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今回紹介いたしますのはこちら。

「ジャヒー様はくじけない!」第1巻 昆布わかめ先生 

スクウェア・エニックスさんのガンガンコミックスJOKERより刊行です。 


昆布先生は13年ごろからイラストレーター・漫画家として活動。
現在も本作を連載する傍ら、芳文社さんや KADOKAWAさんの雑誌で連載を持つなど、精力的に活躍されております。

そんな昆布先生が描く本作は、最近ちらほら見かける異世界からやって来た異種族が、人間界であれこれ苦労する様子を描く日常もの。
ですが他の作品とはちょっぴり違う味付けがされていまして……?



権力、魔力、美貌、どれをとっても最高レベルを誇っていた、魔界No2の実力者・ジャヒー様。
彼女は魔界中の誰もが恐れ、敬う圧倒的な存在……でした。
ですが今の彼女は
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なんだかちっちゃい姿で、築40年、四畳半一間のアパートで暮らし、夕食はもやしのみ。
そんな極貧生活を送る体たらくでございます。
こんな生活、もう嫌じゃ!!
彼女ほどの落差がなくとも、この状況を強いられればそう叫びたくもなると言うもの。
早く魔石を集めて魔界を復興せねば、と決意を新たにするジャヒー様なのですが……

彼女がこうまで落ちぶれたのは、数か月前に起きたとんでもない事件のせいでs田。
突然ジャヒー様の元に届いた、敵襲を知らせる声。
何人が、どういう装備でやって来たのか、と言う情報すらないまま、その敵はジャヒー様の前に姿を現しました。
なんとその敵はたった一名、しかも年若い少女。
ただの小娘ではないか、お前のようなものが来るところではない、今すぐ立ち去るがいい。
と、ジャヒー様がその少女に告げ終わるより先に、少女は目にもとまらぬ速さで背後にあった巨大な魔石を一撃!!
魔力をつかさどる魔石を粉々に打ち砕いてしまったのです!
魔力をつかさどる魔石がなくなると言うことは……魔王の死を意味しています。
そして魔王が死んだと言うことは……魔界が崩壊する、と言うことなのです!

気が付けばジャヒー様は、少女の姿で人間界に一人流されていたのです。
そこからまあ紆余曲折ありまして……何とかこのアパートに住むことができました。
魔石さえあれば、魔界を復興させ、魔王を復活させることもできる。
他のものは無事なのか……?
様々なことを思案しようとするのですが、なにせ夕飯はもやしのみ、物足りなさで考えがまとまりません。
思い出されるのは魔界にいた頃の豪勢な食事。
しかもそれを、口にあわないと下げさせていた思い出……
もったいない、なんというもったいなさ!と、その思い出はさらにジャヒー様を追い詰めるのです!
一刻も早く魔石を集めて魔界を復興させねば。
そう言いながらも、ジャヒー様は食器を片付け、洗濯をして、掃除をして……と、完全に所帯じみた動きをしています。
こんなことをしている場合じゃないじゃろ、このままでは家事も節約もできる家庭的な娘さんになってしまう、魔界ではすべて奴隷にやらせておったのに!
そう苦悶しながらも、ジャヒー様はトイレ掃除にいそしむのです。

そうこうしているうちに、時間がやってきました。
何かを告げるアラームが鳴り響き……ジャヒー様は掃除を中断します。
そして、手元に残ったごく小さな魔石に手をかけました。
ジャヒー様はこの小さな魔石を使い、ある一定の時間ならば元の姿に戻ることが可能なのです。
以前の栄華を誇っていた時代を思い起こさせる、美しくセクシーな姿に戻ったジャヒー様は、誰もいないのに大見得を切り、さあて、本気を出すかのう、と漏らすのです。

いらっしゃーせー、
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と元気よくお客さんを迎えるジャヒー様。
ジャヒー様、居酒屋でアルバイトをしています。
気安くおねーちゃんと呼ばれ、注文を取らされ、商品を提供する。
……本気を出して、ジャヒー様は生活費を稼いでおられました。
時折ふっと正気に返り、自分はいったい何をしているんだ、魔石集めは、魔界復興は?と自問自答するのですが、なにせ当座の金子がなければ人間界では何もできません。
アルバイトが終わった後、休憩室でがっくりとうなだれておりますと、そこに店長がやってきまして、ジャヒー様を気軽にヒーちゃんと呼んで声をかけてくるではありませんか。
ジャヒーちゃんだからヒーちゃんね、と気軽に声をかけてくる彼女に、憤懣やるかたないジャヒー様。
ですが店長はそんな怒りも知らず、お客様も言ってたけど、笑顔じゃないとだめよ、とほっぺたをつまんでジャヒー様の口角を上げさせるのです!
ほら、すまいるすまいる!笑顔にならないとお給料揚げないわよ?
そう言われてしまっては、流石のジャヒー様も従わざるを得ません。
魔界で恐れられていた我が笑顔なんて浮かべるか、と釈然としない思いを抱いたものの……なんとかぎこちない笑顔を浮かべると、えらいわ、流石ヒーちゃんね、と店長は頭をなでなでしてお給料を渡してくれました。
恥ずかしいやら屈辱やらで、複雑な気持ちのジャヒー様。
奪うようにその給料を受け取りますと……なんだかお給料がいつもより少し多いような。
店長によれば、頑張ってくれてるから時給を80円上げた、とのこと。
これで今日はおいしいもの食べていらっしゃい、と言う店長の優しい声を聞いて、
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ジャヒー様はナチュラルにいい笑顔を浮かべてしまうのでした。

家に帰ってジャヒー様大反省。
何でこんなことで喜んでるんだ、我は魔王様の側近じゃぞ!!
魔石を一刻も早く集めんといかんのに、あの店長め、80円時給が上がったくらいで!
そう言って叫ぶジャヒー様でしたが……その日買って帰った久しぶりの肉の旨さに苛立ちもすべてかき消されてしまうのでしたとさ……



と言うわけで、ジャヒー様の奮闘が描かれていく本作。
異世界のポンコツな異種族が空回りする様子を描く作品をちらほら見かける昨今ですが、本作はそう言った作品と違い、突っ込み役の普通の人間の男子と言った、もう一人の主役と言える存在がおりません。
店長やこの後登場する大家さん、魔界時代の知り合いなどのサブキャラは登場するのですが、その誰かが他の漫画のようにジャヒー様へのツッコミに終始すると言うことはありません。
本作の肝となるのは、なんといいますか……ジャヒー様の報われなさと、染みわたる人情の暖かさ!
ジャヒー様もジャヒー様なりに頑張ろうとしているものの、とにかくその日々の暮らしに終われているうちに毎日が終わってしまい、時折魔石を探しに行ってみても思うようにいかない。
彼女の辛い日々と、ごくまれにちょっとだけ報われる様、そして店長や大家さんに優しくしてもらって不覚にもジンと来てしまう様……
そんな様子を、親心めいた気持ちで楽しむスタイルの作品となっているのです!
とはいってもジャヒー様も魔界時代の尊大な自分を忘れられないいい性格をしておりますので、報われない感じも含めてコミカル&自業自得に描かれており、暗くはならない味付けに。
楽しくも切なく、あったかい物語に仕上がっていますよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!