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今回紹介いたしますのはこちら。

「金剛寺さんは面倒臭い」第1巻 とよ田みのる先生 

小学館さんのゲッサン少年サンデーコミックススペシャルより刊行です。


さて、「タケヲちゃん物怪録」連載終了後、実に三年ぶりとなるとよ田先生のストーリー漫画の新作となる本作。(学年誌で連載され、単行本音刊行されなかった「オバケのサリー」の連載があったり、育児漫画の「最近の赤さん」は刊行されたりはしていましたが!)
連載終了後から本作刊行の間、特に17年にはなんだかいろいろあったようで、そのいろいろもあって並々ならぬ意気込みで描かれている本作、その内容はと言いますと……?



街角で鳴き声を上げている捨て猫。
その捨て猫を、一人の「鬼」がのぞき込み……おやつをあげようとしていました。
すると、その行為を見咎める人物が現れます。
その猫ちゃんをどうするのか?飼うのか?
行動にはすべて責任が伴う、仮におやつをあげればその場はしのげるかもしれないが、ネコちゃんは次も期待してしまい、生きる本能をダメにしてしまうだろう。
その責任を負えるのか、負えないのならおやつをあげるのをやめたまえ!
そんな正論を鬼に向かって叩きつけていくのは、メガネの女子高生。
その後も彼女の正論を繰り出し続けるのですが、その横で事件が起きつつありました。
たまたま近くにいた妊婦さんが、陣痛に苦しみだしていたのです。
それに気がついた鬼は、説教中にもかかわらず、心配そうに妊婦さんに近づいていくのですが、ちょうどその時に妊婦さんに限界が来たのか、痛いと大きな悲鳴が上がります。
その直後、大丈夫ですか?と声をかけたのは鬼……ではなく、あの説教をしていた女子高生のほうでした。

女子高生はものすごくてきぱきと動き、鬼にもいろいろと指示を出して手伝わせ、妊婦さんを手際よく処置、さらに産科医さんに送り届ける手配を行いました。
感激した妊婦さんは去り際にせめて名前だけでもと女子高生に尋ねるのですが、女子高生はこの行為に心は介在せず、道徳の教科書にあるようなシステムにのっとったプログラムのような物、感謝する習志野道徳的規範にしてもらい、自分のことは気にするな、と一気呵成に語り、結局名乗らないままお別れするのです。

妊婦さんが病院に向かって落ち着いた後、彼女は改めて鬼へと向かいあいます。
緊急時故命令口調で指示をしてすまなかった、と謝罪し、鬼の来ている征服から同じ学校の生徒であると確認すると、彼女はそこで初めて名乗ってきました。
2年A組の金剛寺金剛だ。
そう名乗る彼女を見て……鬼のほうも名乗ります。
1年A組、樺山プリンです!地獄から来ました!
名乗るとともに、樺山の心に文字通り、心臓が撃ち抜かれるような衝撃が走ります。
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まるでそれは、天使が齎す突然の福音。
その衝撃に撃たれた樺山は、迷うことなくその衝動のままにこう宣言したのです。
金剛寺さん好きです!!大好きです!!
……そう言われた金剛寺は、少し黙った後……目にもとまらぬ速さで樺山に体落としを決め、去っていくのでした。

その性格は秩序や公平を重んじ、学業は全国模試64位の優秀さ、所属する柔道部ではインターハイ個人2位。
学業優秀にして、質実剛健を絵に描いたような金剛寺は……放課後、樺山を尋ねます。
あまりに無礼だと頭に血がのぼって体落としを決めてしまい、怪我をさせてしまった。
そのことを親御さんに謝らなければならない。
そう考え、金剛寺は樺山に自宅へ案内してもらうことにしたのです。
樺山は、例の猫を抱えた状態で待っていました。
その猫のかわいらしさに惹かれる金剛寺。
それでも自分に気に入られるために拾ったのか、樺山君の浅薄な、快楽主義的行動には憤慨している!と本人に包み隠さず自分を通すのですが……
樺山の家についてみますと、

家じゅうネコだらけ!!
何でも樺山は、捨て猫を見るとかわいそうになってついつい拾ってしまい、今やその数18匹にわたる状況となっていたのです!
この子は本当に優しい子で、樺山のことを語る彼のおばあちゃん。
そんなあばあちゃんに、例の件を謝るものの、この子は丈夫だけが取り柄なのと笑って許し、また猫ちゃんと遊びに来てね、とまで言ってくれるのです。

