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今回紹介いたしますのはこちら。
「AUTO MATON(オートマトン)」第1巻 倉薗紀彦先生 

講談社さんのモーニングKCより刊行です。


倉薗先生は00年代後半に別名義でデビューした漫画家さんです。
現在の名義では09年にサンデー超の「魔法行商人ロマ」で活動をはじめ、その後様々な雑誌を渡り歩いて連載をされました。
近年ではあのジュール・ヴェルヌの名作、「地底旅行」の漫画家も手掛けられるなど、その辣腕を振るっておられます。

そんな倉薗先生の最新作となる本作は、ヒーローものです。
ですが、普通のヒーローものとはかなり毛色が違うようで……?


近未来、東京。
コンビニのアルバイトをしていた明は、何やらカリカリしていた客に因縁をつけられ、突き飛ばされてしまいました。
客はそのまま怒声を浴びせ、店を出ていきます。
明は突き飛ばされた際に業務のサポートをしてくれるロボット、ワークロボにぶつかってしまい、ワークロボは破損。
痛めつけられるわロボは壊れるわ、踏んだり蹴ったりです。
バイト仲間も心配して声をかけてくれましたが、明はほとんど気にしていない様子。
どうやら明、ロボット方面に明るいらしく、この程度ならばとあっさりワークロボを修理してしまったのです。

あのカリカリした客ですが、同情できる面もなくはないのです。
なにせ今は人口の7割が非正規雇用労働者だという超格差社会。
犯罪率も10年前の4倍になっているとのことで、人々の心は荒み切っているのです。
バイト仲間は、いずれ個の仕事だってロボットにとってかわられるかもしれない、この世界は壊れてしまっているんじゃないかとまで言い出し、やってられないとばかりに休憩室に引っ込んでしまいました。
一人残された明は、世界が壊れる、か、と一人呟き、ロボットのパーツを眺めるのです。
するとそこに、棒付きのキャンディを販売用のディスプレイごとレジに置く人物が現れます。
その体の大きな外国人は、なぜか突然
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明に学校は楽しいか、と質問してきました。
……いきなりの質問に戸惑う明、ええ、まあ、とごにょごにょと返しますと、その外国人はグッドバイと言い残して去っていってしまいます。
あまりにも突拍子もない出来事に直面し、ただ見送ることしかできなかった明。
ですが……明は、その外国人に何やら見覚えがあるような気がするようです。

明にはなかなか難しい家庭の事情があるようです。
両親はすでに亡くなり、叔母の下に引き取られているのですが、その叔母は明のバイトした給料をすべて徴収し、その中から一万円だけ明の分だと言って渡すような人物。
しかも学費のためにシフトを増やしたんだと言っても、あんたを養うのにいくらかかったと思ってるんだ、とイヤミまで言う始末。
しかもこの叔母には、明の両親の残した莫大な遺産が転がり込んでいるはずなのですが、そんなものはとっくにない、と怒鳴りつけるのです。
将来のためにロボット関係の勉強をしたいお思っている明なのですが、このままではそれもままならなさそう。
家を出ていきたくても、この家には寝たきりで意識の戻らない祖母もいまして、見捨てていくわけにもいかず……
それでも明は、自力で組んでいるロボットいじりを再開し、少しでも夢に向かって進もうとするのでした。

その後街を歩いていますと、看板広告にあの外国人の顔がプリントされているのが目に飛び込んできました。
あの外国人、実はワークロボを開発した大企業、ロック社のCEO、トマ・ロックと言う大人物だったのです!
道理で見たことのあるはずだ、と驚愕する明。
するとどうしたことでしょう、すぐ背後からバレた?と声がするではありませんか!!
すぐ後ろに、そのトマ・ロックが立っていたのです!!
そしてトマは、明にスタンガンのようなものを押し付けて意識を奪い、その身柄を……

