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今回紹介いたしますのはこちら。

「辺獄のシュヴェスタ」第6巻 竹良実先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


さて、水路を使っての脱出という思い切った作戦を打ち出したエラたち。
ですがトラブルがあり、当初予定していたテアではなく、ヒルデがその作戦を決行することになりました。
脱走者が出たと騒ぎになる院ですが、そんな中でただ一人、クリームヒルトだけはヒルデが水路を使って脱出したに違いない、と看破!
エラは急いで水路に向かうのですが……!?



水路についたエラを、クリームヒルトが待ち構えていました。
するとクリームヒルトは、平然とした顔でこう言うのです。
見てよこれ、水車を止めたら急に空気が来なくなったもんだからあの子ったら大慌てで引っ張っちゃって。
……クリームヒルトは、水車を止めてヒルデへの空気の供給を止めたばかりか、わざわざ足でホースを踏みつけて完全に殺しにかかっています。
ホースを引っ張る力がだんだん弱くなってきた、と死へ向かうヒルデを感じて、ふりーむひるとは笑顔を浮かべ……!!
激昂したエラは、クリームヒルトを殴りつけます!!
そしてすぐに空気を供給するためのふいごを両手で動かし、必死に空気を送るのです!!
ヒルデを助けるのに精いっぱいのエラは、他のことが見えていません。
背後でゆっくりとクリームヒルトが立ち上がり……石で殴りつけてくることも!!
さすがのエラもそれには悶絶。
地面に這いつくばり、後頭部を抑えて苦悶するエラを見下ろし、クリームヒルトは言うのです。
残念、私たち友達になれるかと思ったんだけど、「あっち側」だったなんてがっかり。
勝利を確信したのでしょう、クリームヒルトはエラの反撃を予想していません。
すぐに立ち直った江良はタックルでクリームヒルトを押し倒し、すさまじい力で首を締めあげるのですが……
それによってクリームヒルトの意識を奪ったりはできませんでした。
エラの握力は並ではなく、普通に締め上げれば命を奪うことすら難しくないでしょう。
ですが……
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エラは右手で必死にふいごを漕いでいて、クリームヒルトの首にかかっているのは左手一本なのです。
再びクリームヒルトは手近な石を拾い上げ、エラの顔面へ一打!!
その一撃はエラの右目に直撃し、エラはとうとうその意識を手放してしまうのです。
……その時、ようやくたどり着いたカーヤは、意識を失ったえらの状態を見て驚きますが……ここで駆け寄ってしまえば万が一の時に状況が悪くなるかもしれませんし、それよりもいまはヒルデの状況が心配です。
ホースを引きあげてみると……打ち合わせ通り、脱出のためホースの先端を切断した後が残っていました。
ヒルデ、外に出られたんだね。
カーヤはそっとホースを胸に抱き、安堵するのです。

しかし、これでえらの状況は最悪なものになってしまいました。
見たものを見たまま報告するクリームヒルト。
それを聞けば、修道院はエラがヒルデの脱出の手引きをした反逆者だ、と結論付けてしまうかもしれません。
が、修道院はあくまで慎重。
ひょっとすると、クリームヒルトが本当の反逆者で、エラを陥れようとしている、と言う可能性もある。
エラの意識が回復するまでは一応保留する方向のようです。
クリームヒルトが石で殴りつけた、と言う行動がエラの意識を奪い、すぐには結論が出ない状況になってしまったわけですが……クリームヒルトは石で殴りつけたことをやり過ぎだとは全く思っていないようです。
彼女はこんな体験談を話します。
6年前、故郷に流れ者の夫婦が町に入り込んでいるのを見た。
不審に思って巡察隊に通報すると、巡察隊はそいつらを追い詰めて殺し、死体を調べた。
すると持ち物の中に、ナイフが入っていた……
見方によれば、その刃物で凶行に出ようとした、とも見えなくはありません。
ですが、中世の時代の旅人が、小刀一つ持たないで流れ歩くわけがないではありませんか。
密かに聞き耳を立てていたカーヤは、いいがかりだ、と唇をかみしめ、クリームヒルトの歪んだ正義にはらわたが煮えくり返るような思いを抱くのです!

