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今回紹介いたしますのはこちら。

「諸星大二郎劇場 第1集 雨の日はお化けがいるから」 諸星大二郎先生 

小学館さんのビッグコミックススペシャルより刊行です。


さて、諸星大二郎先生の短編集となる本作。
今回は単行本未収録作品を中心に、06年~17年にかけて発表してきた作品がまとめられております。
どれをとっても諸星先生らしいお話が並んでおりますが、今回はやはり表題作である「雨の日はお化けがいるから」を紹介させていただきたいと思います!



雨の日は嫌いだ。
少年はそうぼやきます。
彼が雨の日を嫌うその理由は、たった一つ。
雨の日には……必ず、お化けがいるから、です。
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お化けは電信柱の陰に隠れるようにして、植え込みの向こう側に潜んで。
そんな風に、お化けは少年を覗いています。
雨の中を何かずっとゆらゆらしたものがついてきたり、帰り道に何かが待ち伏せしていたり。
そうやって現れるお化けたちを、少年は努めて気が付かないふりをしてやり過ごしています。
そんな彼にとって悩ましいのは、もっぱら帰り道。
何のルールがあるのかはわかりませんがお化けたちは学校の中にまで入ってこないので、登校時はそれほど問題ではありません。
しかし帰り道は……
なんといっても、お化けに家までついて来られたりしたら、たまったものではありません。
とにかくお化けに家までついて来られないよう、遠回りをしたり、走ったりして逃げなければならないのです。
ですがいつまでもそんなことをし続けるのは避けたいところ。
そこで、彼は「ルール」を作ったのです。
雨の日は自分からお化けを探しに行く。
そこでお化けを見つけたら気付かれないようにしてすぐ戻る。
そうすればその日はお化けはその一匹だけ、もう他のお化けには会わない。
自分がそのルールを守れば、お化けたちもルールに従うはずだ。
なぜか少年はそう確信して、雨の日は自らお化けを探すことを決めたのでした。

そのルールにもまた細かいルールがあるようです。
お化けに会いに行くのは、学校の近くとか明るいところとか、自分に都合のいいところではいけない。
できるだけ嫌な、できたら行きたくないような場所でなければいけない……
その日はその中の一つ、通学路を外れた寂しい公園に向かうことにした少年。
いつも誰もいなくて、通りから外れていて、お母さんからもあまり行くなと言われている、そんな公園へと向かいます。
やはりそこにはお化けがいたのですが……運悪くその日は、お化けに見つかってしまったのです!
足早にその場を去りながら、少年は心の中でまた別のルールを心の中で繰り返します。
振り向いちゃいけない、振り向いちゃいけない。
振り向かなければお化けはついて来ない……!
ですがそのルールに欠陥がある事に、やがて少年は気が付くことになります。
ある程度振り向かずに歩いていればお化けはいなくなるはず。
ですがそれを確かめるには、振り向かないといけません。
少し歩くと、どうしても気になってしまい、我慢できずに振り向いてしまう……
そんなことをしているうちに、お化けがついてきたまま見知らぬ街まで来てしまいました。
遠回りをしているうちにどんどんと知らない道を歩いていってしまったようなのです。
道に迷うは、お化けは付いて来るはで踏んだり蹴ったりな少年ですが、そんな少年に声をかけてくる人物が現れます。
それはワンピースが似合う黒髪の少女でした。
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傘を持っていないから、すぐそこまで傘に入れてくれないか、と言うその少女。
なんだかその少女の指さす先が明るく見えた気がした少年は、彼女を傘に入れてあげるのです。

少女の指したあたりまで行くと、そのあたりだけ日傘していまして、天気雨になっています。
しかも、お化けの姿がないではありませんか。
お化けってなあにとその子に尋ねられてしまった少年は、なんでもないとはぐらかすのですが、そんな少年を見て女の子はにこりと笑って傘から出ます。
ここにはお化けなんかいないわよ、だってここは神社だもの。
その言葉を聞いてハッとする少年。
神社にはお化けはいない?そうか、そう言うルールなんだ。
これは僕の作ったルールじゃなくて、本当の……

