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今回紹介いたしますのはこちら。

「五佰年BOX(いほとせボックス)」第2巻 宮尾行巳先生 

講談社さんのイブニングKCより刊行です。


さて、幼馴染の女性、真奈の家の蔵から出てきた木箱をもらい受けた叶多。
ですがその木箱は不思議極まりないもので、中ではまるで戦国時代か何かのような昔風の人々が、ミニチュアのようなサイズで生活を営んでいました。
叶多はふとしたことから箱の中の少女の命を助けようとして、箱の中の男を殺めてしまったのですが、すると現実の世界に奇妙な影響が現れ……幼馴染の真奈は消失!
代わりに真樹と言う幼馴染の「男性」が存在していたのです!!




叶多は、前の世界で真奈の婚約者であった晴市とともに箱の謎、そして真奈を取り戻すために様々な試みをしていました。
実際に二人で箱の中の様子を覗いていたところ、ちょうど例の女性が乱暴されそうになっています。
すぐにそれを助けようとした叶多でしたが……それを、晴市に止められてしまいました。
幸いはこの中の女性は無事でしたが、この箱の中の世界は、いつどんな時に人が死んでもおかしくない不安定で危険な世界。
みすみす死ぬかもしれない状況を見逃せと言うのか、と叶多は自分を止めた晴市を攻めるのです。
が、晴市もただ見殺しにしようというわけではありません。
助けるのが正しいのか、あえて手を出さないのが正しいのか、それは晴市はもちろん、叶多にもわからない事。
ですが、助けたいという感情のままに彼女を助けたのなら、それは今までと同じではありませんか。
今までそうしてきて、全て失敗してきたわけで。
衝動に振り回されていては、真奈さんは救えないんじゃないか、と晴市は叶多を説得するのです。
確かにその主張はうなずけるもの。
しかし、そうは言っても納得しきれるものでは……
晴市は、叶多が衝動に振り回されている、と言いました。
そんなことが言えるのは、自身が目の当たりにしていないから、ではないかと叶多は考えるのです。
目の前で箱の中が死ぬところを。
……自分の行動で、現実が変わってしまったところを……!

箱の中の様子を改めて伺うと……あの女性を襲おうとしていた男のことが気になってきました。
刀を持っているからには侍、なのかもしれませんが……叶多が箱の中を見ている限りでは見覚えのない人物。
ですが何となく、叶多はその男に引っかかるものを感じるのです。
と、その時、インターホンの音が鳴り響きました。
ドアを開けてみると、そこにいたのは真樹でした。
何でも叶多の姉、千花からこれを持っていけとこまごましたものを渡されていたようで。
正直その中身はどうでもいいもので……千花なりに気を使ってくれたのかもしれませんが、余計なお世話と言うものです。
真樹はちょっと一服させてくれ、とかってに中に入ってきてしまい……あの箱を目撃してしまったのですから!
とはいえとっさに晴市がふたを閉めたおかげで中身までは見えなかった、はずですが……真樹は何も言わず、その箱をひったくります。
瞬間、真樹の脳裏に子供のころの自分がその箱を持っている記憶がよみがえり……!!
なんで、お前がこれ持ってんだ?
そうだ、これは俺の箱だ、絶対俺のだよこれ!!
これが何でここにあるんだ!?
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そんなことを言い出す真樹ですが、この箱は真樹の家の蔵から持ってきたものではあるものの、その蔵を開けたのは真樹の父親曰く70年ぶりのこと、のはず。
真樹の間違いだろう、と叶多は言うものの、真樹は開けてみればわかるんだ、と箱のふたを開けようとするのです!
やめろ、とさらにその箱をひったくり返す叶多!!
勢いで、もう用はすんだんだから帰れよ!と叫んでしまうのです。
明らかに不機嫌な顔になる真樹は、叶多をにらみつけ……帰りゃいいんだろくそが!!と吐き捨て、乱暴にドアを閉めて立ち去っていってしまうのでした。
残された叶多は……本来存在しなかったはずの、真樹との思い出を思い起こし……
箱を晴市に預けて、真樹を追いかけます。
真樹は、真奈の代わりに現れた存在。
絆を深めるようなことをすれば、自らを苦しめることになることは、わかっているのですが……
一人取り残されてしまう晴市ですが、晴市は晴市で真樹の言動の中に引っかかるものを感じていました。
俺の箱だ、あの時の。
真樹が漏らしていた仲にあったその言葉に思い当たるものを感じた晴市は、ネットでいくつかのワードを検索し始め……