眠り続けるエラのそばで、彼女の回復を祈るカーヤ。
ヒルデは外に出られた、早く目を覚まして、と声には出さず語りかけるカーヤですが、そこにし先ほどクリームヒルトにいろいろと聞いていた修道女が現れ、あるものを見せながらこう言ってきたのです。
支給クリームヒルトを呼べ、院の外側の川の下流、滝の下でこれが見つかった。
これを見せてクリームの反応をうかがう。
……それは、ヒルデが脱出する時に使った潜水ヘルメットでした。
恐る恐るそれをのぞき込むカーヤですが、修道女はカーヤをやんわりと止めながら言いました。
見ないほうが良いと思う。
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脳まで出ている、死体は流されたようだが……即死だったろう。
窒息して死んだか気絶したかで、そのまま滝を落下したのだろうな。
……カーヤの脳裏によぎる、ヒルデの笑顔……
その動揺を必死で抑えながら、カーヤは修道女に頭を下げ、クリームヒルトを読んでくる、とその場を去るのです。
……廊下に出ると……その表情は、筆舌に尽くしがたい怒りや悲しみ、後悔……様々な感情のまじりあうものに変化するのです……!!

このままいけば、エラの意識があろうとなかろうと処刑することになりそうです。
自白なく処刑する、というのは見るものに不信感を与える恐れもありますが、神明裁判という両者に試しを与えてよくない結果を出した者が有罪、と言うシステムを使うことでそれを払しょくしようとしている様子。
その試しと言うのは、聖別したパンを無せずに呑み込む、と言うごく簡単なものですが……意識のないエラにはできないもの……
おまけにクリームヒルトは、エラにはほかの共犯者がいて、細工を仕掛けるかもしれないとまで進言し、裁判の前の日はエラとクリームヒルトを完全に独立した窓のない部屋で過ごさせ、工作を防ぐという予防線まで張ってきました。
このままでは、エラは……

裁判の前日の夜、クリームヒルトは用意された窓のない、入り口前に二人の見張りのいる部屋で眠りにつこうとしていました。
そしてそのベッドで、カーヤに関してのある事を思い出します。
今日のあいつを見てぴんと来た。
カーヤは……あの日、 私が通報した流れ者の娘だ!!
……だとすると、魔女狩りで親を亡くしたわけじゃないと言う事……じゃあ、あの子は何でここに……?
ハッとしたクリームヒルトですが……その時、彼女の寝そべるベッドの、マットの下から一本の手が伸び、彼女の口をふさぎました!!
……その手の主の顔を見て……あのいつも余裕の表情を浮かべているクリームヒルトが、表情をゆがめ一言声を漏らすのが精いっぱいの状態に追い込まれてしまいます。
アンタ、何者なの……?
……そして、その手の主……カーヤは言うのです。
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アタシは、アンタらの敵さ。
そう言って、カーヤはベルトをクリームヒルトの首へかけて……!!



と言うわけで、いよいよクライマックスを迎える本作。
ヒルデの脱出は、この修道院の真実を伝え、外から破壊するための重要なキーとなるはずでした。
ですがクリームヒルトによってその企みは見抜かれ、そして……とんでもない結果になってしまいます。
さらにエラには反逆者としての嫌疑がかけられる形になると言う、最悪に近い状況……
エラたちの計画は、ここで完全に頓挫してしまうのでしょうか。
物語は、一気にクライマックスへ!!
ヒルデのいなくなった3人は、どんな道をたどるのか。
エラを待つのはどんな捌きなのか。
そして……
様々な出来事が降りかかりますが……目指すべきはあくまで、エーデルガルトの首一つ!!
そのたった一つのものを取るために、時としてかけがえのないものを失って来ました。
そんな失ったもののためにも、この戦いは負けられません、
エラ、カーヤ、テア、してヒルデとコルドゥラ。
彼女たちの想いが、届くときは来るのか……!?
泣いても笑っても、たとえエラたちにどんな結末が待っていようとも、決着の時はやって来るのです!!

息詰まるストーリーが連続していた本作ですが、最終巻である今巻でもまた大きな転換が起こり、最後の最後まで読者に先を予想させません。
今巻でも竹良先生は少女たちの様々な貌を見せてくれます。
喜怒哀楽と言う四つの感情では表しきれない複雑な胸中を描き切る先生の筆致は、今巻でもさえまくり!!
最後の最後まで、様々な状況で輝く少女たちの表情を堪能させてくれますよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!