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今回紹介いたしますのはこちら。

「彩子 黒」「彩子 白」 本田慎吾先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスエクストラより刊行です。


さて、「ハカイジュウ」の本田先生の最新作となる本作。
本田先生は「ハカイジュウ」以降すっかりホラー漫画を十八番とされておりまして、同作連載中にも「切子」といった作品も手掛けられておりました。
そんな本田先生が描く本格ホラー漫画となる本作、気になるその内容はと言いますと……?



若者の間でとあるアプリが評判になっていました。
なんでも物凄いAIが入っていて、どんな質問をしても的確な答えを返してくれる、とか。
その名も「SAiKO(サイコー)」。

ごく普通の女子高生、結花もSAiKOを利用していました。
鏡の前でアイプチを使い、ご満悦の結花は、さすが「彩子(サイコ)」が教えてくれたアイプチ、と悦に入っています。
するとその声を聞いたSAiKOのナビゲーター、AIの彩子は、どういたしまして、とってもかわいいよ結花ちゃん、と微笑みます。
結花は素直にその言葉を喜び、それでも彩子の可愛さにはかなわないけどね、とAIである彼女を持ち上げ、そしてこんなアドバイスを求めました。
今めっちゃ気になる人いてさ、バスケ部の須藤センパイかっこよくない?
彩子は確かにすごくカッコいいけど、サッカー部の佐伯君はどうしたの?と聞き返してきました。
結花は少し前にも彩子にアドバイスを求め、当時大好きだった佐伯のハートを射止めたようです。
が、いざ付き合ってみますと求めていたものと違ったそうで、もういいかなと感じているのだとか。
そこで今度は須藤センパイとの恋がみのるアドバイスがほしい、と臆面もなく言ってのける結花。
すると彩子は、わかった、任せておいて、とほほ笑んで……

ほどなくして、結花は須藤センパイと相当距離を縮めたようで。
彩子のくれたアドバイスは的確そのもので、そこを手掛かりとして一気に付き合い始めるところまでこぎつけたのです。
そんなのろけ話を聞いている友人は、いろいろドン引き。
SAiKOなる裏アプリに全幅の信頼を寄せているのもそうですが、付き合っているはずの佐伯をさっさと捨てて乗り換えた結花そのものに対してもよくない印象しかわいてきません!!
冷めきった目で、良かったね、と漏らすのが精いっぱいな友人……
下校中でもひたすらのろけ話と、彩子に対する感謝ばかりを並べるづける結花、今度の日曜デートに行くんだ、全部彩子のおかげ!ありがとー!!と感極まったような表情を浮かべるのです。
……が、その時、どこからともなく、結花の耳だけに、奇妙な声が届きました。
「さ 行こ……」。
結花は友人が言ったのかと思い、連れて行かないよ?などととぼけた言葉を返すのですが……その瞬間のことでした。
通りがかったビルで行われていた、何らかの工事。
その工事に使っていたのであろう鉄パイプが突如落下し……
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結花の頭を刺し貫いたのは!!!!

そんな悲劇が、日本中で起こっています。
彩子に効率よく「お小遣い」をくれるおじさんを紹介してもらったユミは、ネックレスがファンに巻き込まれ、そのまま首が絞められて絶命。
彩子の力でお店の監視カメラを止めてもらい、その隙に万引きをした三人組は、その直後に大型トラックに轢かれて轢死。
F県ではマイクがのどに突きささって、G県では煮えたぎった浴槽の中で……
次々に、SAiKOを使った女性たちが不可解な死を遂げていたのです!!
やがて、こうささやかれ始めます。
SAiKOは、使ったものを死に導く……
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呪いのアプリだ、と。


さ 行こ。
そんな言葉とともに、使用者を殺していく彩子。
大手IT会社の超天才が独立して作ったともいわれるこのアプリは、一体何なのでしょうか。
聞くところによれば、「ある言葉」を引き金として利用者を殺害するのだとか。
そんなことがただのアプリにできるはずがありません。
まぎれもない、「呪い」をもたらすこのアプリ……
一体それはどうやって生まれたのでしょうか。
……その発端は……一年前に起きたある恐怖の事件なのです。

