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今回紹介いたしますのはこちら。

「岸辺露伴は動かない」第2巻 荒木飛呂彦先生 

集英社さんのジャンプコミックスより刊行です。


さて、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ屈指の人気キャラである岸辺露伴を主人公、あるいは狂言回しとして、巻き起こってくる奇妙な出来事を描いていく本作。
約5年ぶりとなる第2巻は、全て違う雑誌で発表された4編を収録しています。
そんな4編の中で今回は別冊マーガレットと言うまさかの(?)少女漫画誌で発表されたエピソード、「D・N・A」を紹介させていただきたいと思います。


頭を掻いて、ぺろりと舌を出す男。
それは、失敗をごまかそうとしたときに彼がするしぐさです。
彼は缶ジュースを取り出し、プルタブをチョンとつついた後、開封。
助手席に腰かけていた妻に差し出しました。
大丈夫だよ、心配しないで。
怖がらないで、君は何も怖がらなくていいんだ、君は大丈夫だから。
きっといいヤツ、オレはきっといいヤツ。
……司法試験さあ、合格してから結婚式をしようとしてたけど、やっておくべきだったな。
試験なんてきっと、そんなことで何も変わらなかった。
そうしとくべきだった。
……男は、額から屋根に血をしたたらせています。
男は……事故を起こし、乗っていた車はひっくり返ってしまっていました。
妻は男の言う通り、大丈夫なようです。
ですが、男の方はと言いますと……

岸辺露伴は、知人である山岸由花子に呼び出され、ある人物に引き合わされていました。
露伴は最近はまっているらしい野球観戦の時間が迫っており、いつも以上にそっけない態度なのですが……
あの気難しい由花子が、あの気難しい露伴に引き合わせることを選んだその人物の抱えている悩みは相当なもの。
時間もないようなので、早いところ本題に入ることになりました。
引き合わされた人物の名は、片平真依。
彼女は今年三歳になる娘、真央を連れてここにやって来ています。
僕でお役に立てるならとっても嬉しいでーす、と目も合わせず漏らす、完全に気のない露伴相手に、彼女は話し始めました。
彼女の抱える、奇妙な悩みを。

15年前、新婚だった彼女は、夫の運転する自動車で事故に遭ってしまいました。
その事故で夫はなくなってしまい……真依はそれ以来、夫以外の男性を愛することができず、ずっと一人で過ごしてきています。
両親から再婚をすべきだという強い勧めもあり、お見合いもしてみたものの、結局彼女の気持ちは動かないのです。
彼女自身の気持ちももちろん、両親の気持ちも考えたのでしょう。
年齢的なものも考え、彼女は精子バンクから提供を受けて子供を作ることにします。
生まれたのが真央。
こう言った身の上でも子供が作れるこのシステムには感謝しているし、真央が生まれたことも本当に幸せなことだった、と彼女は言うのですが……
問題はその真央のことなのです。
なんと真央、「さかさまの言葉」しかしゃべらない、と言うのです。
生まれてから一度たりとも、普通の日本語をしゃべったことがない、と!
子供がふざけてしばらくこう言ったことをする、と言うのならばわかりますが、生まれて以来ずっととなれば流石に異常と言うほかないでしょう。
ですが真央の異常な部分はそれだけにはとどまらないのです!!
歩くとき絶対に足音を立てない。
立っている足元がじっとりと濡れる。
おしりにしっぽが生えてきた……
聞けば聞くほど、確かに奇妙。
そしてその話を裏付けるかのように、真央は音もなく露伴の背後にやって来ていました!!
その足跡をたどるように、地面には水たまりが。
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そして露伴を見ながら彼女が言った言葉は、「はちにんこ」……
真依は真央を抱き寄せながら、さらに続けます。
まつ毛は瞼になくした側だけにたくさん生えている。
もみあげが顎まである。
そして、他人がしっぽにさわると保護色のように肌の色が変わる……!!

