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今回紹介いたしますのはこちら。

「あえじゅま様の学校」第1巻 鈴丸れいじ先生 

集英社さんのジャンプコミックスより刊行です。


さて、「地獄恋」の鈴丸先生が、まさかの(失礼!)ジャンプの名を冠した雑誌での連載となった本作。
以前の作品は、かわいらしい女の子キャラとコミカルな描写、そんなビジュアルに反したグロテスク要素とダーティーな物語というギャップのある作品がメインとなっていました。
今回はそんな鈴丸先生の魅力を存分に生かし、さらにシリアスな方面に舵をとった作品となっているようです!



なんだこりゃ、幻覚でも見てんのか?
それが、寝屋川朔のその時の感想でした。
ですが周りにいる見知らぬ人々の反応を見るに、そう言うわけでもなさそうです。
朔が座らされている、教室。
その中央最前列の席に……
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何とも形容しようのない、おぞましい怪物が座っていることは。

朔は、仕事場の同僚の悩みを聞くという名目で、酒を飲んでいた、と言うのが最後の記憶です。
が、その最中急激な眠気に襲われ……目が覚めると、見知らぬ和室に寝かされていました。
状況が理解できないまま戸惑っていますと、そこに朔をニーちゃんと呼ぶ見知らぬ少女が現れます。
天真爛漫でかわいらしい彼女は、琴華。
琴華によって、策は自分の置かれている状況を知ることとなりました。
朔は工作員であったあの同僚によって誘拐されてきた。
今日から琴華と、その祖父であるらしい長兵衛と家族となってここで暮らすことになった。
「あえじゅま様」のお告げに従って。
……全く理解の出来ない状況でしたが、朔はこの状況を楽しんでもいました。
得体がしれない状況とはいえ、琴華は朔に良くしてくれますし、長兵衛も敵意を向けてくるようなことはありません。
この連れ込まれた家があるのはだいぶ田舎のようですが、景色もきれいですし……
何より、20歳のフリーターである朔に、明日から学校に通ってもらうとまで言われてしまうと、一体何が目的で自分をこんなところまで連れてきたのかと言う興味がわいてしまうのも無理もない、かもしれません。
生来の性格もあり、朔は今の状況を楽天的にとらえていました。
そう……それ、を見るまでは。

その怪物の斜め後ろの席に座らされていた朔は、用心深く様子をうかがいます。
ほのかに漂う異臭、ぬめりのある皮膚、せわしなく動き回る眼球、かすかに漏れ聞こえてくる声のようなもの。
そして他のクラスメイト達は、朔と同じように各地から誘拐されてきた、年齢、性別がバラバラの者たちのようです。
この異様としか言いようのないクラスで、教師だと言う袴崎は点呼を取り始めました。
その怪物は真っ先に名前を呼ばれました。
「あえじゅま」、と。
あえじゅま様と言う、琴華たち村の住民にお告げを下す山の神様だと言う存在が、こんな怪物だったとは。
戸惑う中でも点呼は進み……クラスメイトはあえじゅまを除いて23人いるようだ、とそれでも様子をうかがう朔。
袴崎は点呼を終えると、ようやくこの状況の説明、のようなことをしました。
何も心配することはない、出来ない事を強要したりもしない、これから3年間、ここで学園生活をしてもらうだけ。
友達をたくさん作って友情をはぐくみましょう、恋人を作って青春を謳歌しましょう。
ここに居る限りみなさんは自由なのです。
思い切り楽しんでください!!
……そう聞こえの良いことを言いはするものの、他の面々から様々な疑問や文句を投げかけられますと、自由を与えるとはいえあなた方がさらわれてきたことに変わりはない、立場をわきまえなさいと立場の違いの念押しをしてくる袴崎。
一同の不満の声をそうしてシャットアウトしたところで……袴崎は、学級委員長を決めると言いだしました。
我こそはという人はいないか、と挙手を促すものの、状況が状況、手を上げるものなどいません。
と。思われたのですが……先生が指名しようとしたところ、手を上げるものがいたのです。
……あえじゅまでした。
赤面しながらおずおずと手を上げるあえじゅまの姿を見て、クラスにはわずかながら笑い声が漏れてきます。
ああ見えて案外フランクな性格なのか?などと朔が考えておりますと、突然教室の扉があきました!!
村の住民らしい男二人が、脱走しようとしていたクラスの一人を捕まえ、ここに連れてきていたのです。
拘束、監禁をしない代わりに決して村から出てはいけない、と言ったじゃないかと袴崎はその人物、宗弘を責め立てます。
が、いかにもチンピラと言った風体の宗弘は勝手なことを言うなと吠え続けて……
そこに、校内放送が響きます。
宗弘君が登校拒否をして村から出ようとした件についてお知らせいたします。
宗弘君の処分は、退学に決定いたしました。
退学。
この学校から去れるというのならば、むしろ喜ぶべきことのような……?
ですがそれを聞いた袴先は目を潤ませ、あえじゅまに言うのです。
委員長、初仕事ですよ、今すぐ退学の手続きを!
あえじゅまはヴァイという奇妙な返事とともに元気よく席から立ち上がりました!
そしてゆっくりと宗弘のほうへと近づき……むんずと鷲掴みにしてたかだかと持ち上げたかと思うと、大きく口を開き……
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頭から、貪り食ったのです……!!