もうもうと立ち込める煙。
その中で泣いている、幼いころの自分。
その自分に、手足は炭化して関節から先がなくなり、頭から血を流している、今にもその命が消えてしまいそうな父親が話しかけてきます。
明、行きなさい……
それだけ言うと父は、がくりとうなだれて……
パパ、と少年だった自分が叫び声を上げたところで、明は目を覚ましました。
気が付けばそこは、鉄の壁で囲われた廊下のような場所でした。
わけもわからないまま廊下の先を進んでいくと、そこには
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手足が動かないように拘束された大男がいます。
そしてその逆方向には、牢屋のようなものの中に押し込められた、5人の男がいました。
どうやら彼らも、気が付いたらそうなっていたようです。
外からあかないか探ってみてくれと言うその男たち。
明はとりあえず周りを見渡すのですが、無数に並んでいる大小の歯車に目を取られているうちに、今の状況が待ったなしである事をわからされることになるのです。
歯車が動き始め……拘束された男の入れられている器の中に、猛烈な勢いで水が満たされ始めます。
同時に、5人の男が閉じ込められている檻の中では天井がゆっくりと下がり始めました。
このままでは拘束された男は溺れ時に、牢屋の中の男たちは押し潰されて死んでしまうでしょう。
直後、場内に放送が流れ始めました。
殺傷まで5分です。
装置を止められるのはあなただけ、それぞれの装置の前にあるボタンを押すことで止めることができます。
ですが、片方を押すともう片方のボタンは押せなくなります。
……明に、どちらかを選べ、というのでしょうか?
人数で天秤にかければ、5人の方を助けるべきでしょう。
ですが5人のほうは全員過去に犯罪歴のある男たち。
拘束された男は、ごく普通の家庭を持つ一般人。
犯罪者5人を助けるか、家庭を持つ普通の男一人を助けるか、何もしないか。
その選択が、明に委ねられたのです……!!

この恐ろしい状況を作り上げたのは、あの男、トマ・ロックです。
そんなことを知る由もない明は……必死に懇願してくる6人の声を聞きながら、戸惑います。
どちらを選ぶのが正解なのか?そもそも正解などあるのだろうか?
追い詰められた状況の中で……明は、装置を動かしている歯車のほうに視線を移しました。
そしてしばらくすると、その動きを止め……昔まだ健在だったころの祖母との会話を思い出します。
パパとママはどうして僕を置いて先に死んじゃったのかな。
僕もすぐに死んじゃう?
時々僕、それがすごく怖くなるんだ。
そう呟くように漏らした明の頭をなでながら、祖母は優しくこう返したのです。
確かに死と言うのは突然やって来る、だから怖くなるのはわかるよ、ばあちゃんもそう。
デモね、今は少し難しいかもしれないけれど、死ぬことを怖がって日々を過ごすより、自分は今をどんな風に生きようって考えることの方が、もっともっともっと大事なんだよ。
……明の顔には、決意がみなぎっています。
お父さん、お母さん、ばあちゃん、ごめん。
そう心の中で謝った明は、上着を脱ぎ、自身の右腕に巻きつけます。
そして6人の方を振り向き、こう言ったのです。
大丈夫、これで止まります。
そして明は……
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自らの右腕を、歯車に巻き込ませたのでした!!!


というわけで、衝撃的な幕開けを迎える本作。
明はなぜこんな理不尽な選択を強いられなければならなかったのでしょうか。
この選択を強いてきた、トマの真意とは何なのでしょうか。
そして、6人を助けるために自らの腕を差し出した明の運命は……?
とてもヒーローものとは思えない開幕となった本作ですが、この後物語は本当のスタートを切ることとなるのです!
腕を失った、はずの明が与えられる役目。
それは、あのどちらの命を助けるのかという質問が、そして、自らを犠牲にしてでも全員助けると言う答えを出した意味が問われるものとなっています!!

衝撃の開幕を迎え、ヒーローとなることとなる明。
明はこれからどうなっていくのか、トマは本当は何をしようとしているのか。
そして、その裏で動く怪しげなものとは……
これから先の展開が気になって仕方のない、倉薗先生の持ち味の一つである、緊迫感溢れるドラマが楽しめるのです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!