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今回紹介いたしますのはこちら。

「鮫島、最後の十五日」第15巻 佐藤タカヒロ先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。



さて、身体はボロボロになる一方にもかかわらず、初日から白星を10積み重ねた鯉太郎。
そんな鯉太郎の11日目の対戦相手は、かつて鯉太郎が目を覚まさせ、その結果関脇にまでたどり着いた天雷!
天雷も待ち望んでいた鯉太郎との取組ですが、その前にまず天雷自身の十日目の取組もあって……?



天雷と鯉太郎の取組は、序の口の時に一回あっただけ。
天雷にとってその取り組みは忘れられないもので、もう一度鯉太郎とやりたい、と再三言っていました。
ですが、ある時期から天雷はピタリとその言葉を口にしなくなってしまっていたのです。
それは、天雷と鯉太郎が幕内に昇進した後に起きたある出来事がきっかけとなっています。
遂に鯉太郎と天雷の取組が決まったある日の事。
お互いその割を見て、待望の取組を楽しみにしておりました。
ところが、悲劇は起こってしまいます。
翌日に待望の取組が決まったその日、なんと鯉太郎が右足にけがを負ってしまい……休場に追い込まれてしまったのです。
天雷が土俵に上がり、不戦勝の名乗りを受けた後、花道を引き揚げていますと、控室に行く前の廊下で鯉太郎が待ち構えているではありませんか。
そして鯉太郎は天雷に頭を下げ、すまなかった、と本当につらそうな顔で謝罪をしてくるのです。
相撲取りが休場してしまうのは仕方のない事。
幕内までたどり着いたものなかで生涯休場なしで終わる者のほうが珍しいくらいです。
ましてや小兵にもかかわらず注文相撲を嫌い、真っ向から勝負を挑み続けている鯉太郎ならばなおの事!
全力で土俵に上がった結果なんだから謝るな、その全力の相撲で俺の目が覚めたんだ。
仕方ないさ、俺が戦いたいのはそんな相撲を取るお前なんだから。
今はまだ時期じゃなかったってこと、その時が来るまでいつでも万全の状態で待つさ。
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今の俺は強いぞ、鮫島!

そんなことがあってから、天雷は敢えて鮫島の名前を口に出さないようになっていました。
口から漏れた言葉で、願いが遠ざからないように。
そして、溜めた思いがあの続きを引き寄せるように……!!
そんな街に舞った戦いが、今度こそ実現する。
天雷の胸は躍っているに違いありません。
が、その前にまずは今日の取組です!
天雷の相手は、小結・白鯨力。
この白鯨力と言う力士、三役にまで上がる力士なのですから実力があるのは間違いありません。
ですがそれ以上に目を惹くのは、取組前のパフォーマンスです。
以前現実の相撲のほうでは、取組前に「ホゥッ!」と気合の声を上げる力士がいまして、そちらは品格の面で問題ありとされて止めさせられてしまいました。
この白鯨力のパフォーマンスは、その「ホゥッ!」なんか比べ物にならないほどすごいものでした!
土俵の角に立ったかと思うと、腕を胸の前で十字になるようにクロス。
そして、変身、とつぶやき……
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Vサインの両手をVの字にあげて片足立ちになり、ビクトリースター!!と大声で叫ぶ、と言う……もうなんか品格とかそう言う次元ではないもの!!
実際この白鯨力も注意されまして、一時期はこのパフォーマンスをやめたこともあったのです。
すると途端に成績は急降下。
結局パフォーマンスを再開することになり、それから番付を駆け上がるようになり……気が付けば三役の座を射止めていたのです。

白鯨力は普段は物静かでおとなしい男なのですが、何かの拍子でスイッチが入ると、暴走して制御不能の大暴れをしてしまう問題児でした。
ですが、親方の息子と打ち解け、息子とともに大好きな変身ヒーローのポーズを取ることをルーティーンとすることで、取り組みの時のみ、相手力士に対してのみ、暴走モードの力を発揮することができるようになったのです!
暴走モードの力を持った白鯨力は、すさまじい突進力で一気に相手力士を押し出すパワーを備えています。
対する天雷も、角界一とまで言われる怪力の持ち主です。
組み止めて力勝負になれば、番付でも勝る天雷が有利と言っていいでしょう。
ですが相手十分の形をとらせず、一気に寄り切っていけば白鯨力も勝利の目は十分!!
天雷にとっては、万全の状態で待っていると約束した以上、鯉太郎との戦いを前に負けて勢いを落とすわけにはいきません。
白鯨力からしても、親方や息子さんに報いるため、ひとつでも白星を多く積み上げたいところ!!
怪力VS怪力、そして土俵上で全く別の雰囲気に変身する力士同士……
注目の一戦は、
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始まります!!



と言うわけで、天雷VS白鯨力が描かれる今巻。
天雷と言えば、無印「バチバチ」の時代から屈指の強キャラと言っていい男。
本作「最後の十五日」のタイトルからしても、14日目くらいに当たってもおかしくないくらいのレベルです!!
このライバル同士の対決、一番一番に大きな意味のある本作の中でもトップクラスに重要な戦いとなるでしょう。
そしてそんな、現在の天雷の力をうかがうには最適な白鯨力との一番。
紹介文で触れた以上に、本編ではしっかりと人間像が描かれる白鯨力、その扱いからしてもイージーな相手ではないことがわかるでしょう。
超弩級の力勝負、一瞬で決まりうるこの一番も、ただの前フリではない注目の一番なのです!!

そして、当時天雷に頭を下げた鯉太郎の周りの物語も掘り下げられるのが本作らしいところと言えましょう。
鯉太郎がちょっとやそっとけがをしたくらいで、ライバルとの取り組みを諦めるはずがない、と言うのは本作を読んできた方ならばわかるはず。
ではなぜ鯉太郎がこの一番をあっさりあきらめた、ように見える決断をしたのか?
そんな部分に隠されたドラマもきっちりと描かれ、厚みある物語を演出してくれるのです!!

さらに、鯉太郎の体に起き始めた変化の兆しもまた描かれ……?
このシリーズの鍵を握る泡影との一番を予感させるそのシーンにも注目です!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!