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今回紹介いたしますのはこちら。

「鮫島、最後の十五日」第17巻 佐藤タカヒロ先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。



さて、天雷を相手に劇的な勝利を収めた鯉太郎。
ですがその体には、もはや明白と言っていい限界を示す兆候が表れています。
それでも自分では決して止まることはない鯉太郎。
彼を止められるのは宿命のライバルである王虎なのか、それとも……?



心身ともに絶好調と言っていい王虎。
大関ではあるものの、その相撲ぶりは相手の力をすべて出し切らせ、それを受けきった上で返り討ちにするという横綱相撲そのものです。
対する鯉太郎は、全相撲に全身全霊でぶつかる明日をも見ないがむしゃらな相撲。
どちらの相撲が優れているということはないのでしょうが、その取り組み方での消耗具合の差は歴然です。
王虎はその体にほとんど故障はなし。
鯉太郎は……言うまでもないでしょう。
ですが花道で偶然顔を合わせた二人は、そんな体調の具合など全く関係ないかのように、全身から闘志を漲らせるのです!!
それもそのはず、明日12日目は……王虎と鯉太郎が顔を合わせるのですから!!

夜。
鯉太郎はひとり、土俵の前で一人灯りもつけずたたずんでいました。
そこにやって来たのは……椿です。
電気をつけ、何やってるの、と尋ねる椿。
鯉太郎のすぐ脇を見てみますと、そこにはバナナやゼリー状の栄養食が転がっています。
部屋に残っていた新弟子に聞いたところによれば、ちゃんこも少ししか食べていないとのこと。
まさかこれで済ますつもりじゃないでしょうね、と尋ねてみれば、てっとりばやくエネルギーを補給するにはこれが一番効率がいいんだ、明日は相手が相手だから少しでも長く動ける力をつけないといけない、と返す鯉太郎。
鯉太郎はもう自分がまともにちゃんこを食べることもできないほど消耗していることを隠そうともしないようです。
そう、明日は王虎との取り組み。
いつも全力でぶつかる鯉太郎ですが、明日はいつも以上に力が入るのは間違いないでしょう!
クソムカつくヤローだけど、あいつとの取り組みは最高で、生きてる実感が強烈で、限界超えてぶち当たり会える。
言いたかねーけど、特別なんだ、王虎は。
……そんな鯉太郎を見て……椿はとうとう、直接訪ねてしまうのです。
もう体、限界なんじゃないの、と。
今までも王虎との取り組みはありましたが、その度に鯉太郎の体はボロボロになっていました。
こんな状態でまた王虎とぶつかり合えば、どうなってしまうことか……
文字通り、致命的なダメージを負ってしまうかもしれない……
何が何でも止めなければならない、そんな思いが先走ってしまったのでしょう、もし何かあったらどうするの、そこまですることじゃないでしょう、と口を滑らせてしまいました。
それは鯉太郎にとってもっとも言ってはいけない言葉。
鯉太郎は顔中に苛立ちを現しながら、黙れよ、お前、と怒りの声を漏らすのです。
お前はわかってない、軽く言うんじゃねえよ、と怒鳴りつける鯉太郎なのですが、マコトもおいそれとは引き下がりません。
私は生まれた時からこの部屋にいたから、力士の最期をたくさん見てきた。
髷を落とした後も人生は続くの、終わりじゃないの!
相撲が、相撲だけが全てじゃないのよ!
ですがその悲痛な叫び声を食うかのようなタイミングで、鯉太郎も叫び返すのです!
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全てだ!
俺の全てなんだよ……!!
鯉太郎が恐れていること。
それは、自分が死ぬことや、取り返しのつかない障害が残る事ではありません。
燃焼しきれず、くすぶり続けながら生きること。
死にながら、ただ生きる地獄のような人生を過ごすこと。
……そう、晩年の父、火竜のような……
俺は、アレが怖くてたまらねー。
もしこのまま土俵で終わっちまっても、
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俺はそれでいい……
そう呟く鯉太郎の顔には、あまりにも悲壮な覚悟のようなものが張り付いていたのでした……

ですが、鯉太郎の体が限界に近いことは親方となった仁王にもよくわかっています。
翌日のけいこ中、本人がなんといおうとも有無を言わさず休場させる、「どうすんだ?」の一言……それをとうとうかけようと立ち上がりました。
ですが声をかける直前のことでした。
ちょうどその瞬間に鯉太郎が踏んだ四股。
それは……神々しいとでも言うしかない、あまりにも美しいもので。
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踏み下ろした瞬間、あたりの空気を一変させるような、筆舌に尽くしがたい勢いを放ったのです。
それはまるで、「到達」したあの瞬間の、無敵の大横綱・泡影のそれのようで……!!



というわけで、運命の十二日目を前にして、鯉太郎に変化が起きる今巻。
今までもその兆候はありましたが……鯉太郎は限界を迎えるその直前に、神の領域に到達しようとしているのでしょうか。
もう少し時間があれば、鯉太郎は神たる横綱に引けを取らない領域に踏み込めたのかもしれません。
ですがもう鯉太郎にはじっくりと心技体を磨く時間は残されてはいないのです。
残された時間は四日間。
いや、鯉太郎の体はそれよりもずっと早く終わりを迎えてもおかしくはありません。
鯉太郎が到達するのが早いのか、壊れるのが早いのか、それとも誰かが鯉太郎を止めるのか……
ともすれば、到達したうえで壊れてしまうこともあるかもしれません。
どちらにしても、運命の時はすぐ近く。
まずは、最も鯉太郎と因縁深い力士、王虎との一番です。
それは鯉太郎の時計の針を確実に進めることになるでしょう。
迫る運命の決戦……
ますます目の離せない展開となっていくことは間違いありません!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!