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今回紹介いたしますのはこちら。

「前科者」第1巻 原作・香川まさひと先生 作画・月島冬二先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


香川先生は映画やドラマの脚本化として活躍する傍ら、00年ごろから漫画原作者としても活動されておられます。
刑事や弁護士を主役とした事件解決ものや、人間ドラマ系のお話を得意としておりまして、本作もその路線のお話となっているのです。

イワシタシゲユキ改め月島先生はと言いますと、お色気要素、フェチ要素をふんだんに盛り込んだエロス系のお話を得意とされておりまして、「癒されたい男」などで現在もその路線を忘れたわけではございません。
ですが最近では「US-2」と言った、お色気要素皆無のシリアスなお話も手掛けられておりまして、その作風は拡がりつつあります。
そんなお二人がタッグを組んだ本作、気になるその内容はと言いますと……



ワイルドなイケメンと言った一朗と、その弟で朴訥とした雰囲気の二朗。
そんな二人が一つのボートに乗って、漁をしていた時のことです。
二朗は一朗にこう語りかけました。
兄ちゃん、海で人が死ぬと大量になるって信じるか?
大量は関係ないか、だって兄ちゃんは人じゃないから。
そう言って……二朗は一朗の胸を銛で一突き!!
どうしていつも俺のものを取るんだよ!
ミニカー!ゲーム!漫画!
そして、愛子!!
二朗は凶器をナイフに持ち替え、何度も、何度も一郎につきたてて……

5年後。
二朗は殺害後、自ら警察に電話して自首。
ですが犯行が計画的だったことや、凶器が二種類である事などから心証が悪くなり、6年の懲役となってしまいました。
しかし犯罪者にこう言うのも何なのですが、二朗の生活はマジメそのもの。
殺された兄が遊び人だったという背景もあり、二朗は根っからの悪人ではない、と言う事はうかがえます。
そう言うわけで仮釈放となり、保護観察官が付くことになりました。
保護司は仮釈放期間の間二朗の動向を見守り、社会復帰をするための第一歩をサポートするのです。
二朗の担当となる保護司は、阿川佳代と言う者静かな印象の眼鏡の女性。
彼女はとある事情によって安くはない借金を抱えてしまっておりまして、新聞配達の仕事とコンビニのバイトを掛け持ちして日常を過ごしておりました。
そしてこの保護司の仕事ですが……何とこの仕事は、完全なボランティア。
朝早くから新聞配達をして、合間にコンビニで働いたあげく、仮釈放の対象者の観察をするのです。

二朗は刑務所を出た後、保護観察所へ、
そしてそこで、この後阿川先生のところに行くのなら、何か食べたいだろうけど我慢したほうが良い、と意味深なことを言われて送り出されました。
指定の場所に行くと、そこに待っていたの阿川、まずはお風呂に行ってくると良いですよ、と銭湯を勧めてきました。
ひとっ風呂浴びて戻ると、阿川はこう言って出迎えてくれました。
帰り道がほっとできれば、明日は頑張れるものです。
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おかえりなさい、と。

そして阿川はたくさんの手料理を振る舞い、おかずをタッパーに詰めて二朗を送り出してくれます。
明日から仕事ですか、お仕事の釣り船って、朝早いですよね、と声をかけられた二朗、午後から兄の墓参りに行くつもりだが、行かないほうが良いだろうか、と質問を投げかけてきます。
阿川は不安げな二朗に、行ったほうが良いと思います、とはっきり答えるのでした。

イライラのたまるアルバイトをしながら、ボランティアにも励む。
そんな阿川に、あまり尊敬できない人柄であるコンビニの店長がこう尋ねてきます。
一戦もならないのに、何故保護司なんてしているのか、と。
阿川は一切迷うことなくこう答えました。
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一銭にもならないからやってるんです。
保護司の仕事をしなければ、私はお金だけのために生きてることになる。
そうです、きれいごとです。
私だって本当はお金が欲しい、面倒くさい、自分勝手に生きたい。
でもそれだけじゃみじめすぎる。
綺麗ごとが言える間は、綺麗な部分で人と接したい。
……コンビニの店長は、それだとこの後絶対痛い目に会うよ、と言うのですが……

兄の墓参りをしていた二朗の元に、かつての知人である坂本と言う中年男性が現れます。
この坂本と言う男がまた曲者のようで……
祝いに一杯おごるよ、と言いながら二朗に近づき……そして、こんなことを囁くではありませんか。
二朗、お前さ、殺す相手間違ってるよ。
お前の兄貴は全然悪くねぇ。
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だって愛子が先に誘惑したんだもの。
二朗の心境を表すかのように、吹きすさぶ一陣の風。
……二朗の心の中に渦巻く思いは、どんな形となっていくのでしょうか……



と言うわけで、阿川が二朗を中心に渦巻く人間模様に寄り添おうと奮闘する姿を描いていく本作。
前科者である二朗への冷たい風当たりを和らげ、社会復帰への道をサポートしていく。
そんなお話になるかと思われた本作、確かにそうなるのが阿川にとっての理想なのですが、二朗が犯してしまった事件の裏で渦巻いている様々な出来事が、物語をそう簡単に進めてはくれないのです。
朴訥とした性格で、真面目……であるものの、一朗に比べるとブサイクと言える風貌をしている二朗。
所謂イケメンで遊び人、二朗と婚約していた愛子をてごめにした一朗。
そして、その心情が今一つ見えてこない謎の多い女性、愛子。
その三人に、坂本をはじめとした「蚊帳の外」と言ってもいい人物が横やりを入れ、事件はどんどんと複雑になってしまうのです。
果たして愛子と一郎、どちらがこの事件のきっかけを作ったのでしょうか?
そして自分の知らなかった真実を知るにつれ、二朗の中に沸き上がっていく気持ちとは……!?
単なるヒューマンドラマではない、サスペンス要素も詰め込まれている本作、この一冊丸々使って「二朗編」とでもいうべき一つの物語を描き、読者の心をとらえてくれるのです!!
その結末も、本作の複雑な背景を生かした考えさせられるもので、読者の心に何か残してくれること間違いなしのものに。
月島先生の独特の雰囲気ある作画もマッチして、ますます引き込まれてしまうことでしょう!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!