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今回紹介いたしますのはこちら。

「水木先生とぼく」 作・水木プロダクション 画・村澤昌夫先生 

KADOKAWAさんより刊行です。


さて、惜しまれつつ15年11月30日にお亡くなりになった水木しげる先生。
本作はその水木先生の下で、40年間住み込みでアシスタントを務めていらっしゃった村澤先生の視点から水木先生を描く作品となっています。
自伝的作品は結構描いていらっしゃる水木先生ですが、本作の主役はあくまで村澤先生(をモデルとした深沢)。
いつもとはちょっぴり違う水木先生の姿が見られる、いつもと一味違う作品になっているのです!



今から40年ほど昔の事。
一人の少年が、漫画家を目指してアルバイトをしながら執筆に励んでいました。
とはいえその動機はちょっぴり不純で、漫画家なら人と接することなく仕事ができるんじゃないか、と言うものでして。
漫画家と言うのは、そんな甘い心がけで挑んでなれるものじゃありません。
ましてやこの時代ならばなおのこと。
なかなか目が出ない日々が続きまして、漫画家を目指す若き少年、深沢はとりあえずアシスタントを目指すことにしたのでした。

アシスタントになるとすると、誰のアシスタントになるかが問題だ。
そう考えた深沢は、やはり自分の好きな作家のアシスタントになろうと考えます。
怪奇漫画が好きらしい彼がまず思い描いたのは、楳図先生か水木先生。
そのとき、深沢が何となく手に取ったのは、「ガロ」のバックナンバーでした。
するとそこには、こんな記事が載っているではありませんか!
水木プロ、アシスタント募集!!
かのつげ義春も、水木プロの下でアシスタントの経験を積んだと聞きます。
深沢はよしと机をたたき、ダメもとでアシスタントの応募をするのでした!

そして返ってきた答えは……やっぱりだめでした。
バックナンバーを見ていたため応募が遅かったのでしょう、今はアシスタントがいっぱいで募集していません、と言う便りが届いたのです。
やむなく深沢はアルバイトを続けながら執筆と言う毎日に戻ったのです。
その後ガロの漫画賞で一回入選を果たしたりはしたものの、それっきり。
俺は才能がないのかと打ちのめされながら、ますます活躍していく水木先生の作品を眺めるのでした。
ですがなんだかんだまだ野心めいたモノは残っているのでしょう。
わき役のキャラクターのタッチが全然水木先生風じゃない、アシスタントが描いているんだろうが、俺だったらもうちょっと上手に似せるのに、などと毒づくのです。

そんなパッとしない毎日が続いていたある日の事。
母親から、お前の好きな水木先生からのはがきが来ている、と一通のはがきを受け取った深沢は、喜びに撃ち震えることとなりました。
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一人欠員ができたので、フトンと机を持って来て下さい。
アシスタント応募のはがきを送ったのは一年も前の事。
だと言うのに自分のことを覚えていて、便りをくれた……
深沢は感激にむせび泣き、そして半月で荷物をまとめて水木プロへ引っ越していったのです!!

水木プロの門をたたくと、水木先生は「ほおアンタ来ましたか」となんだかドライな感じ。
そして、あんたの部屋は三階の屋根裏部屋です、と急な階段を上り、天井が斜めになっている狭い部屋へと通されました。
これから長いこと暮らすと考えるとちょっと大変そうな部屋ですが、そんなことを言ってはいられません!
早速低い梁に頭をぶつけてしまうものの、水木先生の作品「魔女モンロー」でもこうやっては理に頭をぶつけるシーンがあったなと感慨に浸るのでした。