野球の試合が始まりました。
露伴は手早く終わらせようと、ヘブンズドアーを使用。
彼女の「内容」を検めました。
そして、二人に尋ねるのです。
自分にどうしてほしいのか、と。
由花子はすぐ、治してあげて、普通にしてあげて、と答えるのですが……それに対しテロ犯はきっぱりと告げました。
これは真央の「心の形」、見えるスタンド能力と言っていい。
真実は「治すな」、そう言うことだ。
それに「治す」ってなんだ?
「普通」って何だ、その基準は?
保護色になって5センチのしっぽがあると言うだけ、誰も困っていない、これが「真央ちゃん」だ、問題はどこにも見当たらない。
そう言って立ち去ろうとする露伴に、このままでは将来いじめられてしまう、とすがろうとする真依。
ですがそれでも露伴は言うのです。
そうかもしれない、現実はいじめられる……だが断る。
精子バンクで子供を産んだのはあなたが選択した道だ、それに従うべきだ、ボクは立ち入らない。
それに見ろよ、友達と楽しそうに遊んでるみたいだがな。
そばにあった遊具で、保育園の友達と遊んでいる真央を横目に見ながら、露伴は今度こそ立ち去ってしまいました。
うなだれる真依を残して……
ですが実は、ここで由花子がやってくれていました。
先ほどヘブンズドアーで真央を本にしていた時、その内容をばっちり盗み見していたのです。
見た部分は、無意識レベルで遺伝子に刻み込まれた記憶。
真央の……父親の情報を!!

提供時の年齢は30歳。
山形在住。
額の右側に傷痕がある。
たったそれだけの情報ですが、それ以来その情報は舞の頭の片隅にこびりついたままになっていました。
真央はいったい何者なのか、どこから来たのか?
それを知るために、彼に会いたい。
彼はどんな人物なのか……
そんな時、S市の駅で気になる人物を見つけてしまいます。
異常に伸びた、下のまつげ。
顎まで伸びたもみあげ。
そしてその人物が降りてきたのは、山形とS市を結ぶS山線。
その人物は、彼女が一瞬目を離したすきに、彼女のすぐ後ろに会った自動販売機でジュースを買っていました。
そして、
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その額の右側には……傷痕!!
まさか、そんな。
何百人、何千人、何万人いるかもわからない候補者の中から、見つけ出すことなど絶対に無理だと思っていた男が、ここに、いる……!?
驚き戸惑う真依に男性は……視線を感じていたのでしょう、自販機の順番待ちと思い、自販機どうぞ、と言い残して歩いていきました。
そして……何と言うことでしょう、彼の歩いた後には、水たまりが……!!

こうなれば彼を追いかけずにはいられません。
そっと彼についていく真依ですが……彼が向かっていく方向は、真依が良く知る場所でした。
それは、先日露伴と会ったあの場所。
そこでなんと男は、遊具で遊んでいた真央をおもむろに抱え上げ、そのままタクシーに乗り込もうとするではありませんか!!
何が何だかわかりません。
ですが、それだけは、それだけは見逃すわけにはいきません!!
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何する気ッ!?
どこへ連れて行く気!?
娘に触るなッ!!
真依は男につかみかかり、そして……!!!




と言うわけで、奇妙な娘を持った母が、奇妙な男に出会う事件を描くエピソードを収録した今巻。
この偶然と言うにはあまりにも多すぎる共通点、男が真央の父親に当たる人物であることはほとんど間違いないと言っていいでしょう。
ですが、なぜ今になって突然その姿を現し、そして真央を攫うようなことをしたのか!?
その驚愕の展開と、さらに驚かされることとなる真相と結末はまさに先生の真骨頂!!
荒木先生をして、「別マ」と言う舞台にあったストーリーになっていると言うそのドラマティックな結末は必見と言うほかありませんよ!!

その他のお話も名作ぞろい。
露伴は完全におまけでしかない「望月家のお月見」は、毎年必ず中秋の名月を家族そろって自宅でお月見して過ごす、望月家に課せられた奇妙な運命を描く物語。
こちらは露伴が完全に主役になっている「月曜日 天気-雨」では、現代ならではの問題の陰にある驚くべき存在に追い詰められる恐怖と驚愕が堪能できます。
そしてトリを飾る「ザ・ラン」では、荒木先生が2部までで描き切ったはずの「筋肉キャラ」を復活させてまったお話。
どれを読んでも、荒木先生でなくては描けないであろう内容になっておりまして、新鮮な驚きと恐怖、そして感動を味わえるのです!!

さらに今巻はオリジナルアニメ付きの限定版も発売!!
第1巻に収録された「六壁坂」を収録しております!!
地上波などでは難しそうな、どくどく流れる赤い液体もばっちり描かれているこちらも必見ですよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!