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今回紹介いたしますのはこちら。

「累」第14巻 松浦だるま先生 

講談社さんのイブニングKCより刊行です。


さて、羽生田の想いの全てがこもった舞台に立とうとしていた累。
ですがその中で様々な事実が明かされ、その中で累は自らの思いと、母の本当の望みを知ることとなるのです。
そして累は、交換した咲朱として演じる美しい暁ではなく、本来の顔での醜い宵を演じることを望んで……!!



咲朱と幾による「暁の姫」の上演は中止となりました。
咲朱が舞台に立たない、となれば羽生田にとって暁の姫の上演をする意味はなくなるわけで……
夢の結実の目前で羽生田は再びすべてを失うこととなったのです。
……が、それでも……累は、羽生田は、諦めたわけではなかったのでした。

累は、野菊と会っていました。
野菊に何か大事なものの入ったいるらしい紙袋を渡し……そして、あの口紅を託そうとしていたのです。
が、野菊はそれを受け取る前に言いました。
自分にとって、醜いとされるのも美しいとされるのも、同じ「異形」でしかない。
透世が守ろうとした累が今でも望んでいるのなら、顔を永久に交換したとしても、自分に失うものはない、と。
美しい、透世と生き写しである野菊との永久交換。
それは累が望んでやまないものでした。
決意を固めたはずの累も、目の前で本人から持ち掛けられると、心が動かないはずもありません。
……が、それでも累の決意は変わりませんでした。
ありがとう、けど私はもう望まない。
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それに、いざなにも透世にも翻弄されることなく、私たちは私たちのけじめをつけなければ。
そんな累の言葉を聞くと……野菊は、わかったわ姉さん、と口紅を受け取り……去って行きました。
これでもはや累の手から、彼女の生命線ともいえる口紅はなくなりました。
口紅が齎す全ての可能性を、永久に、自らの手で捨てたのです。
累に残ったのは、「怖れ」「不安」「劣等感」「羞恥心」。
そんなものばかりの体で……累は、化けものは、奈落の底から這いずりだすのです……!

とある舞台の顔合わせ。
そこに、累は現れました。
咲朱ではない、「累」そのものとして。
羽生田に招き入れられた累は、一同にこうあいさつをします。
「宵」役の、かさねです。よろしくお願いします。

再び動き出した「暁の姫」。
咲朱の降板で、一回頓挫した「暁の姫」でしたが、幾をはじめとする僅かが残り、新たに呼びかけに応じてくれたものもいて、規模も期間も縮小することになったものの、上演が決まったのです。
羽生田は、それでもここにいる全員で美しい舞台を作るつもりだ、と鋭い眼光を光らせました。
累もその想いは同じでしょう。
そして、宵を本来の顔で演じることも彼女自身が望んでいたことのはず。
なのですが、累は……
自分の姿を「見られる」ことを何度も想定してここに来た。
それを頭で理解はしていても……どうしても、身体が拒絶してしまうのです!
その演技力に関しては、誰しもが息を飲むものを持っていた累。
そのはずなのに……
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累は、まともに台本読みがまともにできないどころか、台詞を一言も声に出すことができず……初日の稽古を終えることとなってしまうのでした……

累の戸惑いは一向に収まることはありません。
街中を歩き、その顔を見て顔をしかめるものが現れるたびに、彼女の心は委縮します。
稽古が進んでも、累だけはか細いかの鳴くような声で台詞をつぶやくことしかできず……
累一人が足を引っ張っている形になってしまい、舞台に出る者たちもさすがにざわついてしまうのです。
羽生田以外の関係者で唯一累のことを知っている幾は、彼女の葛藤もある程度は理解しているので、稽古期間はまだある、素顔で演じることにならないのよね、演技に悩んでいるのはあなただけじゃない、自分なりの「暁」と「宵」を一緒に差がそう、と優しい声をかけるのですが……
追い詰められている累はその声に応えられず、思わずうるさい、と怒鳴りつけてしまうのです!!
そうなると他の出演者たちも黙っていはいられなくなってしまいました。
足を引っ張っているのはお前だろう、と累を責めるもの。
演技以前に、彼女に「醜い鬼女」をやらせるなんてかわいそう、と同情するもの。
そもそもこの台本が、美しい「暁」よりも醜い「宵」が目立つ扱いなのも気になる、と台本に異を唱えだすもの……
そんなものたちを、いいからお前らは自分の役に集中しろ、と追い払う羽生田。
累はと言うと……幾に、あなたが誠実に向き合ってくれていることはわかるけど、その優しさは自分にはどうしても毒になってしまう、ここまで巻き込んで申し訳ないけど、自分の役に集中してほしい、それ以外であなたが私に対してできることはありません、と拒絶する言葉を告げるのでした。

翌日、累は自宅で身悶えしながら苦悶していました。
自分どころか、全ての役のセリフは入っている。
声も体も整い、不調はない。
だと言うのに、今のこの歪な表情筋、繕われた皮膚をどう動かせばいいのか、観客の目にはどう映るのか、それが恐ろしくてならないのです。
自らの醜い顔にスポットライトが当たり、観客たちから心ない言葉を投げかけられる。
そんな状況が脳内によぎり、累は誰かもわからない誰かに助けを求めるのです。
と、そこに羽生田が訪ねてきました。
もしかしたら累が稽古に来ないのではないかと心配し、迎えに来たのですが……
そこで羽生田は、累を姿見の前に連れて行きます。
見えるか、「鬼女」の姿だ。
鬼女はその醜さゆえに、あらかじめすべてを奪われていた。
そんな彼女は人々に対し、ただ悲しみに暮れるのか。
いや、恨み憤るだろう。
目を吊り上げ、牙を剥き、奈落の底から睨み上げる。
お前もそうしてきたように。
鏡に映し出された、恨み、憤る顔。
自分の怒りは周りにこう見えているのか?
そう尋ねる累に、羽生田は答えました。
ああ、昨日だってな。
怒りにしろ喜びにしろ、なりふり構わない時の自分の顔を誰しも普段見ることはない。
しかし、役者はそれを見なければならない。
顔も体も声もすべて表現のための道具だからだ。
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そして、演出家(おれ)自身も見るべきだったんだ。
死んだ虚構ではなく、生身で生きる真実(おまえ)を。



と言うわけで、とうとう完結を迎える本作。
ついに自分の顔で舞台に立つ決意をし、それを受け入れた羽生田だったのですが、やはりそこに用意されたハードルは高すぎるものだったようです。
この羽生田の言葉で改善は進むものの、それでもかつての目を奪われるような演技には到底及びません。
累は「美しさ」なしではその真の力を発揮することはできないのでしょうか。
真の力を発揮することができるとすれば、その為に今足りないものは何なのでしょうか……?
そうこうしている間にも時間は進んでいきます。
累の全てをかけるはずのこの舞台……
果たしてどのような結末を迎えるのでしょうか?
そして、その舞台の先にまつ、累の運命は……

母、父、羽生田、累と彼女に顔を交換した者達。
そんな人物の過去と現在が交錯し、作り上げられていった物語は、ここで幕を下ろします。
二転三転ある物語は最後の最後まで読者の興味を引いてやまず、最後の瞬間まで予想することのできないドラマを見せてくれました。
そしてその結末は、予想を覆すものではありましたが、同時に納得のいくものであると言えるもの。
様々な思いの去来するラストシーンは、ぜひとも皆様の目でご確認いただきたいところです!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!