしまっているカチ上げです。
これをまともに浴びてしまえば、常松もひとたまりもないでしょう。
だからと言って変化しようとしても、百雲の素早い出足の前では変化が完璧に決まらないことも考えられます。
そうなれば体勢が崩れ、ペースを握られてしまうことでしょう。
注目の立ち合い、百雲が放ったのはやはり右のかち上げでした。
常松は……
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その百雲のカチ上げに、自らの右肩をぶつける立ち合いを選択します!!
いかに強力な勝ち上げと言えど、肩とぶつかり合っては効果はほとんどありません。
逆に百雲のほうが体勢を崩すことになりました!!
ですがこの選択、一歩間違えば顔面にカチ上げをもらってノックアウトさせられてしまうことも考えられるものでして。
常松の勇気ある選択に、王虎ですら称賛するのでした!

立ち合いを制した常松はそのまま左下手を取りに行くのですが、百雲も簡単に廻しは取らせません。
右足を引いて廻しを遠ざけて、その勢いを生かして今度は左手で突きを放ってきました!
たいまつはそんな左手を右手でおっつけるように指定なし、間合いを詰めます。
百雲もすかさず右腕でひじ打ちをするかのようなカチ上げで迎え撃つ……のですが、常松はその腕をとって回り込み、とうとう左下手を取ったのです!!
目まぐるしい攻防に、観客たちは沸き上がります。
百雲を相手に一歩も引かない常松に、会場は大興奮。
ですがそんな様子を見て、常松の父の心は冷え切っていくのです。
思い起こされるのは、現役時代の自分の事。
常松の今の四股名、「松明(まつあかり)」と同じ感じの「松明(たいまつ)」と言う力士だった彼は、火竜の言葉を胸に、必死に相撲を取り、会心の一番を制した。
ですがその取り組みはしょせん取的の観客もまばらな一番にすぎず、常松の父に与えられた拍手はパラパラと言う寂しいものだけで……
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自分の「分」なんてものはその程度、その分を超えたものを望んで燃えるものはみじめさだけ。
そんなことを考え、常松の父は腐っていってしまいました。
そして今……常松の父は、常松の取組を見てつぶやくのです。
さっさと終れ、お前は俺のガキだ。
分を超えてんだ、この声援は。
お前の名は、その名は
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輝かねえんだ……
その時でした。
百雲のおっつけが常松の左肘にさく裂し……鈍い音を立てたのは……!!



と言うわけで、常松と百雲の戦いがくりひろげられる今巻。
丸々一巻を使い、百雲のドラマと常松のドラマ、そしてそのぶつかり合いが描かれるのです。
果たして勝つのは光なのか闇なのか?
常松は落ちぶれ、息子もその落ちぶれた自分と同じだと毒づく父の目を覚まさせることはできるのか?
百雲は闇の中から脱せられるのか……?
あまりにも激しすぎる一番は、鯉太郎の出番が少ないことを忘れさせるほどのド迫力!!
お互いの背負ったドラマはもちろんの事、この取り組みそのものも要注目。
すさまじい技術の応酬、ぶつかり合う意地、巻き起こるアクシデント……!!
勝利の行方だけではない、その一番は必見そのもの!!
そんな取り組み、ドラマ、それぞれの様々な見どころが満載なこの勝負、見逃せません!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!