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今回紹介いたしますのはこちら。

「魔法はつづく」 オガツカヅオ先生 

リイド社さんのリイドカフェコミックスより刊行です。


オガツ先生は96年ごろデビューし、その後99年に小学館の漫画賞を受賞したり、読み切りを様々な雑誌で発表したりと活躍されている漫画家さんです。
ホラー系の作品を得意とされておりまして、現在はNemuki+にて「ことなかれ」の作画で連載を持っておられます。
オガツ先生は画力も高くお話の評価も高いものの、読み切りが多かったためか、あるいはホラー系実力派作家の宿命か、単行本刊行の機会に恵まれておりませんでしたが、マイナーな凄い漫画を発掘する劇画狼さんの尽力もあってついにこの短編集が刊行されました!

そんな注目必至の本作、9編の作品が収録されています。
どの作品も驚きや恐怖、感動と様々な読み応えがたっぷりと詰め込まれた作品ばかりなのですが、今回はそんな中で「こくりまくり」を紹介させていただきたいと思います!


名倉君好きなの、お付き合いして頂戴。
学年で一番行けてる女史、木目米さんから告白された名倉君。
ですが名倉くん、その告白をあっさり断ってしまいました。
うっすら予知能力があるらしい名倉くん、このシチュエーションもある程度想定済み。
事前に準備していたのでしょう、タイプじゃない、と断ったのですが……木目米さん、重い㏍莉名倉くんにボディブローをかましながら、じゃあどんなタイプが好きなのかしら、と澄まして質問してきます。
名倉くんが答えた好みのタイプと言うのは……
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「霊の見える子」だそうです。

その告白から7年後、高校生になった木目米さんは再び名倉くんの前に現れます。
ですがその姿は、キラキラしていた当時からは想像もつかない、陰気なオーラの漂う怪しげな様相を呈しております。
木目米さんは名倉くんにいいます。
霊が見えるようになったぜ、約束通りお付き合いだな。
そう迫ってくる木目米さんに、何のことやらととぼける名倉くん。
木目米さんは、ふざけんなと今までの血のにじむような努力を明かし、それができたのも愛の力、さあおつきあえ!と迫ってきます。
こうまで真っ向から迫られては、流石の名倉くんもとぼけきれません。
そこで、名倉くんはこう提案するのです。
まずは本当に霊が見えるのか確かめないと、と。

名倉くんは、木目米さんととある霊スポットに向かいました。
望むところだとついていく木目米さんに、名倉くんはそのスポットの説明をします。
去年の「ここだけはいったらアカン」ランキング20位。
ひどいことが会った家だから、霊がいないわけない、絶対に。
シリアスな感じでそう告げる名倉くんなのですが、木目米さんは余裕でポテトチップス軟化をむしゃむしゃやっておられます。
食べるかと言う誘いを断り、名倉くんはこの家にあった惨劇を語りました。
無理心中だ。
鬱になった父親が眠っている子供と母親を刺し、自分は灯油をかぶって自殺したんだ。
現場となって部屋は黒焦げで窓も割れ当時の惨劇を物語っているかのよう。
とその時、木目米さんは、何やらうめき始めました。
慌てて駆け寄る名倉くんですが……木目米さん、若い男女が部屋に二人きり、と興奮して声が出ただけのようです。
鼻血も出ちゃってまして、名倉君はハンカチを差し出すのですが、木目米さん、女の子は出血になれているの、ともじもじしながらそれをやんわりとお断りするのです。
で、肝心の霊はどうでしょうか。
木目米さんは、窓際でうずくまったと思うと、ハアハアと息を荒げて……
見えん!まったく!
てかいねーんだよ霊なんて!!
あんたに、名倉に好かれたくて、でもどんなに修行しようが、研究しようが見えねーんだよ。
そう言って、うめき声を上げるのです。
と、その時でした。
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名倉くんが木目米さんを後ろからそっと抱いて、もういいよ、と囁いたのは。
実は気になってたんだ、木目米さんのこと、あれからずっと。
木目米さんがどんどん変になってって、周りから孤立していくのを何とかしてやりたかったんだけど、どうしていいかわからなくて。
でも、これからは力になる。
良かったら僕たち……
付き合う?
……何よりも求めていたはずの、その言葉。
ですが……無理心中の家から外に出た木目米さんは、後ろ……現場となった部屋を振り返って、こう呟いたのです。
いまさらおせーよ、もう無理なんだよ。
だって名倉、あんたはもう
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死んでるんだよ。
無理心中。
その被害者となった「子供」と言うのが……名倉くんだったのです。
自分の部屋から、じっと木目米さんを見つめ続ける名倉くん。
何見てんだよ、自分が死んでることぐらい早く気づけよ。
涙をぬぐいながらそうつぶやく木目米さん。
あの子供のころの告白の、その後の会話が脳裏によぎります。
俺の好きなタイプは、霊の見える子だ。
実はうっすらと予知能力があるんだけど、俺、なんか長生きできない気がするんだよね。
だから、死んだあと少しだけ気を遣ってもらえる子がいいかなって。
そうほほ笑んだ、彼の顔は、今でも昨日のことのように思い出されます。
そして……再びその決意を新たにするのです。
名倉はまだ死んでいることに気付いていない。
もうこうなったら

彼が成仏するまで、何度でも告ってやる!!



と言うわけで、コミカルな恋愛ものと思わせておいて、話の中で様々な伏線を張り、どんでん返しとともに一気に回収、そして切なくも胸を打つラストを迎えると言う珠玉の一片を収録した本作。
非情に完成度の高いこのエピソードももちろんお勧めなのですが、他の作品も負けず劣らず名作ぞろい!!
ホラーとは少し違う感じがあるものの、悲しい病気に悩まされる夫婦の戦いとその結末を描く「はじめましてロビンソン」。
奇妙な猫とおばあちゃんのリンクを中心にした「猫のような」は、恐ろしい話ではないながらそのクライマックスでぞくりとするような描写が目を惹きます。
個人的には紹介した作品と並んでお気に入りの「よふさぎさま」は、疾走感としっとり感が共存する切ない系の話と思いきや、こちらも思いもよらない急展開が待っている驚愕の作品。
その他にも数々の作品が収録されていまして、その全てがどれも違った味わいの傑作ばかりなのです!!
極めつけはこの単行本のために描き下ろされた7Pの作品、「こくりまくれ」。
そのタイトルからお分かりになるかと思われますが、こちらの作品は紹介させていただいた「こくりまくり」の関連作品になっています。
この描き下ろしを読むと、この「こくりまくり」の味わいが倍増すること間違いなし!!
是非ともこの体験は、皆様自身の目でしていただきたいと思います!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!