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今回紹介いたしますのはこちら。

「フェンリル姉さんと僕」第1巻 阿崎桃子先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。



阿崎先生は17年にチャンピオンタップにて「ナナ+イチ」(単行本刊行時に「幼馴染はハチミツが好き」に改題)で連載デビューした漫画さんです。
その後18年より別冊チャンピオンで本作の連載を開始。
はるか昔に某所で「女の子と異形もの」で受賞&デビューをしたそうですが、本作でとうとう紙の単行本初刊行となるようで。
気になるその内容はと言いますと……?


2年3組の灰島陽介。
彼は、ちょっとした有名人です。
「勝負するのが嫌い」と言い張り、体育で試合をするとなると、ずっと隅で棒立ち。
試合が終わった後整列して握手する際も、自分は何もしていないからと握手もしないと言う徹底ぶり。
そんな感じですから、学校ではいつも一人で携帯電話を弄っている……
陽介本人はそんな日常をどう思っているのかと言いますと……もちろん、楽しいと思っているはずもなく。
一人っ子だった彼は昔から人と張り合うことがなく、一人ならば誰とも争わなくていい、と一人で過ごす彼、誰かと競い争うことが日常になっているこの世の中を「つまらない世界」と談じ、いっそ滅んでしまえばいいのにとまで思っていました。
そんな彼がそれでも学校に来るのはなぜかと言いますと、それはひとえに三年生の先輩、北見冬花の存在でした。
成績優秀で清楚な美人である彼女は、学校中にファンの多い人物です。
陽介も御多分に盛れず彼女のファンでして、ひそかに学校での彼女の様子をウォッチしたり、こっそりと写真を撮ったりして楽しんでいたのです。

ところで、最近巷では不審者の目撃例が相次いでいるそうで、集団での下校を推奨しているような状況です。
ですが陽介はもちろんひとりぼっちで下校。
おまけに頭の中は冬花のことで一派、上の空もいいところです。
と、そんな時でした。
巨大なトレンチコートの「何か」が、子供を襲っている場面に遭遇してしまったのは。
これがその不審者なのか?
呆然と立ち尽くす陽介に、不審者は語りかけてきます。
汝、神に仇なすものか?
ぎょろりと目を剥き、鋭い牙が立ち並ぶ口を大きく開けて迫る不審者。
慌てて逃げ出す陽介ですが、不審者はその体からは想像できない身のこなしで陽介を追いかけ、決して逃がしてはくれません。
答えよ、答えよと繰り返す不審者……!!
恐怖におびえる陽介は何もできないのですが……
その背後で倒れていた子供のランドセルの中から、異様に堂の長い蛇が這いだしてきたではありませんか!!
そしてその蛇は不審者に向かって跳びかかり、口から何かを吐きかけたのです!!
その何かを浴びた顔は焼けただれ、不審者は苦しみもだえます。
そしてヘビは陽介をにらんだかと思うと、陽介の祓めがけて突っ込んできて……!!

陽介が目を覚ますと、不審者もヘビもその姿を消していました。
あの子供がまだ倒れていますから、夢や幻ではなさそうです。
幸い子供は軽傷、もやもやは残りますがこれでとりあえず難は逃れたと言っていいでしょう。
ですが陽介の方は、あの事件以来どうにも体調がすぐれません。
翌日は学校に入ったものの、体育を見学しながら、早退しようかなどと思いを巡らせていますと……
運悪く顔面にボールが直撃!!
鼻血が出てしまいまして、陽介はそそくさと保健室に向かうのです。