真面目で優しくお人好し。
彩子(あやこ)はそんな女子高生でした。
その日も数学のノートを貸してくれだとか、掃除当番を変わってくれないだとか、そんなお願いを嫌な顔一つせず受け入れていく彩子。
さらには友人の、いなくなったネコ探しに協力したり、誰もやりたがらないクラスの委員長を買ってでたりと、悪く言えばみんなに便利に使われていました。
ですが彩子はそれを何となくわかっていながら、受け入れているのです。
彩子と付き合っている野球部の貴弘は、人のためばかりで生きていると損するぞ、と心配するのですが、彩子は人のためじゃなくて自分のためでもあるんだ、みんなが笑顔で「ありがとう」って言ってくれると、私嬉しくなるから!とわらいます。
それに真面目に生きてた方がきっといいことあるよ、タカちゃんとつき合えたのがその証拠!とおどけて見せる彩子。
貴弘はそんな彩子の眼鏡を外し……俺だけだな、本当の彩子を知ってんのは、とほほを染め……そっと口づけをするのです。
二人の関係は清純そのもの。
キスや手をつなぐくらいの清いお付き合いで、それ以上は結婚してから、というのが真面目な彩子らしい主張です。
ですが、そんな二人をじっと監視する者がいました。
異様な熱のこもった視線を物陰から送り続けるその男。
すっかり日もくれた月夜に、その男は……ナイフで何かを切り刻みながら、彩子の名を呼ぶと言う機構を行います。
一体その男は何者で、目的は何なのでしょうか……!

翌日。
彩子の元に二つの問題が舞い込みました。
クラスのちょっと派手めな女子、椎名が彩子にこうお願いしてきたのです。
貴弘と自分とのデートをセッティングしてくれないか、と。
貴弘と彩子は幼馴染。
付き合っているとは知らずにお願いしたのでしょう。
彩子は何とか、付き合っている人いるっぽいよ、とはぐらかそうとするのですが……
椎名は鬼のような形相で、誰それ、クソムカつくんだけど!知ってたら教えてくんない?マジ泣かすわそいつ!と顔をゆがめるのです!!

そして、もう一つい問題はさらに恐ろしいものでした。
昨日ネコがいなくなったと言っていた友人の猫が発見されたと言うのです。
ですが、その猫は無残にも殺されてしまった死体として。
しかも……何匹もの他の殺されたネコと、
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ツギハギになった状態で……!!



というわけで、「彩子」をめぐる恐怖を描いていく本作。
今回前半で紹介したのが、「SAiKO」の呪いに恐怖する様子が描かれていく「彩子 黒」。
そして後半が、「SAiKO」が生まれるきっかけを描く前日譚となる「彩子 白」となります!!
どちらも本田先生らしい、ショッキングな描写が連続するホラー漫画。
なのですが、「黒」は呪いのアプリの呪いから逃れるために一組の男女が奮闘する、正統派のオカルトホラー、「白」は奇怪な猟奇殺人事件に巻き込まれ、さらに追い打ちをかけるかのように打ちのめされてしまう出来事に見舞われる彩子の恐怖を描くサイコホラーとなっております!

「黒」のほうでは次々に襲い掛かる理不尽な呪いを潜り抜けながら、そこから逃れる方法、引き金となるものを探す様子が楽しめます。
呪いの犠牲者も多く、とにかくグロテスクでショッキングなシーンもたっぷりと用意されていまして、まさしくホラーと言える作品!!
本田先生お得意のおぞましいクリーチャーも登場し、納得のオチも待っている、1巻でしっかりまとめられて内容になっています。
対して「白」は、グロテスク描写はやや控えめながら、とにかく恐怖と絶望が彩子を苛み、救いのない物語という印象。
打ちのめされていく彩子がどんな結末を迎えるのか、ツギハギの猫はいったい何なのか、椎名や、彩子に視線を送る男は……と、多くの要素が絡み合う、サスペンス要素も豊富な内容になっているのです!!

どちらもホラーとして面白く、そして両方読めばさらに面白くなる本作。
ですが問題は、どちらを先に読むか……です!!
どちらを先に読むかで物語から受ける印象は変わってくるはず。
得体のしれない呪いのおびえるホラーを純粋に楽しみたいなら「黒」から、呪いの誕生からその呪いがどうなっていくのかという時系列を負った楽しみ方をしたいのなら「白」から、と言ったところでしょうか……?
読後感的が良いのは圧倒的に「黒」ですので、そのあたりも加味して選んでみるのも良いかもしれません!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!