二人は自己紹介しました。
彼女の名は茜、少年の名は守。
道に迷ったと言う守に、茜はこういけば帰れるよと道を教えてくれました。
そして茜は去り際に、こう言ったのです。
傘に入れてくれたありがとう、またどこかでね、あもくん!
……あもくんと言うのは、子供のころ年下の従姉妹が自分を呼ぶとき、ろれつが回らずにそう呼んでいた名前。
守は、その一言で茜のことが一層気になってしまうのでした。

また次の日も雨。
何故茜は自分のことをあもくんと呼んだのだろう。
もしかしてあの子にもオバケが見えていたんじゃないかな。
そんなことを考えながら歩いていますとうっかり道を間違えて帰る道でない道を通ってしまいました。
しかもそこで、お化けのほうにあもくんが先に発見されてしまうという痛恨のミスを喫してしまいます。
お化けに先に見つけられた場合は、いつものルールが使えないとのこと。
やむなく守は走ってお化けを振り切ろうとするのですが……その行く先にもお化けが!
行く先行く先に違うお化けが現れ、そこから逃げて走っているうちに……またも守は迷ってしまうのです。
すると、後ろのほうから踏切の遮断機が閉まる音が聞こえてきました。
踏切がある、そうだ、この前帰りに踏切を渡ったっけ。
そんなことを思い出し、守はその音のほうへと向かうのです。

踏切はすでに遮断機が下りきっています。
まだ電車は通過していないようで、守はドキドキしながら待つしかありません。
お化けが後ろからやって来る。
振り向いちゃいけない、振り向いてお化けたちがいたらもう逃げられない。
激しい不安に襲われているうち、目の前を電車が通り過ぎました。
すると、車両と車両の間から見える向こう側に、茜の姿が見えるではありませんか!
驚く守ですが、電車が通り過ぎると茜の姿はありません。
幻か何かだったのかとがっかりする守るですが、その時彼の脇をサッカーボールが転がって踏切の中へ入っていきました。
そしてそのボールを追いかけるように、一人の子供が遮断機をくぐって中に入っていくではありませんか!
刑法の音が小さくなっていき、子供が踏切を通っていく。
それを見て、守は何か見導かれるように遮断機をくぐってしまいました。
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次の電車が、目の前まで迫っていることもなぜか気が付かず……!!



と言うわけで、雨の日に現れるお化けに恐ろしい目に会わされる守のお話を収録した本作。
本作は諸星先生の以前の単行本「あもくん」に収録されたあもくんシリーズに連なる作品のようで、ちょっとだけ成長したあもくんのお話となっています。
あもくんに襲うお化けとは何者なのか?
なぜあもくんのルールに従うのか?
茜ちゃんとは一体?
そして、踏切に進入した守の命運は!?
諸星先生らしい、じわじわと真綿で首を締めるかのようなじわじわとくる恐怖と、独特の解決法が楽しめる作品となっているのです!!

このほかにも10編の物語を収録!
「天才たちの競演」で発表された『闇綱祭り」、ビッグコミックオリジナルのゴジラ増刊と言う特殊な雑誌で発表し、さらに諸星先生らしい不安を掻きたてる描写と、諸星先生らしくない気もするラストが待っている「ゴジラを見た少年」、諸星先生が本気でぶっ飛ばしている感じのいろいろな意味ですごい漫画「(眼鏡なしで)右と左に見えるもの~エリック・サティ氏への親愛なる手紙~」、ひそかに続いているギャグシリーズ「怒々山博士」シリーズが2作品、などなど……
ホラー、ナンセンスギャグ、分類不可能な作品、中国の昔話チックなお話、寓話的なお話などなど、ジャンルは多種多様!
発表時期の違いや、諸星先生のチャレンジ的な意味もあるのか、画風も変わっているものもあるなど、内容は実にさまざま!!
諸星先生ファンならば見逃すことは許されない、お腹いっぱい間違いなしの一冊となっているのです!!

……ところで本作、諸星大二郎劇場第1集とあるわけですから、当然第2集、3集と出るんですよね!?
怒々山博士シリーズとかまだ単行本未収録の作品もありますし、昔の手に入りづらい単行本にしか収録されていないものもありますから、その辺の網羅もぜひお願いしたいところですが……どうでしょう!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!