「もっこり半兵衛」第2巻 徳弘正也先生
集英社さんのヤングジャンプコミックスより刊行です。
さて、月一両の給金で、江戸の夜の治安を守る夜回りをしている半兵衛。
江戸の町は平和だったともいわれておりますが、そうはいっても食うや食わずの平民たちや、プライドだけは残った侍などが困窮にあえぐと言う一面もありまして。
半兵衛はそんな人々が少しでも安心して暮らしていけるよう、今日も夜回りを続けるのです。
……時折現れるエロスな誘惑に、股間をもっこりとさせたりしながらも!!
ある夜のこと。
いつものように編べえが夜回りをしておりますと、何やら争いの音が聞こえてきます。
慌ててそちらの方へと走っていきますと……
何やら数名の男が一人の侍を取り囲んでいるようです。
それを見て、半兵衛はニヤリ。
やってるな、自身番。
そう呟くのでした。
三人で取り囲んで入るものの、相手は真剣を帯びた侍。
そして腕前もそこそこ立つようで、三人の自身番は攻めあぐねているようです。
ですがそんな時、その中の一人である伊助が俺に任せろと前に出てきました。
侍の一振りを身をかがめてかわし、その隙に一気に突進!!
首筋にいいのを一撃もらった侍は、たまらずノックアウト。
その鮮やかな一撃を見た半兵衛は、伊助にまた腕を上げたな、と声をかけました。
伊助はと言いますと、満面の笑顔で半兵衛を「先生」と呼び、駆け寄っていきます!!
この前借りた枕絵、良かったです!
……と、半ばお約束の下ネタはおいておきまして。
伊助が持っているのは、南蛮千鳥鉄と呼ばれる、鎖鎌の仲間のような武器。
刀を町人が持てばそれだけで咎められますが、この武器ならばおとがめなし。
先ほどの侍も酒に酔って二人の町人を切りつけたのですが、伊助の活躍もあって死者は出ずに解決に導くことができたのです。
侍も酔いがさめ、藩に知れたら大変なことになるから金で示談にしてくれ、と土下座で謝罪。
自身番の面々もそれを受け入れ、一件落着となるのです。
夜回りをする半兵衛や、同心だけではどうしても治安は守り切れません。
そこで町人自身が治安を守るため奮闘するのがこの自身番です。
腕を磨き、悪漢を倒すのも良いのですが、伊助も普段は普通の呉服屋。
半兵衛は自身番もいいけど本業も励めよ、とアドバイスをするのですが……伊助は、何をいまさら、自分を強くしてくれたのは先生ですよ、と聞く耳を持たないのでした。
二人の出会いは6年前にさかのぼります。
たまたま半兵衛が悪人を成敗した場面を目撃した伊助は、その強さにいたく感激。
命懸けで街の治安を守っているのは町人なんだ、だから強くなりたい!と半兵衛に弟子入りを志願したのです。
半兵衛も、一日こってり絞れば諦めるだろう、と指南役を引き受けるのですが……この伊助、意外にも天賦の才を持ち合わせていました。
半兵衛をして、1000人に一人の逸材だと言う伊助はみるみると力をつけていき……夜回りの合間を見て続けられたその修行の日々は結局3年にも及びました。
残念ながら伊助は町人ですから、その実力があったからと言って成り上がることもできません。
ですがその目を見張る上達ぶりを見て、半兵衛は免許皆伝の皆伝書を伊助に与えることにしたのです。
……娘のさおりが書いた、あんまりありがたみの感じられないものでしたが……月に一度のお給金と、夜回り用のろうそくを支給する日のこと。
給金を持ってきた役人が、厄介な事件の存在を明かしました。
夜回りの区分ではないその事件……何でも、近くの藩の剣術指南役が、眉間を砕かれ、その腰に差していた刀で逆に袈裟懸けに斬られて殺された、という。
剣術指南役は剣の実力あってこその侍ですから、襲われることもそう珍しくはありませんし、殺される程度の腕前だったほうが悪い……半兵衛はそう自分の意思をはっきり表すのですが……
その後も、剣術指南役が襲われる事件は続きます。
その犯人は……伊助でした。
南蛮千鳥鉄で敵の刀を絡めとって奪い取り、切り殺す。
あるいは、相手の刀をかいくぐって素早く後ろに回り、鎖で首を締め、殺す。
伊助はさらにその犠牲者を増やそうとしていたのですが……また一人その手にかけようとしたその瞬間、半兵衛が姿を現します。
南蛮千鳥鉄の技も熟知している半兵衛、最初の事件を聞いた時からすでに伊助に当たりをつけていたようです。
侍相手の腕試しなどもうやめておけ、そう半兵衛は言うものの……伊助の怒りは予想以上に大きなものでした。
腕試しにもならねえよ、どいつもこいつも見掛け倒しのクズだ!
剣術も弱い、育児もない、えばってるだけのそんな侍だらけさ!!
