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今回紹介いたしますのはこちら。

「開田さんの怪談」 木々津克久先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。



さて、「兄妹」以来久々の木々津先生の単行本となる本作。
「兄妹」終了後はチャンピオン系列の雑誌でいくつか読み切りを発表していた木々津先生ですが、本作は当初読み切りとして発表され、その後単行本一冊分連載。
好評を博したようで、連載終了後「フランケンふらん」とのコラボ読み切りが発表されたり、再び数話掲載されるなど、人気作となりました。

そんな本作、そのタイトル通り開田さんと言う主人公が怪談を語る作品となっています。
ホラー漫画と言えば、その怪談を漫画化するのが普通なのですが、あくまで本作は怪談を語る漫画。
気になるその内容はと言いますと……?


長い黒髪に眼鏡が印象的な少女、開田さん。
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美しく理知的な彼女は、隣の席の生瀬くんの目を惹きつけて離しません。
授業そっちのけで開田さんを眺めてうっとりとする生瀬くんですが……そんな生瀬くんに、木田さんはあるものの存在を指さして教えます。
外は雨。
教室の窓には、カタツムリが貼りついていました。
開田さんが指示したのは、それです。
生瀬くんがかたつむりに気が付きますと、開田さんは一つ大きなため息をついた後、かたつむりにはむかしちょっとありまして、と一言。
……いつものパターンです。
生瀬くんは身構えました。
来た。
また怖い話をして、怖がらせる気だ!!

怖い思いをしないためには、ここで開田さんの話をシャットアウトするのが一番です。
ですが、そううまくはいかないのです。
何故なら生瀬くん、開田さんが大好き。
開田さんが思わせぶりに頬に涙を伝わせると、もう放っておくことなどできないのです!!
大丈夫?と尋ねると、開田さんはさらに生瀬くんの気持ちをがっちり捕えるこんな言葉で返してくるのです。
好きな人のことを思い出して、と。

開田さんに好きな人がいた!?
そんなことを聞かされては、もう生瀬くんの興味は止まりません。
生瀬くんがあれこれ考えていながらも、もう自分の声から耳を離せないことを察知した開田さんは、お話を始めます。
もしかしたら開田さんの初恋だったかもしれない、15歳くらい年上のおじさん、入江高志と言う冒険家……
お耳を拝借。
そう言って、開田さんは話し始めるのです。
とっておきの怪談を……

入江は冒険家で、バイクで法定速度順守最速日本一周だとか、富士山24時間内最多登頂といった、無茶なチャレンジばかりしていました。
ですがその時の挑戦、アマゾンを徒歩で縦断と言う挑戦は今までとはわけが違ったようです。
遭難してしまい、どこを見まわしても見えるのは木や草のジャングルばかり。
食糧も尽きてもう終わりかと思われたその時でした。
入江が、20センチはあろうかと言う巨大なかたつむりを発見したのは!!
ジャングルで入江のような武器を持たない人間が捕まえられる獲物と言うのはほとんど存在しません。
そんなところにこのかたつむり。
たやすく捕まえられるうえ、巨大なため肉も多い。
早速入江は火を起こし、焼いて食べ、飢えをしのぎました。
そして彼はバッグなどにもかたつむりを詰め込み、食料をとりあえず確保できたことで落ち着き……やがて、河を見つけることができました。
そこでカヤック乗りに発見され、入江は帰国することができたのでした。

その後、その冒険の体験談のおかげで一躍人気者に。
さらに日本まで持って来ていたあのかたつむりが新種であったことがわかり、発見者である入江の名前までついてさらに大フィーバー!
入江はあっという間に大金持ちになり、高層マンションを購入、地面をはいつくばっている連中はまるでかたつむりだ、俺の養分になるため生きているんだ、などと口走るほどになっていたのです。
そんな大成功を収めた入江ですが……彼はもうこの世にはいません。
突然誰とも会わなくなった入江が、入院していると聞いてお見舞いに向かった時のこと。
何やら病室の方が騒ぎになっていて、その騒ぎの渦中に目をやると……
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体中の穴と言う穴から、大量のかたつむりを吐き出して悶絶する入江の姿があったのです……!!
入江の体内には、びっしりとあのかたつむりが繁殖していました。
この規制かたつむりは、動脈近くに定住し、麻薬性の分泌物を放出。体を内部から食い荒らし、排卵。
孵化した幼生は養分を吸って急速に成長、体内でさらに増殖を重ねる。
このかたつむりは発見者の名前を取って「イリエキセイマイマイ」と名付けられ……入江は、歴史にその名を残すこととなったのです。
その命と引き換えに……

……いくらなんでも本当とは思えません。
生瀬くんは思わずそのかたつむりの名を調べてみると……軟体動物門マイマイ属の中に、その名前があるではありませんか!!
恐怖におびえる生瀬くんに……開田さんはこう言うのです。
私も小さいころごちそうになりました。
軽く火を通したかたつむりのソテー。
大きいアワビみたいで、レモンがあっておいしかった。
……何かそのままぶつぶつ言い続ける開田さん。
心配になった生瀬が声をかけた瞬間です。
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開田さんが口から、巨大なかたつむりを吐き出したのは!!


……と言っても実はこれ、オモチャ。
開田さんはこうやって様々な手を尽くし、生瀬くんに会談を聞かせるのが何よりも好きなのです。
生瀬くんの取るリアクションは、とっても開田さん好み。
様々な仕込みの甲斐あって、生瀬くんはそれはもう恐ろしがり、頭を抱えて震えております。
今度はそんな生瀬くんの姿を、開田さんがうっとりと見つめるのでした。




と言うわけで、開田さんが生瀬くんをただただ怖がらせていく本作。
この後も開田さんの怪談は冴えわたり、生瀬くんとともに読者を怖がらせてくださいます!
「眉毛」にまつわるお話、「恋愛ゲーム」のお話、「住人が死んでいくマンション」の話……
生瀬くんもこの一連のお話が、ともすれば開田さんが一から十まで考え出した創作であるとわかっているかもしれません。
ですがそれでも、ホラーが苦手な生瀬くんは怖くて怖くて仕方がなく。
そして、そんな怖い話が大好きな開田さんとお話するには、彼女の怪談を聞くほかないわけで……!
本作のメインは間違いなく、開田さんの話してくれる怪談話です。
ですがその怖いお話に震えるだけが本作の楽しみ方ではありません!!
怖さをおして開田さんとお近づきになりたい生瀬くんの奮闘、そんな生瀬くんの気持ちを知ってか知らずかどんどん怖い話をしていく開田さん。
そんな二人の、怪談を取り巻く駆け引き(?)も注目なのです!!

ホラーオムニバスの新形態と言っていい本作、ホラーと主人公ふたりの関係、二つの要素で楽しめること間違いなし。
「ふらん」とのコラボ読み切りや、単行本未収録話なんかを収録した続巻も期待してしまうのは自分だけではないはず!!
第2巻実現のためにも、木々津先生ファンの方はもちろん、ホラー好きの方、「ふらん」ファンの方、お手に取ってみていただきたいところです!!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!