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今回紹介いたしますのはこちら。

「コロコロ創刊伝説」第3巻 のむらしんぼ先生 

小学館さんのコロコロアニキコミックスより刊行です。


さて、のむら先生の困窮にあえぐ現状の打破を目指す日常と、コロコロコミックの長い歴史を振り返るパート、そして自身の歩みを描くパートと三つの柱で進んでいく本作。
今巻ではいよいよのむら先生最大のヒット作となる、あの作品が生み出されるエピソードが描かれることとなります!!



スマッシュヒットした「とどろけ!一番」の連載終了後、のむら先生は苦境に立たされていました。
「男トラゴロウ」「熱血ヨーヨー戦士 電撃タケル」「Dr.ゴックン」と立て続けに連載をしたものの、どれも失敗。
この頃ちょうど担当編集さんが初代の平山さんから本橋さんに変わっていたのですが、不振の原因はそこではありませんでした。
自分で良い漫画のアイディアが思い浮かばなくても、最終的には編集者さんがなんとかしてくれるだろう。
のむら先生の新作が今一つ振るわなかったのも、そんな甘えの影響もあったのでしょう。
そんなどうしようもない毎日を過ごすうちに、のむら先生の400万あった貯金も底をついてしまいます。
このままでは生活できない、俺には漫画の才能なんてないのか?
次の作品がだめだったら実家に帰って漁師でもやるか、でも体力のない自分ができるかな……
そんなことを考えていたところ、咥えていたスルメの足を思い切り噛んでしまい、のむら先生のテンションはさらにがた落ち。
煙草を節約するために咥えているスルメまで俺を馬鹿にして!と毒づくのでした。

そのころ、前担当の平山さんも悩んでいました。
一時は95万部まで発行部数を伸ばしていたコロコロコミックですが、この頃には40万部を切ってしまっていました。
このままではマズイ、次の一手を考えなければ!!
同僚と飲んでいる時も、平山さんの頭の中はそんなことでいっぱい。
同僚たちはそんなことも知らず、雑談に花を咲かせていました。
最近の子供たちは、部活に宿題、塾通いと忙しいんだな。
昔に比べて漫画をじっくり読む時間は減ってきているね。
今の子供たちは忙しすぎて、時間がないんだな。
……平山さんは、その会話を聞いてハッとします。
ひょっとすると、今のコロコロに足りないものと言うのは……どの号からでも読める、シンプルな漫画なんじゃないか!?

本橋さんがのむら先生の元を訪ねますと、部屋はごっちゃごちゃ。
相変わらず汚いな、何だこのゴミの山は、と言いながら手近にあったティッシュの空箱を拾い上げました。
するとのむら先生、それはゴミじゃないと言うのです。
ティッシュの空箱の中に両足を差し込めば、
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スリッパの代用になって便利なんですよ!と笑うのむら先生。
マジかとずっこける本橋さん、それならあの廊下の端に積んである段ボール箱は何なのかと尋ねてみますと、それは何と側面が開くようになっていまして、下駄箱の代わりになっていました!!
いくら金がないからってセコすぎるだろ!とたまらず突っ込む本橋さん。
ですがのむら先生は、今は節約に命をかけてるんです!と一向にそのことを反省していないご様子。
さんまの骨は櫛になるなとか、スーパーの袋にわに革の模様を描いたらハンドバッグになるなとか、最近はそんなことばかり考えている。
そんなばからしいことを満面の笑顔で語るのむら先生に本橋さんはあきれ……そうになるものの、そこでアイディアがひらめくのです!!
このセコさは漫画になるぞ!
セコい男、のむらしんぼだからかけるんだ!!