金剛寺に駅まで送ってもらう道すがら、いろいろ話を聞いてみますと、あのおばあちゃんは樺山が地獄から逃げてきた3歳の時に拾ってくれた恩人なのだとか。
その時のおばあさまの行動が君の人格形成に影響したのか、とつぶやく金剛寺ですが、すぐにこれはデリカシーのない発言だったと謝罪。
ですが樺山のほうは、自分の中にもおばあちゃんがいるんですねとむしろ嬉しいような表情を浮かべるのです。
……金剛寺は、改めて謝ります。
樺山は確かに衝動的な行動をとってしまう人間ではあるものの、誠実で優しい人間なのだな、と評価を改めました。
そこで改めて、なぜ自分を好きになったのか、と聞いてみたところ、今朝見てからずっと「キラキラしている」からとのこと。
当然そんな理屈で金剛寺は納得できませんし……何より、自分が「面倒臭い」人間であることを自覚しています。
人の心が読めない自分は、朝、心ではなく正しさで動いた。
口やかましく正しさを求めるのは、人の心が読めない自分の愚鈍さによって何かを見逃さないように必死なだけ。
そんなものは中身のないガランドウの鎧だ、君のように優しい人間ではない。
私を誤解している、君にお似合いのもっと素敵な人を探したまえ。
そう言って、立ち去ろうとする金剛寺。
ところが樺山はその発言を聞いて、金剛寺がなぜキラキラしているのかを理解したようなのです。
優しくないからすごい、かっこいい、あこがれる!
自分は好きなことしかできない、鎧だとしても自分にはないキラキラの鎧だ!!
何も誤解はない、そのままの金剛寺が素敵だ。
そう言って、樺山もまた改めて言うのです。
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僕は金剛寺さんの面倒臭いところが大好きです。
その発言を聞いた瞬間、金剛寺の元にも天使が現れ、そしてあの胸を打つ銃弾が放たれました!!
が、金剛寺持ち前の頑なさで、その銃弾はすべてはじかれてしまい……あげく、天使の持つ銃を分解して検め始めてしまいました。
結果、でてきた言葉は「興味深い」というもの。
一度持ち帰って考えさせてくれたまえ、と言い残して今度こそ去ろうとするのですが……その時、金剛寺の耳に、微かに……赤ちゃんの泣き声が届いたのです。
それは、朝金剛寺が助けた妊婦さんから生まれた娘さんの声でした。
金剛寺さんが助けなければ、あるいは失われてしまっていたかもしれない娘さんの声。
勿論この声がそんなものだとは知る由もない金剛寺ですが、この赤ちゃんの泣き声が金剛寺の心に貼られていたバリアが緩みます。
瞬間、天使の銃弾はとうとう彼女の体に命中し……
早鐘のように彼女の心臓が目句を打ち始めたのです!!
その衝動は、ある日突然訪れます。
彼女の心臓を激しく突き動かすその衝動、それは……
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私も、君が好きだ。
彼女に、そう口走らせたのでした!!



と言うわけで、告白から幕を開けることになる本作。
本作はとよ田先生の原点ともいえる「ラブロマ」をイメージさせる、ちょっと不器用な二人のちょっと変わった恋愛模様を描いていくラブコメディとなっています。
が、本作で特徴的なのは、物語全体に漂う「熱量」のものすごさではないでしょうか!!
とよ田先生も自身でおっしゃられておりますが、本作では先生の好きなように描いている感がビンビン伝わってくる描写がそこかしこに見られます。
あくまでメインは樺山と金剛寺のお付き合いではあるものの、そのお付き合いの中で少しずつステップアップしていく様を、ものすごくドラマチックに、たっぷり尺を裂いてテンション高く描いております!
さらにそのお付き合いの様が、本人たちが知らずして周囲に影響を与えていく「本編とは大きく関わりの無い物語」が頻繁に挿入され、無駄に(褒め言葉です!)壮大に、感動的になっていくのもまた面白いところ!!
読んでいるこちらのテンションも上がること間違いなしのシーンがたっぷりと堪能できますよ!!

そしてもちろんメインになる金剛寺のかわいらしさ、樺山の優しさも言うまでもないくらい素敵!!
本筋のほうも間違いなしの面白さ、キュンキュン感が満載なのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!