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今回紹介いたしますのはこちら。

「残機×99」第1巻 愛南ぜろ先生 

新潮社さんのバンチコミックスより刊行です。


愛南先生は、17年にマッグガーデンさんの漫画賞で期待賞を受賞し、その後本作で連載デビュー。
そしてそのまま初の単行本刊行となられた新人の漫画家さんです。

そんな愛南先生の描く本作、一言でいえば今はやりのデスゲームもの。
ですが、本作におけるデスゲームと言う言葉の意味するところは一つではないようで……?



大学2年生のあきらは、友人の誘いも断ってバイトの面接に向かおうとしていました。
ですがその時、突然植え込みに人が落下してきたではありませんか!!
自殺でしょうか、一緒に帰ろうとしていた友人は大騒ぎして戸惑うのですが、その時あきらは別のものが気になっていたのです。
その落下してきた男のいたと思われる教室から、まるでつまらないものでも見るかのように見下ろしている一人の女性の姿が……


あきらがふと目を覚ますと、そこはまったく見覚えのないだだっ広い部屋の中でした。
ここは大学のどこか……?
いや、大学が終わった後、自分はバイトの面接に行ったはずだけど……
などと考えながら周囲を見回しますと、その部屋に同じように眠っていた女性たちが次々に起き始めています。
大きな部屋には、ひとつの超巨大なモニター、そして100人ほどの女性がいまして。
そして女性たちはみんな一様に、胸の部分に数字のプリントされた体操服にブルマ、と言う服装に着替えさせられていました。
これは何なのか、倍との面接なのか?
そんなことを考えていると、隣で眠っている少女があの時教室の窓から落下した人物を見下ろした女性とにている事に気が付きました。
彼女は起き上がるなり、洸の胸に触り、胸小さいねぇ、AAカップ?などと失礼なことを言いだしました。
男の子だと思ったんだもん、とまったく悪びれない彼女は、かえでと名乗りました。
同じ大学の一年生とのことで、やはりあの女性が変えであったことを確信するのです。
そのことを確認しようとしますと、胸の番号が「1」の女性が大きな声で騒ぎ始めます。
もう、なんでどこにも出口がないんだよ!と。
確かにこの部屋、どこを見ても扉や窓のようなものがありません。
皆は一体どうやってこの部屋に入ったのでしょうか?
バイトに来たはずがこの得体のしれない部屋への監禁、もしかしたらエロスなビデオ撮影か何かなのかと言う疑いも持ち上がりはじめ、その「1」の女性も苛立ちが抑えきれなかったようで。
家に帰らせろチクショー、と口汚く叫ぶのですが……
その時、突然あの巨大モニターに何かが映し出されました。
「BLUE BIRD」。
そんな文字がモニターに映し出されました。
どうやらその画面は、部屋の中にちょこんと置いてあった古いゲーム機に刺さっている、ゲームの画面のようです。
そしてそのゲーム機が突然奇妙な振動音のようなものを立て始めたかと思うと、モニターには薄暗い森のような景色が映し出され……
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「1」の少女の体がみるみると、服だけを残して跡形もなく消えてしまったのでした!!
彼女はどこに行ったのか。
ほどなくして全員が知ることとなりました。
彼女は、先ほどのモニターの森の中に立っていたのです。
服装は何やらゲームの魔法使いか何かのような服で……
そして彼女が現れたと同時に、モニターの横に据え付けたあった電子表示のタイマーが「99:59:20」と、時間のカウントダウンを始めました。
その以上にいまいちピンと来ていない様子の「1」の女性は、自分だけ外に出してくれたんだ、ラッキー、と駆けだして森を抜けようとします。
が、ほどなくすると目の前に何とも形容しようのない、人型の怪物が姿を現したではありませんか。
一目見るなり普通ではないことがわかりますが、彼女はあまりそう言うことに動じない性格の様子。
キショ、ウケル、などと漏らしながらその横を駆け抜けようとするのです。
しかし……その怪物は、それを許しませんでした。
彼女は
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怪物の先端が鋭い刃物のようになった尻尾で体を貫かれ、絶命してしまったのです……!
あまりにショッキングな映像に絶句するあきら。
ですがかえでは、あれが本物で、本当に死んでるんだとしたら面白いよね、と笑いだすではありませんか。
彼女は日常生活が退屈でたまらず、これが本当にあったことなら凄い貴重な体験だと思ってわくわくしている、とまで言うのです。
自分が死ぬかもしれないとなったら、怖いんじゃないか?
そんなあきらの当然の疑問も、彼女には響きません。
自分は行きたくて生きてるんじゃない、生きるっていうのは死ぬまでの暇つぶしの時間だ。
自分は死ぬまでの人生を、ゲームのように楽しい時間で過ごしたい。
……あまりに異常なその主張。
あきらは血の気の引くような寒気を覚えるのですが……その時またあの奇怪な音が響き渡りました。
そして今度は「2」と書かれた服を着た女性が姿を消すのです……!!
また一人消えた。
その事実に恐怖するあきらに、かえではあきらちゃん男の子みたいな見た目なのに案外臆病なんだ、とからかうのですが……
あきらはそこでかえでの胸倉をつかみ、怒りをあらわにします。
私は女だ。
私には、好きなやつがいて、だから、まだ死ぬわけには……
自分が何を言っているのか分からなくなり、次第にしりすぼみになっていってしまうあきら。
ですが、かえではそんなあきらに、なんだ所詮男好きのビッチかよ、あたしはあきらちゃんと違って、男が大っ嫌いなの、と言い捨てます。
そして、あの時教室から落下した男の剣も自分が関与したことを明かすのです。
自分にいいよってくるキモイ男がいて、何でも言うことを聞くから付き合ってくれと言われたから、今すぐ窓から飛び降りて死んでくれと返したら本当に飛び降りた、生きてて残念!
そう言って大笑いするかえで……
そしてかえでは、笑いがおさまった後、こう言うのです。
最初に消えたひととの番号が「1」で、次に消えた人は「2」だった。
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あなた、20番目に消えちゃうんだ。
あきらの服に書かれた番号は「20」。
もしかえでの言うことが本当ならば……あきらの命もそう遠くないうちに……!?
その予想を裏付けるように、巨大モニターにはこんな表示が映し出されていました。
「♥×98」、と。


