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今回紹介いたしますのはこちら。

「世界は寒い」第1巻 高野雀先生 

祥伝社さんのフィールコミックスより刊行です。


高野先生は12年にデビューした漫画家さんです。
ウェブコミックでデビュー後、祥伝社さんのフィールヤングをメインに活躍されています。

そんな高野先生の描く最新作となる本作は、とある女子高生6人組があるものを手にしたことで変わってしまう日常を描く物語となるのですが……


河川敷でタバコをくゆらす三好。
それを見て、臭いからやめろ煙草なんか、とツッコミを入れる岡村。
三好は街を燃やす代わりに手元を燃やしているんだ、と嘯き、たき火してーなと漏らすのです。
だからと言うわけではありませんが、どこからか家事を告げる半鐘の音が聞こえてきました。
また放火伽奈、冬ですな、などと不謹慎なことを言いながら、二人は立ち上がり、店に行ってポテトでも買おうかと歩きだすのです。

その「店」のフードコート、そのハンバーガーショップでは、二人の女子高生がカウンターに立っていました。
やがて鳴り響くクッキングタイマーの音。
ツインテールの古賀が、隣ですまし顔をしたぽっちゃり眼鏡の細野に、この時間にポテトあげても閉店だろうが、と文句をつけるのですが、細野のほうはじゃあ廃棄ですね、と合法的に胃袋に入れる算段を打ち明けるのです。
古賀はそんなだから太るんだとイヤミをいい、私が太っていてもあなたには関係ないでしょうと憎まれ口で返す細野。
そんな微妙に険悪な場所に、もう一人のバイト女子高生、吉川が現れました。
吉川は店長にお願いされて、閉店作業のため急遽バイトに入ったようです。
部活辞めて暇だしいいんだよ、という吉川ですが、閉店をめんどくさがってバイトに任す店長に怒るべきだと怒りをあらわにする古賀。
細野も面白がって、一度マジで切れてみてくださいよ、とけしかけるのです。
と、そこにお客さんが。
早坂と言う、ココのバイト仲間ながら進学校に通っていて最近テスト前で忙しいからシフトに入っていないロングヘアの大人しそうな女子高生です。
彼女は細野と仲が良く、一緒に帰ろうとするついでに声をかけたようです。

早坂がオレンジジュースを買って客席に向かったころ、三好と岡村がやってきます。
相変わらず不機嫌だね、と古賀にフランクな(?)挨拶をする岡村に古賀は、帰れやクソビッチ、どうせまた何かせびりに来たんだろとこれまたフランクに(?)返します。
帰れ帰れと言う古賀ですが、細野は運がいいですね、ちょうどポテトが上がった頃合いでして、と話しかけます。
古賀はやめろデブ!と細野を止めようとしまして、なんだか騒がしくなって来たところ……
唯一残っていた他の客、二人の男性がなぜか慌てた風に帰っていってしまったのです。
岡村の知り合いだったのだろうかとも考えられましたが、さすがにこの一瞬では判断ができません。
とりあえず早坂と一緒の席に行って、一緒に食べるかと聞くのですが、夕飯前なので、と断られてしまいます。
まじめ、えらいよ、と素直に褒める岡村は、自分もいいところを見せようと片づけを手伝おうとしたところ……先ほどの客の忘れ物と思しき紙袋を持ち上げ、驚いたような声を上げました。
なんでもその紙袋、見た目に反して相当重いと言うのです。
興味の湧いた岡村、止める古賀の声も聞かず中味を見てしまいました。
すると中に入っていたのは……
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拳銃、です。
一瞬固まる一同ですが、カスタムした精巧なモデルガンじゃないだろうか、と細野。
せっかくだし、あとで一発撃たせてよ、と岡村は持ち掛けるのです。

モデルガンでも警察に届けるべきじゃないか、と言う見た目に反して真面目な古賀の声を、い発撃ってから出もいいでしょ、と流す岡村。
岡村も手伝って手早く閉店作業を終わらせ、一同はそろって河川敷へと向かいます。
見れば見るほど本物に見えるその銃、これで気に食わないやつ皆撃ちたいな、そしたら誰撃っちゃう?などと物騒なことを口にする岡村。
そして細野が安全装置を外し、岡村に手渡し巻いた。
そこをおして、目標に合わせて、引き金を。
言われるままに岡村は少し離れたところに置いた空き缶をめがけて引き金を引くのですが……
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直後、岡村を襲った反動と、鳴り響いた音は、ただならぬものでした。
命中した空き缶は、バックリと裂けてしまっています。
これは……どう考えてもモデルガンではありません。
これ多分本物ですね、いやあ本物の威力はすごいなぁ、と細野はほれぼれするのですが……他の一同はみな驚くばかり。
今度こそ警察に届けないと、と古賀が声を上げるのですが、撃ってしまったのは犯罪だろう、黙った見てたのもそうじゃないか?ここにいるやつ全員同罪だろ、と岡村と三好。
通報しようとした古賀をそうやって止め、そして最悪川にでも捨てちまおうと言いだします。
……そして、三好がこう言うのです。
でもその前に、皆一発ずつ撃とうよ。
女子高生が銃で人を殺すなんて誰も思わない、これってチャンスじゃないの?
殺したいやつがいない人間なんか居ねえだろ?
と。
どうしていいかわからない他のメンバーは固まってしまうのですが、そこで動いたのが細野。
残った銃弾は五発だから、と銃弾を5人にそれぞれ一発ずつわたし、本体は細野が手にします。
そうすればうっかり撃つことも警察に行くこともない、とどや顔で語ります。
古賀は一人、頭がおかしいんじゃないのか、どうかしてる、とその行動をとがめるのですが……そこでまさかの早坂が言うのです。
「狂ったこの世で狂うならその気は確かだ」。
シェイクスピアの残した言葉です。
一番真面目で頭がいいと思われる早坂がそう言ったことで、なし崩し的に細野の提案した保存方法を受け入れることになってしまった一同。
岡村は言いました。
次までに誰殺したいか考えときなよ、と。
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チャンスは一度きり。
圧倒的な「力」を手に入れてしまった6人は、その力を手にして……



と言うわけで、拳銃を手にしたことでとんでもない力も手にしてしまった女子高生たちの物語を描く本作。
その後一同は、それぞれ「殺したい相手」の決定を考えながら日常を過ごすこととなっていきます。
誰にでも居る、と言う殺したい相手。
それは誰なのか?
悩んで極められないものもいれば、とりあえずと言うくらいの感じで決めてしまうもの、そしてずっと前から決まっていたものと、様々です。
そんな誰に決めるかと言う日常とともに、だんだんとそれぞれ過去や現在と言ったキャラクターの背景が明かされていきまして、本作の複雑な物語の全体像が見えていくのです。

大小の差はあれど、それぞれ悩みを抱えているそれぞれ。
ですが、拳銃と言うとんでもないものがきっかけとはいえ、それぞれはその悩みと向き合ったり、ある程度吹っ切って生きることができるようになっていきます。
いつでも悩みを消し去れる、と言う力があるが故のことでしょうが、どちらにしても今までは見えなかったものが見え、人によっては前に進み始めたとすらいえる状況になる彼女たち。
果たして本当にこの後、人を殺すことになるのか。
そして何より、この拳銃を忘れていった男たちは何者で、この拳銃を回収しようとは思わないのだろうか……?
そんな不安と光明が入り混じる物語を、淡々と描いていく本作に引き込まれていくこと間違いなし!!
今巻のラストでは大きく話の動く予感のする引きを見せてくれますし、これからの展開にも期待せざるを得ませんよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!