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今回紹介いたしますのはこちら。
「君に愛されて痛かった」第1巻 知るかバカうどん先生 

新潮社さんのバンチコミックスより刊行です。


うどん先生は14年から成人向け漫画をメインに活動されている漫画家さんです。(「巨悪学園」のうどん先生とは別人です!)
バイオレンスで精神にくるような作風の作品を得意(?)にしているうどん先生ですが、初の全年齢向け作品となる本作でもその作風は変わりません!
もともとの連載誌であったアクションからそっち関係でいろいろあって連載誌を移籍することになってしまったほどの本作、そんなトラブルを乗り越えて無事単行本刊行となりました!
気になるその内容はと言いますと……?



お昼休みに、とある女子高生のグループがお昼を食べています。
その中の一人、かなえは、なんだか他のグループのメンバーとは少し感じが違っているようで。
みんなと楽しくやっているかのようにも見えるのですが……常に他のメンバーの顔色をうかがい、必死にその輪の中からはみ出さないように怯えているのです。
その為には……他のメンバーと一緒に、クラスの地味な女子に侮蔑の言葉を投げかけることも辞さないのです。
みんなに合わせなきゃ、みんなに馴染まなきゃ、みんなと同じにならなきゃ。
こうまで必死になるのには当然理由があります。
かなえは中学生時代、ひどいいじめに遭っていたのです。
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あの頃のような目に会うのははもう嫌だ。
その一心で、かなえはとにかくいじめられないようふるまっていたのですが……

それは、他校の男子グループとカラオケで遊んでいたときに起こってしまいました。
かなえの所属しているグループと、男子グループは楽しそうに歓談していまして、かなえはそれを上流階級の晩餐会のようだと思いながら、ジュース運びなんかで時間を潰していました。
私なんかがここにいていいのかな、とうつむいていますと、男子の一人がいまいち乗り切れていないかなえにあからさまに不満そうな顔を浮かべ、ギブ、とかなえのそばを離れてしまうのです。
かなえによっていいところを邪魔されてしまったかなえのグループのリーダー格、一花はかなえを一瞥して舌打ち。
その冷たい視線を受け、かなえは焦ってしまいます。
さらにジュースを取りに行かないかと言う言葉を一花に無視されてしまったことから、一気にトラウマが襲い掛かってきてしまうのです。
部屋を出て、ドリンクバーの前で泣きながらうずくまってしまうかなえ。
耐えられない、自分にふさわしい場所に行かなきゃ、ここじゃない、行かなきゃ、行かなきゃ……
ひたすら呟きながら携帯電話を弄り始めるかなえ。
と、そこに男子グループの一人、寛がやって来たではありませんか!
ジュース運びを手伝おうと思ってやって来たようですが、かなえがうずくまっている姿を見て慌てて救いの手を差し伸べる寛。
苦しそうな人を助けるのは普通だろう、とこともなげに言ってのける寛に、かなえはよくわからない、と答えるしかないのです。

一旦部屋に戻ったかなえですが、そろそろ帰るね、とそのまま家に変えることにしました。
他のメンバーはその事に対して何のリアクションもなく、見送ることすらしない様子。
そんな冷たい皆を見ていたたまれなくなったのか、寛は自主トレがあるから俺も帰る、と引き留める声も聞かずさっさとカラオケを後にするのでした。
寛はかなえに、一緒に帰っていいかと尋ねます。
が、かなえは寛が仲間とメッセージのやり取りをしているのを見て、謝りながら逃げるように立ち去ってしまいます。
知ってるよ、知ってたよ、私なんか居なくてもいいってことくらい。
けど、誰かに、誰でもいい、必要とされたい。
こんな私を必要としてくれる人、こんな私がいてもいい場所に……
行かなきゃ。

かなえは、駅前で中年の男性と会っていました。
「かなみ」です、と名乗って、その男性と向かったのは……ホテルでした。
学校生活の時とはまるで別人のように愛敬を振りまく人懐っこい印象で男性に接するかなえ……ですが、「なんでこんなことをしているのか」という質問にだけは、いい様のない圧力を感じさせる表情で、じゃあおじさんは何でこんなことしてるの?と質問で返し、それ以上の詮索を許さないのです。

見ず知らずの相手で、その場限りの関係だからこそ、優しくすれば優しくし返してくれる。
この時だけは、自分を必要としてくれる。
自分はまだ生きていていいんだ、また必要とされているんだ。
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よかったよかった、今日も生きれてよかった……

男性との行為が終わった後、対価を受け取るかなえ。
また会えるかな、と抱きしめてくる男性を抱き返し、いいよと答え……行為そのものよりも、この瞬間のほうが好きだ、と心が満たされるのを感じるかなえ。
そして二人は、手をつないで帰路につきました。
かなみちゃんはけっこう甘えたがりだよね、という男性に、知らない人だからいっぱい甘えれるんだと思うよ、と寂しげな顔で答えるかなえ。
男性もその表情を見て思うところがあったのか、おじさんとまた会ってね、と声をかけると……かなえは、にこりと笑って頷くのです。
が、そこに……何と言うことでしょうか。
寛がたまたま通りかかり、かなえを発見してしまったのです!!
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そして博は有無を言わさずかなえの手首をつかんで、かけだし……人気のない神社へと連れだします。
そこで寛は叶に尋ねるのです。何してたの、と。
……あんな行為をしていたのがばれてしまったら、もうかなえの日常は終わりです。
寛の質問に対して、かなえの答えは……!!



というわけで、早くも衝撃的な展開を迎える本作。
周りの目を気にするあまり、周囲に溶け込もうと仮面をかぶりながら様子をうかがい、耐えきれなくなったら自分を求めてくれる行きずりの男性と関係する。
そんな、既に壊れていると言ってもいいかなえが、この後さらに追い詰められていくことになります。
家庭の環境もよくはないかなえ、学校でも家でも逃げ場はありません。
しかも安らぎの場所としているその行為も歪そのものながら、その行為を知り合いに見つけられてしまった……
この見つけた男である寛とかなえ、そしてその二人に対してある感情を抱く一花を中心に物語は始まるのです。

かなえがグループで浮いていることを察知し、さらに苦しんでいる様子を見て心配する寛は、間違いなくいいやつでしょう。
人にやさしくされることが、あの行為の前後以外ほとんどないかなえの心に、寛のやさしさは大きな波紋を起こすものとなりそうです。
その波紋が、綱渡りのような精神状況のかなえをどう変えていくのか。
寛はかなえをどう思っているのか?
そして、そんな二人をみている一花は……?
物語が進んでいくにつれ、物語はさらに、どんどんとゆがみを増していきます!
戦慄するほどの、胸糞の悪くなるような展開が連続し、そして今巻の最後にはまさかすぎる展開が待っていて……!!
紹介した分にはありませんが、本作の幕開けとなる部分は衝撃的な事件がおこっています。
この驚愕の展開の先に待っているのがあの事件と言うことから考えても、ここまでの物語もここからの物語もとても万人に勧められる内容ではありません。
ありませんが……それでも、先の展開が気になってしまうことも間違いありません!!
一体これからかなえと寛と一花はどんな運命を迎えるのか?
おそらく後味が悪いなどと言う言葉では表現しきれないであろう物語となるであろう本作、その展開を受け入れられる方は一読されてみてはいかがでしょうか……!?



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!