翌日、初めての仕事に取り掛かることになりました。
すると、仕事机には一枚の写真が置いてあり、そこに「コレ」と言う字が書いてあります。
深沢の7年先輩だという女性アシスタントによれば、そこの写真をみて描くと言う先生の支持なのだそうで。
これがうわさに聞く「切り貼り」と言うやつなのだな、と深沢は納得するのです。
ちなみに切り貼りと言うのは、水木先生独特の手法でして、アシスタントに自分が欲しいと思った背景をあらかじめ描かせておいて、必要に応じて原稿に貼り付けて使うというもの。
どんな仕事であろうと憧れの水木プロでの初仕事なのですから、頑張ろうと意気込んで描き始めるのですが……
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いつの間にか背後にやって来ていた水木先生に、もうちょっと丁寧にね、と言われてしまいました。
こういう草なんかは二本線で細かくゆっくり描くんですわ、とアドバイスをもらい、深沢はすっかり意気消沈。
今まで自己流で描いてきた技術の浅さを早くも痛感させられてしまいます。
また別の時には、妖怪画の模写を回されることもありました。
すでにメインの線画部分だけは水木先生の筆によって描かれているそれに、完成して雑誌に載っている物を見ながら仕上げを施すわけです。
バックの山と空はテンテンでやって下さい、と言う水木先生の指示に従い、不安を覚えながらも点描での仕上げに取り掛かる深沢。
それなりに自信のあった点描でしたが、いざやってみると水木先生の指導がすぐに入ってしまいました。
テンテンはいきなり全体を仕上げようとしてはいけない、5ミリ角ずつ仕上げて全体を完成させるわけです、それでうまくいくのです。
それからテンテンを描くときはもっとペンを立てたほうが良いですヨ。
そう告げ、屁だけ残して去っていく水木先生……
そのアドバイスを励みにして、深沢はさらに点描にうち込むのです!!
が、二日、三日と点描が続いてきますと、目のほうの疲れもだいぶたまってしまいます。
ああ目がかすむ、と言いながら目をごしごしやっていますと、水木先生がまたいつの間にか後ろに立っており、アンタそんなに目がツラいんですか?と尋ねてきました。
先生の前で弱音を吐くわけにもいかず、全然大丈夫だと強がる深沢なのですが……
床に就きますと、こんなことでアシスタントやっていけるのかな、と不安で押しつぶされそうになってしまうのです。

次の日、仕事の机に向かう深沢。
すると机の上に見慣れぬ瓶が置いてありました。
なんだろうとみてみれば、ラベルには「強力 八ツ目鰻 肝の油」などと描いてあります。
そして瓶の下にはメモが置いてありまして、そこにはこう記されておりました。
八ツ目鰻は目によく効くそうです。
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……これは、水木先生の心遣いに違いありません!!
今までの態度からして、水木先生は他人にドライな人だと思っていた深沢。
ですが実際は、照れくさいのか表面に出さないだけで、優しい人物なんだ。
深沢は水木先生の心遣いにまたも感激するのでした……



と言うわけで、、水木先生の今まであまり語られてこなかった側面が明かされる本作。
水木先生と言えば漫画家として成功するまでにものすごいドラマがあり、そこが今までクローズアップされてくることが多かったように思います。
ですが今回はスタートの時点から、水木先生は成功した後の状態。
当然ドラマチックな物語などは用意されてございません!!
ですがだからこそ描ける物語もあるというわけでして、深沢のアシスタントとしての仕事や、水木先生との取材旅行と言ったのんびりした部分をじっくり描くことができるのです!!

水木先生のアシスタントとの接し方、と言うのは間違いなく本作でしか読めませんし、その今までの自伝的作品とちょっぴり印象の違う様子を見られるのは興味深いでしょう。
では取材旅行のほうはどうかと言いますと……今までこちらも何度となく描かれてきた題材でありながら、今までと印象の違う内容になっているのです!!
今まではバリ島や南方方面の、スピリチュアルな感じの舞台が多めでした。
今回もそっち方面は少しあるにはあるのですが、メインはヨーロッパ!!
あまりそっち方面のイメージのない水木先生のヨーロッパ旅行はどうなってしまうのか?
深沢と水木先生の二人旅、こちらも必見と言わざるを得ますまい!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!