早速そのセンでネームを割り始めるのむら先生、
平山さんにもアドバイスを求めたところ、これはいいと手ごたえを感じてくれたようです。
が、問題がないわけではありません。
今までのむら先生が手掛けていたのは、ストーリーのある長編漫画ばかり。
ギャグ漫画らしいコマ割り構成ができていない、と指摘。
さらに児童向けのギャグ漫画にしては、主人公が普通すぎる、とも言うのです。
真摯に受け止めるのむら先生に対し、平山さんはこう提案します。
今の子供たちは漫画をゆっくり読んでいる時間がない。
そこでだ。

このセコさが売りの漫画を、4コマ漫画にしてみないか!?
そう言われたのむら先生、ショックを隠し切れませんでした。
児童漫画で四コマ漫画なんて、今まで誰も描いていません。
と言うことは、人気を取るのは難しいということでもあり、さらに4コマはその性質上ページ数も少なくなってしまうわけで、他の個性豊かな漫画に呑み込まれてしまうかもしれない……
のむら先生はそう考えたのです。
が、そこで本橋さんは燃えてきた様子。
誰も描いていない、だからこそ価値がある!
前例はないが、前例がないなら作ればいい!!
子供漫画の4コマで、新天地を開拓するんだ!!

その後のむら先生は、必死に主人公となるキャラのブラッシュアップに励みます。
「ドラえもん」「あらし」のような、一目でパッとわかる「顔」の持ち主。
どうすればそんなキャラになるのか……?
そんな時思い浮かんだのは幼少時の思い出。
当時ののむら先生が、一生懸命読んで、落書きしていた少年サンデーの漫画のキャラクターたちでした。
頭のてっぺんにはオバQのような三本の毛。
ちび太のようにシンプルな服装。
名前は影丸と同じ母音のハゲ丸……!!
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こうして突然何かが降りてきたように、「つるピカハゲ丸」は誕生したのです!!

第1話はわずか8ページの掲載となりました。
漫画を読み慣れていないと言うのむら先生のお父さんは、分厚いコロコロの中の8Pを見つけることができず、お前の漫画が乗っていないと電話までしてくると言う……
なんといいますか、あまり幸先の良くないスタートでした。
コロコロコミックは、アンケートはがきを無作為に1000票抜き出して人気を調査するのですが、まず最初に発売後すぐ届いたはがきから200票抜き出し、速報を出すシステムを採用していました。
まずその速報の結果がのむら先生にも届けられたのですが、その結果は何と!!
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……ほとんどビリだと言うではありませんか!!
その衝撃の発表にのむら先生はとんでもないショックを受け、叫び声をあげて倒れてしまったのです!!
一体のむら先生はどうなってしまうのでしょうか!?
人気作となるはずの「ハゲ丸」のこの人気のなさはどう言うことなのでしょうか!?
このあと、事態は急転していくのです……!!



というわけで、とうとうハゲ丸誕生にこぎつけた本作。
「とどろけ!一番」である程度のヒットを飛ばしていたのむら先生でしたが、この「ハゲ丸」は別格のヒット作となるのは皆様のご存知の通り。
ではこの不人気、目立たなさの原因は?
運命の出会いともいえる「ハゲ丸」の誕生、そしてここからまさかの逆転劇。
のむら先生の飛躍、しっかりとご確認ください!!

……のむら先生の近況を知る我々としましては、ハゲ丸終了後にすごく興味があるわけですが……本作はコロコロ創刊伝説、コロコロの紆余曲折を語る上では余談になってしまいますから、そのあたりは本作で余裕が出たら、あるいはまた別の作品で語っていただきましょう……!

そしてその他、別のコロコロ作家さんにスポットを当てたエピソードも収録。
今回取り上げられるのは、児童向け漫画誌であるコロコロの中で最も「少年マンガ」していた漫画と言っても過言ではない「あまいぞ!男吾」の作者であるMOO念平先生。
そして、コロコロの歴史の中でも屈指のヒット作となった「おぼっちゃまくん」でおなじみの大御所、小林よしのり先生!
特に小林先生はご本人もノリノリだったようで、たっぷりページを割いて3話使って、コロコロに作品を描くようになるきっかけの出来事からしっかり描かれております!!

さらにそれに連動して、コロコロコミックの「ふろく」に関するエピソードも収録。
こちらは漫画家はほとんど登場しない異色のエピソードになっていますが、だからこそ本作には欠かせないお話!!
編集部のふろくにかける熱い情熱……必見です!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!