真奈は、真奈の父親を満足させる子供でした。
対して真樹は、大学受験に失敗し、就職した先も潰れてしまって無職になってしまうなど、父親にいろいろと気をもませる子供だったようです。
そのせいで、真奈の時には気が付くことのなかった父親の癖に気が付くことになってしまうのです。
真樹の父親は、真樹に失望した時……苦笑いのような笑顔を浮かべる、と言う。
真樹はそんな笑顔を見たくないがために荒れ始め、友人たちとも連絡を取らなくなってしまっていました。
今や家族以外でつながりがあるのは叶多くらい。
その叶多にまであの笑顔を浮かべられたらどうすればいいのか……そんな考えがよぎり、真樹は不安に駆られていたのです。
叶多はそんな真樹に、昔いじめを受けて逃げた俺を迎えに来てくれたじゃん、あの時のままでいてくれれば、俺はほかはどうだっていいよ、と微笑みかけ……
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その笑顔のおかげで、真樹の気持ちは少し晴れたようです。
箱のことに関しては、今は言えないけど、俺や真樹、家族の身にも危険が及ぶかもしれないものが入ってる、嘘はつきたくないから今は詳しく離せないけど、いろいろわかったらちゃんと言う、と約束して一応は納得してもらえたのです。
……これでますます真樹が大事な存在になってきてしまいました。
真奈も自分に生きる力を与えてくれた存在ですから、彼女を取り戻したいという気持ちは揺るがないのですが……

晴市は怒っているだろうか、あきれているかもしれない。
どんな言い訳をしようかと考えながら部屋に戻ると、晴市が凄い勢いで話しかけてきます。
が、それは叶多の行動をとがめるものではなく、真樹と箱のことを話していないのか、と言う問いかけでした。
したと言えばしたものの、していないと言えばしていない……そんな感じなだけに、上手く返答できない叶多。
そんな叶多に、晴市は尋ね続けるのです。
真樹君の言ってた「俺の箱だ」ってやつが気になってさ。
気のせい、かもしれないけど絶対とまで言い切ることもできないんじゃない?
勘違いじゃないとすると……もしかしたら、真奈さんは消えてないのかも。
つまり、
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真樹君と真奈さんは同時に存在してるのかもしれないよ!



というわけで、新たな展開を見せた本作。
見たこともないはずの箱を、自分のものだったと感じてしまった真樹ですが、それが意味するものは……つまり、真樹が箱を持っていた過去も存在している可能性がある、と言う事。
叶多の行動で消滅してしまった、かに見えた過去は消えているわけではない……のかもしれません。
それが何を意味するのかと言いますと……!!

とにかく、叶多の目的は変わらない、はずです。
箱の謎を探り、箱の中のカコの出来事をどう変えていけば真奈が戻ってくるのかを調べ、真奈を取り戻す。
その為に、今府度は慎重に探りながら行動をする……
のですが、ここに思わぬ要素が加わってしまうことになります。
じっくりと慎重に進めていく、はずの調査に、大きな染みを落とすことになる出来事。
物語はその毛色を変え、真樹を巻き込んで大きくうねりだすことに……!!
先の読めない物語は一層予測不可能に。
そして箱の謎自体はまったく明かされないものの、今まで気が付かなかったことに気が付き、わずかながら箱の中のことがわかり始めます。
箱の謎、箱の中の時代で何が起きているのか、真樹と真奈をどうするのか、そして叶多に起き始める変化は……
ゆっくりと、時として急激に進んでいく本作……これから先も目が離せません!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!