ところがどうしたことでしょう、保健室に来ると鼻血は完全に止まっており、ぶつけたような形跡すらありません。
保健室の先生に疑われてしまう陽介なのですが……とりあえずこの時間は休んでいると言い、とは言ってくれました。
保健室の先生が所用で席を外したのを見計らって、陽介は携帯を取り出し……冬花先輩の画像を見て癒されることにします。
と、その時のことです。
いつの間にか、背後に冬花先輩がいて、消え遺体をのぞき込んでくるではありませんか!
そんな写真いつとったっけ?
貧血で休んでて、戻るとこだったの、キュウに話しかけてごめんなさい。
それ、盗撮?
図星をつくその発言に戸惑いうろたえる陽介ですが……冬花先輩は陽介の名前を聞くと、デコピンを一発!
そして、こっそり取られるのは恥ずかしいから、次はちゃんと言ってからとってね、と笑って許してくれたのでした!
その先輩のやさしさと笑顔は、今まで陽介が抱いていた冬花先輩のイメージを凌駕するステキさで。
陽介は思い切って、この場で思いを伝えてしまおうと口を開いたのですが……
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そこにあの不審者が現れ、冬花先輩の体をずたずたに引き裂いてしまったのです!!
汝、神に仇なす者か?
答えぬならば、裁かれよ。
そう言って今度は……陽介の体を切り裂いたのです!!
……が、どうしたことでしょうか。
陽介の体を切り裂いた不審者の手のほうが、ドロドロに溶け始めているではありませんか!!
……陽介の体は確かに切り裂かれ、ぼたぼたと血を流しています。
ですがその背後には、あの奇妙な蛇が姿を現していて……!?
陽介の体に走る痛み。
苦しい、熱い、逃げないと。
そんな思いと同時に、こんな思いもよぎります。
でも、いつも逃げてばかりいた。
ただ怖かった。
僕は……僕は……
すぐそばには、倒れた冬花先輩が横たわっています。
今彼女を守れるのは、陽介を置いてほかにはいないでしょう。
先輩を、置いて、逃げるくらいなら……
死んだほうがましだ!!
攻撃した方がダメージを受け、背後に得体のしれないヘビを背負う。
陽介が只者ではないと言うことは不審者もわかったようですが、それがなおさら彼の言う「神に背くもの」であると言う確信を強めたようで。
裁かれよ!と陽介にとどめの一撃を放とうとしたのですが……
その攻撃が届くことはありませんでした。
木偶が何を裁くって?
不審者の体は、真っ黒な炎に包まれます。
その炎を放ち、そして不審者を木偶と吐き捨てた人物は……致命的にも見える傷を負ってしまっていた、冬花先輩ではありませんか!!
やっぱりこの姿じゃ鼻が利かないな、お前ごとき雑魚の奇襲を受けるなんて。
……不審者の探し求めていた、神に仇なす者。
それは……冬花先輩のことだったのです!!
冬花先輩は、木偶の攻撃を難なく受け止めて見せました。
いつの間にか、その体に追っていた惨たらしい傷もあと一つなく治ってしまっています。
そして彼女は言いました。
単なる打撃で私を殺せると思ったの?
戦うのは神々の黄昏(ラグナロク)以来なんだ、すこしは楽しませてよ。
圧倒的な力の差を感じ取った不審者は、踵を返して逃げ出し、「主」に報告をしようとします。
が、彼女はそれを許しません。
すでに最初に浴びせていた黒い炎。
それを受けたものは死の運命を植え付けられ、そこから逃れる術はない……!
恐ろしきその力を自らの体で浴び、不審者はようやく冬花先輩の正体に気が付くのです。
不審者が崇める主神を食い殺し、世界を破滅へと導いた最悪の災厄。
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終焉の魔獣、フェンリル!!
今世は人間の世界で平穏に過ごしてみた、という彼女ですが……降りかかる火の粉は払わなければなりますまい。
冬花先輩はその体を巨大な狼へと変え、実にあっさりと不審者を消し去ってしまうのでした。
そして、そのまま冬花先輩は陽介を殺そうとします。
これでも身を隠しているところだから、目撃者は消しておきたい。
さっきの死をも恐れず立ち向かう勇気、世が世ならヴァル腹へ招かれる先生になってらだろうに、残念だね。
……この二日間で何度も死ぬかもしれない恐怖を味わってきた陽介。
ですが今度ばかりは悪運も尽きたと言うところでしょうか。
やって来る死を覚悟する陽介なのですが……その時、陽介の血液が冬花先輩の指にぽたりと落ちます。
すると、その指は十と音を立てて焼けはじめ……
自分の指を蝕む、陽介後に混じった「毒」。
それに気が付いた冬花先輩は、八としてい宇のです。
まさかこれは、ラグナロクで多くの神や人を死に至らしめた、世界蛇ヨルムンガンドの猛毒……!!
ヨルムンガンド……あなたなの?
私の……愛しい弟!!
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ああヨルムンガンド、今度こそ姉さんと一緒に、世界を滅ぼそう!!
そう言って、冬花先輩はうれし涙を流しながら、陽介を抱きしめたのでした!!



というわけで、幕を開ける「姉弟」の物語。
どうやらあの時陽介の中に入り込んできた蛇こそがヨルムンガンドのようで、何のつもりかヨルムンガンドは陽介と一体化してしまったようなのです。
そして、フェンリルの根性の姿である冬花先輩は、陽介をヨルムンガンド本人であると勘違い。
溺愛していた弟をその胸に抱き、再び仲良く暮らし、ゆくゆくは一緒に世界を滅ぼそうとしてしまうのです!!
陽介としては誤解を解くべきなのかと悩むところなのですが、相手はあの憧れの冬花先輩。
弟として、とはいえども自分を愛して抱きしめてくれるというこのシチュエーションは嬉しいものなのです。
……が、もう一つ明かせない理由もあるのです。
なにせ先輩は、陽介を弟本人であると認識しているわけで。
それが、弟が中にいるだけで、陽介は単なる人間である、と知れば……おそらく陽介の命はないでしょう。
幸せの絶頂であり、不幸の絶頂でもある。
陽介はこの状況でどう過ごしていくのでしょうか!?
死と隣り合わせの幸せな生活、そしてこの最初の戦いを皮切りとして、続々と襲い掛かってくることになる神の使い達。
まるで年頃の人間の乙女のような可愛らしい姿を見せたかと思えば、すさまじい力を発揮するという二面性を持つ冬花先輩の魅力、圧巻の戦闘シーン、少しずつ見えてくるフェンリルとしての過去……
そんな要素がちりばめられた、可愛らしくも恐ろしい冬花先輩とのいろいろな意味で胸が高鳴る日常が描かれていくのです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!