6o0
今回紹介いたしますのはこちら。

「六道の悪女たち」第8巻 中村勇志先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。


さて、鬼島連合との最終決戦に挑んでいる六道達。
仲間たちの協力もあり、六道は苦戦しつつも乱奈と童子の待つ屋上へ近づいていくのですが……!?



ギリギリのところで鬼島連合の幹部たちの鉄壁の守りをかいくぐり、六道は屋上へとたどり着くことができました。
そこにいたのは、童子と捕えられていた椿。
そして、乙姫と戦っている乱奈でした。
その場にいた中で、一番驚いているのはほかならぬ童子。
飯沼と幼田がいるからにはある程度てこずる事も想定していたのですが、菫兄妹や椰子谷などの存在も考えれば六道がここにたどり着くなどありえない。
そう確信していた童子は、何が起きたのかと戸惑ってしまいました。
その為、一歩動くのが遅れてしまったのです。
ボロボロの姿の六道が目の前に現れれば、乱奈が童子の想定通りに動かなくなってしまうかもしれません。
六道が来た時点ですぐに屋上から叩きだすなりしなければならないはずだったのですが、そこに気がついた時にはすでに六道は大きな声で乱奈を呼んでしまっていました。
その時、乱奈は……
6o1
いきいきとした笑顔で、乙姫に殴りかかっているではありませんか!
自分が声をかけても反応を見せない乱奈に、今度は六道が戸惑います。
そしてそれを見て、童子は逆にほくそ笑むのです。
間に合った、と。
童子は六道に語りかけます。
見なよ、あの嬉しそうな顔を。
あれが向日葵乱奈の本性だ。
慌てて乱奈に駆け寄って、そんなの関係ないとその行為を止めさせようとする六道でしたが、童子は六道を取り押さえてさらに続けます。
もう自由にさせてやるんだ。
僕は昔から極度の怖がりで、いつも人の顔色をうかがって生きてきた。
するとそのうち、何がその人の幸せかわかるようになった。
般東は「生き方」、葵は「スリル」、椰子谷は「強い男」……
そして向日葵乱奈は、「暴力」……!!
実際その時も、乱奈は依然嬉しそうに乙姫に攻撃を仕掛けていました。
かつては共に戦ったこともある、唯一の友人と言ってもよかった乙姫に。
乙姫もまた、かわすのが精いっぱいで、一撃でももらえば終わり、と言うその戦いの中で、考えていました。
昔から乱奈は戦っている時が一番いきいきしていたな、と。
やはり乱奈は、圧倒的な力を振るう能力の魅力に抗えないのでしょうか。
回避も限界を迎え、ふらりと体勢を崩してしまう乙姫。
乱奈はチャンスとばかりに殴りかかり……!!
その前に、六道が立ちはだかるのです!!
童子の妨害から逃れたのか、あえて童子が解放したのか……
流石に目の前にボロボロの六道が現れれば、乱奈も正気に戻ります。
そのけがはどうしたのかと聞いてくる乱奈に、六道はそんなことよりもと説得を始めました。
乙姫は乱奈の大事な友達だろう、友達を傷つけちゃいけない。
その言葉を聞くと、乱奈は少し沈黙した後……わかった、と頷き、
6o2
私は六道くんとここでお別れ、と思いもよらないことを言うではありませんか!!
六道はとてもいい人だが、自分は違うと言うことがよくわかった、と乱奈。
乱奈は乙姫を指さし、それを友達と思ったことはない、六道以外はみんな同じ、今まで学校も学園祭も六道が何を楽しんでいるのか分からなかった。
自分が楽しいと思えるのは、この手で人を殴りつけている時だけ。
こんな悪い人間が六道のそばに居てはいけない。
……乱奈は、本来自分が六道と交わるべきではない人間である、と言うことをここでありありと実感したのです。
暴力を振るうほど、悪い人間でいていいんだと思えば思うほど、六道くんのことがもっともっと好きになっていく。
そう言って涙を流す乱奈……
六道も本当はわかっていたのです。
全て、術の力だと言うことに。
自分自身には、何の力もないと言うことに……
六道とともに、自分も大粒の涙をはらはらと流していることに気がついた乱奈。
六道は、それでもこう言います。
強くなるよ。
乱奈さんは悪い人だから、どうしようもなく悪い女の人だから……
6o3
そんな悪い乱奈さんと一緒に、楽しい学園生活を送れるくらい、僕、強くなるよ。
堅い決意を表す六道ですが……乱奈は……



と言うわけで、鬼島連合編がクライマックスを迎える今巻。
現状の本作の半分ほどと言う長期シリーズとなったこの鬼島連合編ですが、その超辺にふさわしい内容の濃いものとなっています。
いきなり出てきた5名の幹部と言う集団との戦いというアクション要素だけでなく、その幹部たちのほとんどにもそれぞれドラマがあって、それがしっかり描写されています。
しかもそこに絡めて、飯沼や幼田と言った仲間たちの掘り下げも行われており、仲間たちの物語も楽しめます。
そして何より重要なのが、今までほとんど描かれてこなかった乱奈の心情が自身の口から語られること!!
紹介した部分では、本当に悪女と言いますか、血も涙もない性格としか言えない人間であった乱奈。
ですが、その心情を明かした時に流した涙は、本当に彼女が彼女自身思っているような人間なのか、と言う疑問を投げかけているようにも思えます。
そして六道もまた、乱奈ですら気がついていない彼女の小さな小さなやさしさに気がついていて……!?

この後物語は童子の過去を交え、とうとう最後の戦いへ!!
その心の強さは折り紙付きなれど、喧嘩の強さだけはどうにもならない六道が、たった一人でこの状況をどうにかすることができるのか!?
ますます見逃せない展開が続きますよ!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!