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今回紹介いたしますのはこちら。

「衛府の七忍」第5巻 山口貴由先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。


さて、無惨に殺され、復讐の鬼「雹鬼」と化した切支丹、レジイナ。
そんな鬼をチェストするためにやって来た中馬と文兵衛は、かの剣豪宮本武蔵の協力を得ることに成功します。
武蔵は特製の鎧「実高」を身に纏い、レジイナと共に蘇った鬼たちと対峙するのです!



武蔵は鬼三匹を相手に、終わってみればほぼ無傷の完勝を収めました。
戦いを終えた後、中馬と文兵衛は武蔵の命で、実高を煙でいぶし始めます。
天敵たる実高の匂いがしては鬼が用心して寄ってこない、だから魚の煙で匂いを擬態しよう……と言うわけです。
鬼三匹を仕留めはしたものの、まだ鬼騒動の発端であるレジイナは健在。
その首を取らない限り、薩摩には帰れない!
中馬と文兵衛はそう決意を固めていたのでした。

その頃、レジイナは水垢離を終え、あおむけに寝そべって点を見つめ、物思いにふけっていました。
どんなに身を清めて祈りを捧げても、神様のお姿が見えない。
あの戦火の中で、レジイナは神様に見放されたの?
レジイナは大阪落城の際、徳川側の傭兵を装って落ち延びようとしていました。
その道行きの中でレジイナと三人の従者は、父、明石ジュストにこう言い含められます。
我らは憎き徳川方の傭兵に扮している、何を目にしても「義」を行おうなどと思うな。
レジイナよ、決して外を見てはならぬぞ。
そう言われてしまえば、外を見たくなるのが人と言うもの。
レジイナは身を隠している面の中から外をそっと見やると、そこにはおぞましい光景が広がっていたのです。
雑兵たちが何の罪もない一般の人々へ戯れに手にかけ、狼藉の限りを尽くす地獄絵図。
レジイナは、血の涙を流しながら声なき怨嗟の声を吐き続けます。
けだものめ、いんへるのに堕ちて業火に焼かれてしまえ!!
……神の教えでは、いかなるものも神の光の中へ来るように祈らなければなりません。
ですがレジイナには、とてもそんなことなどできず……
神はそれを見抜いているから、レジイナをルキヘルの巣が手へ変えてしまったのだ。
そう自分の中で怨身忍者への変身を結論付け、悲嘆にくれるのです。
が、その時のことでした。
背後から、突然人の声がしたのは。
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驚いたな、これほど見事に化けるのか。
いつの間にかレジイナの背後に立っていた、二振りの刀を携えた男。
男は、動くな、もっとよく見せろ、とレジイナの体をじっくりと調べ上げます。
恐れ入ったぞ、産毛の生え方まで乙女そのもの。
……その言葉を聞いた瞬間、レジイナの体の中に怒りがこみ上げてきます。
けだもの。
力なきものと見るや毒牙にかけるあの雑兵がフラッシュバックし……
レジイナはその爪を鬼のそれへと変じ、無背後に立つ武蔵へと放つのです!!
……いや、放とうとした、と言うのが正しいでしょう。
爪を放とうとしたその瞬間、レジいのの手首から先は切断されていたのですから。
鬼の体は斬っても斬れぬと知っているから斬った、ただの女なら武蔵、斬らぬ!
その異様なる雰囲気を感じ取り、レジイナは目の前に立つこのけだものが並みのけだものではないことを察しました。
宮本武蔵、鬼退治に参った。
武蔵はその言葉とともに、レジイナの上に覆い被さります。
醜女と交わって千日の武運満つるなら、鬼そのものと交おうた者の武運はどうなる?
そう言って武蔵はレジイナの胸をむんずとつかみます。
が、そこでレジイナは大きくその姿を変じさせ……!!
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けだものごときの腕力で、るきへるを抑え込めるものか!!
そう言ってレジイナは怨身忍者へとその身を変え、武蔵と手四つの形へ!
そして武蔵に、この姿を見てまだベごとが言えるかと押し返すのです!!
ところが武蔵、その姿を見てむしろ「あり」だ、欲しいぞ!と笑みさえ浮かべるではありませんか!!
レジイナはくわっと形相を変え、武蔵の堂に蹴りを叩き込んで間合いを話します。
そして改めて、爪を弾丸のように放ちました!!
鞘に納められたままの刀を構え、その爪弾を防いで見せる武蔵。
やるな鬼、上の中だ、とレジイナの実力を認める武蔵。
レジイナは再び爪を構え、剣もろとも砕く、いんへるのに堕ちよムサシ!と次なる一撃を放とうとしました!
武蔵は構えます。
鬼よ、武蔵は手に入れるぞ、永久なる武運を!!
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刀を十字に交差する構えを取り、打ってでんとする武蔵。
……レジイナは、その武蔵の十字に構えた刀の中に、ありえないものを見出してしまいました。
それは……レジイナが見ることの出来なくなっていた、そしてずっと探し求めていた……神の姿!!
敵対するけだものの中に神が見えたその直後、レジイナは……!!




と言うわけで、武蔵とレジイナが出会ってしまう今巻。
鬼と恐れられるものと、その鬼を打ち倒して武運を得ようとするもの、
その二人が出会ってしまえば、待っているのは間違いなくどちらかの死、です。
今までの戦いは、悪たる徳川の手のものに、恨みの一念で蘇った怨身忍者が復讐をする、と言うはっきりした主人公と敵役、と言う図式になっていました。
ですがこの武蔵とレジイナの物語、「魔剣豪鬼譚」は、そのどちらもが主役と言って差し支えない物語。
果たしてこの戦いはどちらが勝利をつかむのでしょうか!?
衛府の七忍の中の一人であろう雹鬼であるレジイナか。
徳川の傀儡と言うわけではない、ただひたすらに武運を求める武蔵か。
この二人の戦いは、意外な形で決着を迎え……そして、この「魔剣豪鬼譚」もまた、血飛沫舞う壮絶な戦いの末に決着を迎えるのです!

そしてその後は再び新シリーズに。
七忍目、「霧鬼」が登場するであろうそのシリーズの名は、「人間城ブロッケン」!!
最後の1ピースとなるであろうこの物語に現れる鬼は、そしてその鬼の恨みの源泉となるものは何なのか?
このシリーズも、予想を超える凄惨なものとなることは間違いないでしょう!!

そして徳川側のボス格、桃太郎……大吉備津彦命も動き出します!!
その傍らには、あの超有名な剣豪も並び立っており……
七忍が勢ぞろいしたとしても、一筋縄でいこうはずもない雰囲気が満ち満ちているのです!!
これから先も全く予想の出来ない展開が続いていきそうで、ますます目が離せませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!