と言うわけで、幕を開けてしまった「死にゲー」へのチャレンジ。
最近にわかに盛り上がってきた、頻繁に死にながら先へ進む解を探していくタイプのゲームですが、やはりその根本はゲーム黎明期にあったと言ってもいいでしょう。
理不尽に襲い掛かる敵やトラップを、死んで経験を積んで回避すると言うのは、困難ながら乗り越えられるようになった時の達成度もひとしお。
まあ昔のゲームの場合は、一本のゲームを少しでも長くプレイしてもらえるようにそう言う難易度にしていたことも多いようですが……とにかくそう言ったバランスを楽しむプレイヤーも少なくないわけです。
……そこにかかるのが、ゲーム内のキャラクターの残機ならば、の話ですが。
どうやら「BLUE BIRD」なるゲームを模したらしいこのデスゲーム、そう言ったゲームの例にもれずに理不尽なゲーム性を持っているようです。
そんなゲームに、己の身ひとつで挑む……それは恐怖以外何者でもないでしょう!!
さらに問題なのは、ゲームに挑むものが「死んで覚える」という生贄まがいの行動をしなければできず、それを受け入れることができるのかと言う部分。
他の人のために自分が死ぬ、と言うのがいかに困難なことか……
ましてやその他の人物の大半が、見ず知らずの女性なのですから……!!

そんな理不尽過ぎる死の恐怖、自分が生贄のようになれるかどうかと言う無慈悲な選択、そんな要素が肝となるお話となっているわけですが、もちろんそれ以外も注目の部分は多数用意されております。
かえでも単なるイカレたキャラと言うわけではない何かのストーリーが用意されているようですし、あきらにも驚きの秘密が隠されている様子!
さらにこう言ったお話には欠かせない情報通的キャラも登場するなど、各キャラのドラマも豊富に用意されているのです。

そしてそもそもこのゲームの世界のようなものは何なのかと言う謎こそ気になるところ!!
個人的には、昔のゲームと言えばクリアしても簡素なメッセージ+「GAME OVER」の表示で終わってしまうというイメージがありますので……
クリア後も本当に生きて帰れるのかと言う部分も気になってしまいます……!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!