昔俺は侍は町人など遠く及ばぬくらい強いと信じていた。
だけど自身番の警備で何人もの侍と対峙して目が覚めたよ。
町人や百姓の稼いだ金をぶんどって遊んで暮らすのは強いからじゃねーのか!
そう激昂する伊助は、半兵衛も江戸の用心棒として俺を切りに来たのか、と構えます。
ですが半兵衛、正々堂々と名乗りを上げて勝負して買ったのだから見事なものだ、と咎めるどころか称賛するのです。
しかしすぐにこうも言い含めます。
だがもう真剣勝負はやめておけ。
侍の中には鬼もいる、と。
思いの丈をぶちまけた自分をなおも受け入れ、認めたうえで心配してくれた半兵衛。
感極まったのか、伊助はそのまま泣いて立ち去っていきました。
あれで改心し、あんなことはやめてほしい。
あいつは自身番の星なんだ。
半兵衛はうつむきながら、夜鷹や友人にそう漏らすことしかできませんでした。
友人たちは、伊助は半兵衛を尊敬しているからきっとわかってくれる、と言ってはくれたのですが……
欝々とした気分を胸に抱えながらも、夜回りは欠かさない半兵衛。
街を歩いていますと、血塗れの町人が半兵衛に駆け寄ってくるではありませんか!!
助けてくれ、自身番の三人がやられた!
とてつもなく強い、伊助がかろうじて防いでいる!!
町人はそれだけ言うと、地面に倒れ伏してしまい……!!
地面に倒れ、もう動かない三人の自身番。
そしてその中央には、不気味に微笑む侍が刀を携えて立っています。
対峙しているのは伊助ただ一人。
ですがその額やわき腹からは血が流れ、相当な深手を負ってしまっているようです。
伊助は、ついに知るのです。
それでも逃げるわけにはいきません。
ここで伊助が食い止めなければ、この鬼は何人の罪のない人々をその手にかけるかわからないのですから……!!
とはいえ、もう伊助の体力も限界。
止めとばかりに鬼と化した侍が跳びかかった……その時!!
半兵衛が現れ、鬼を殴りつけたのです!!
たまらず飛びすさる鬼ですが、すぐに刀を構えなおし、切りかかってきました!!
あの伊助をして、食い止めるのが精いっぱいで一方的にやられてしまったこの鬼相手に、半兵衛は……
鬼の横薙ぎの一閃を紙一重でかわし、相手の脇差を抜き取り、
一撃のもとに首を落としてしまったではないですか!!
圧倒的すぎる半兵衛の力。
それを見た伊助は、流石俺の先生だ、とてつもなくつええや、とつぶやき……そして、倒れるのでした。
この事件ででた死体は5つ。
鬼自身と、伊助を含めた4人の自身番でした。
おそらく伊助が防いでいなければ、最初に助けを求めて何とか命は助かった男以外の犠牲者も数多く出たことでしょう。
やり遂げたと言ってもいい伊助の往生ですが……半兵衛の心にはやりきれない思いが襲い掛かるのです。
そしてそれは、地面に落ちていたあるものを見て一層深まってしまうのです。
伊助がいつも肌身離さずつけていたという、お守り。
そのお守りの中には、小さくたたまれた紙が入っていました。
そして、その紙が何かと言えば……
というわけで、半兵衛の夜回りが描かれる今巻。
今巻でも江戸の町の暖かさと厳しさが生々しく、かつコミカルでエロスに描かれていきます。
決して楽とは言えない町の人々の暮らしを描いていく以上、どうしてもお話は陰鬱になりがち。
実際今までの時代劇漫画ではあまり描かれていない江戸の実情をきっちりと描かれていたり、漫画ならばある程度幸せで終わるであろうキャラクターの描写を無情な結末まで描いていくなど、シビアかつリアルな描写が満載です。
ですがそこを徳弘先生らしい、コミカルさ、お下品さ、そしてそれに負けない人情溢れる作風で彩り、つらさや寂しさだけでは終わらせない読後感良い仕上がりになっているわけです!!
その内容はもう徳弘先生作品ですからお墨付きと言っていいでしょう。
時代漫画ならではのとっつき悪さはなく(徳弘先生作品ならではの癖はありますけど!)、一話完結型の読みやすく、そして間違いなく面白い内容になっていますよ!!
ファンの方ならば迷いなく、そうでない方でも一読の価値ありです!!
本作はメインの連載誌が携帯向け漫画アプリのようでして、現在もそっちの方で連載中。
おそらく単行本の発行はこの第2巻の売上次第のところもありそうで、あとがきを読む限り徳弘先生は第3巻の発行をあんまり期待していなさそうな感じ……
ファンとしてはぜひとも第3巻を発行していただきたいところですので……ファンの皆さまはもちろん、ちょっと興味の湧いた皆様、第1巻と合わせていかがでしょうか!?
今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
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