阿鼻叫喚となった教室、クラスメイトの大半は一目散に逃げだすのですが、どうしたことか教室の扉や窓はまったく開きません。
袴崎はそんな彼らに、勝手に授業を放棄するとどうなるか、今見たばかりでしょうと静かに脅します。
そして、残った足首から先を吐き出して退学の手続きを終えた委員長に、一言求めると……
委員長、あえじゅまは一言、「オイヒガッタ、デェス」と漏らし、げっぷをするのでした……

恐怖のあまり静まり返った教室で、袴崎はなおも衝撃的な発表を行いました。
人数こそ少ないですが、わが校は昔から文武両道を校訓としており、君たちが本校で学ぶにふさわしい生徒であるかを確認するために今から小テストを実施します。
心配しなくても基本的な学力を確かめる問題なので難しくはありません。
ただし一つだけ。
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点数が一番低かった生徒は、退学処分です。




と言うわけで、突如として死と隣り合わせにの学園生活を強いられることとなった朔。
表紙の感じから言いまして、「地獄恋」のようなバイオレンス描写もあるコメディ、なのかと思わせておいてのこの内容!
鈴丸先生、やってくださいました!
デスゲームものと言えばデスゲームものに分類されるかもしれない本作ですが、ゲーム自体は奇抜なものではないうえ、生徒同士で争ったりだまし合ったりするようなものではない(今のところはですが)のが少し違ったポイント。
ゲーム自体の部分よりも、その前後の退学処分を巡るドラマや、あえじゅまの謎のほうに重きが置かれているわけです!
退学処分になったものを容赦なく食い尽くしてしまうあえじゅまですから、退学処分になっていないからと言って何もしないかと言われると……どうにも信じられません。
ただでさえ緊迫する学校生活に、おそらく定期的に行われるであろうテスト、そしてそこで決定される退学に、さらなる恐怖が募っていくわけです!!
早速行われるこの小テストで、早くも一人の退学者が出ると宣言されたわけですが……
そのテストの内容はどんなもので、餌食となるのは誰なのか?
この第1巻で、早くもそう来たかと唸らされる展開がやってくることになるのです!!

そして忘れてはならないのが、本作に多くちりばめられた謎。
あえじゅまや、この村はもう謎たっぷりと言わざるを得ないわけですが、他にも謎は用意されています。
誘拐された人々にあるかもしれない共通点。
物語が進むにつれて見えてくる、朔の過去。
そして村の目的……!!
次々と謎は深まり、そして物語の規模も大きくなっていく本作!
どこかコミカルなムードも織り交ぜつつ、それでも物語はどんどん血生臭さを増していくのです!!
予想できないこの学校生活で、朔は……いや、攫われてきた全員は3年間生き延びることができるのでしょうか?
それは、あえじゅま様のみぞ知る……のかも、しれません!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!