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今回紹介いたしますのはこちら。

「鮫島、最後の十五日」第20巻 佐藤タカヒロ先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。


さて、十三日目に猛虎と激突することとなった鯉太郎。
いつものように全力でぶつかっていく鯉太郎でしたが、猛虎はその燃え滾る思い語と受け流すような立ち合いを見せて……!?



ブチカマシを受け流し、左へと動いた猛虎。
そのまま素早い動きで左下手に手を伸ばしました。
取らせるか!と鯉太郎はその動きに対応しようとするのですが、何と言う事なのでしょうか。
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猛虎の動きが一瞬止まったかのように見え、さらにその後、すんなりと左下手を取ってしまうではありませんか!!
驚き戸惑う鯉太郎。
猛虎はそのまますかさず出し投げを打ちました。
とっさに足を踏み出して難を逃れる鯉太郎なのですが、今度は体勢を戻そうと振り返ったところに強烈なのど輪への突っ張りが待っていたのです!!
これはどう言う事なのでしょうか。
「速い」と言えば、「速い」のは間違いありません。
ですがこの猛虎の攻めは単純なスピードではないような……!?
のど輪への攻めを何とかそらした鯉太郎、反撃に転じようと自分を左下手を取るべく手を伸ばします。
が、すさまじい速さのその手が廻しに届くよりもさらに早く、猛虎は身を翻して再び出し投げを打ってきたのです!!
あまりに早すぎるその攻めのスピード。
鯉太郎もとっさに右手でもうこの左下手を払って投げから流れるなど、尋常ではない冴えを見せていますが……完全に相撲は猛虎ペース。
あの素早い鯉太郎が、スピードでも適わない……?
そんな驚きを裏付けるかのように、猛虎は鯉太郎にぶちかまし!!
続けての攻撃に備えて力を籠める鯉太郎なのですが、そんな鯉太郎のタイミングを崩すかのように猛虎の右ツッパリが顔面に直撃するのです!!

猛虎は、体を置きくして強靭な力を手にするのが力士だ、とどこかで信じていました。
ですがどれだけ鍛えても、自分よりも体に恵まれ、決して追いつけない腕力の差を見せつけるものは存在するのです。
肉の強さは生まれついての才能に左右される。
そんな現実は確かに存在するのですが……それだけが絶対ではないのを見せたのが、あの横綱、泡影だったのです!
泡影との戦いを機に、当時三役目前の番付だった猛虎はどんどんと星を落としていってしまいます。
俺は俺の体を本当に使えているのか、理解しているのか?
ここが俺の限界なのではないか?
そんな不安を抱えたまま取り組みを続けて行くと、とうとうその場所は負け越し。
虎城に申し訳ない、と謝罪に行ったのですが……なんとそこで虎城はこう言ったのです。
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どうした?最近相撲が良くなってきてる。
お前の悪いとこはピンと一つしか使ってなかったとこだ。
腕なら腕、足なら足とそこだけギュッとなっていたが、底を効果的に使うために他の箇所にびびっと耳を傾け始めとる。
何よりフッと抜きができるようになってきとる。
大事なのはユルッとした間、力だけで制するのは限界があるのよ。
問題ない、その相撲を探求していけ。
登って見せろ、俺のいた場所まで。

虎城ならではの言葉で、はじめてしっかりと褒められた猛虎。
憧れの横綱に褒められた、認められ始めた、と言うのは当然嬉しかったのでしょうが……何よりも猛虎は自分の歩いていた道が正しいもので、その先にあこがれの横綱のいた場所があると言う事を知れたのが嬉しかったのでしょう。
そうして猛虎は一皮も二皮もむけ、大関にまでたどり着いたのです。
そしてその横綱へと続く道で得た技は、鯉太郎の攻撃を完全にいなすまでになっていました。
猛虎の突っ張りを下からあてがっていなし、必殺のぶちかましで攻勢に出る。
今まで幾度も鯉太郎の手に勝利を運ぶきっかけになったそのぶちかましを……
猛虎は真っ向からぶつかって受け止めるのでもなく、変化して回避するのでもなく、ましてや引いてはたこうとするのでもなく……
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まるで力がこもっていないかのように、勢いを殺してしまうのでした!!


と言うわけで、おそらく現状最も横綱に近い位置にいるであろう猛虎との戦いを完全収録した今巻。
鯉太郎の全てを込めた一撃ですら、完全に受けきってしまう猛虎に対して、一体どんな手を使えば勝利をつかむことができるのでしょうか。
今まで戦ってきた中で最も卓越した技術に成す術がない鯉太郎ですが……そこで諦めるようなタマではないことはみなさんがよくわかっているのでしょう!!
果たして鯉太郎は猛虎に対してどう戦うのか。
そして、どんな結末が待っているのか。
激戦は、劇的な決着を見せるのです……!!

そして物語は、十四日目の取組相手が判明したところで未完のまま終わってしまいます。
皆様ご存知かとは思いますが、連載中に佐藤先生が急逝されてしまったため、残り二日間の鯉太郎の戦いは描かれることなく終わってしまったのです。
鯉太郎の行く末は描かれませんでしたが、それでも佐藤先生のこめた熱い思いは感じ過ぎるほど感じられるはず。
その想いを、是非とも体験してください……!!

そして巻末には、週刊少年チャンピオン誌上で行われた追悼企画に寄せられた様々な方からの色紙も収録。
チャンピオン作家の皆さんはもちろんのこと、同じ週刊少年誌で相撲漫画を連載していた川田先生、ここ10年の相撲界を引っ張ってきたと言っても過言ではない白鵬関、芸能人や声優と言った方々が名前を連ねておられます。
こちらも合わせて佐藤先生、そして本作への思いを噛みしめましょう……!



今回はこんなところで。
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!