今回紹介いたしますのはこちら。
「東京伝説」第1巻 原作・平山夢明先生 漫画・鳥山英司先生
講談社さんのシリウスKCより刊行です。
平山先生は90年代から映画評論家として活動をはじめ、すぐに「『超』怖い話」シリーズをはじめとした実話怪談作家として名をはせつつ、06年には「独白するユニバーサル横メルカトル」で日本推理作家協会賞短編部門を受賞、さらに09年にはラジオ番組まで始めてしまうなど、各方面で精力的に活動されております。
鳥山先生は、07年「Satanikusu ENMA ケルベロス」で連載デビューした漫画家さん。
そちらの作品は永井豪先生の名作「ドロロンえん魔くん」の続編的作品の続編、と言う一風変わった作品でして、そちらを描いた後も同名ゲームの漫画化「GOD EATER -救世主の帰還-」、そして代表作と言える「悪の教典」と、原作のある作品を手掛けられてきました。
そんなお二人がタッグを組んで描く本作。
平山先生の同名の著書を原作としている為、所謂「人間が怖い」系のホラー作品となっています。
ですが原作のようなオムニバスものでありながら、中心人物となる人物が配置されたストーリーものともなっていまして……?
週刊誌の編集者、阿川保奈美。
彼女はその日、巷を騒がすニュースを携帯で眺めながら、バーでお酒を楽しんでいました。
するとそこに、一人の男が声をかけてきます。
隣、いいかな?
顎にあるほくろが印象的な優男。
保奈美は彼を「まぁまぁアタリ」と心の中で評し、楽しい夜にしてくれるならどうぞお好きに、とナンパを受けるのでした。
なんでも彼は、旅が趣味で暇を見つけては国内外問わず旅行をしているんだとか。
そんな趣味で培われたコミュニケーション能力ゆえか、会話は弾んでいき……
そのまま二人は、ホテルへと向かうのでした。
部屋に入るなり、男は保奈美の体を求めてきます。
良いにおいだ、と囁きながらベッドに押し倒す男。
シャワーを浴びてから、と言う保奈美の声も聞かず、行為は幕を開けるのでした。
男は終始保奈美の髪の匂いを嗅ぎ続けます。
とても艶やかで綺麗な髪だよ。
興奮する、たまらないよ。
男の動きはどんどんと激しさを増していき、そして……
真っ暗な部屋の中で響く、奇妙な音。
その音で、保奈美は目を覚ましました。
すると
鋏を構えたボサボサ髪の男が、保奈美に圧し掛かって鋏を振るおうとしているではありませんか!!とっさに体をひねり、男の鋏から逃れる保奈美!!
一体この男、どこから入り込んだのでしょう。
そして一緒にホテルにやって来たあの優男はどこに行ったのか……!?
ねえちょっと、なんか変なんだけど!!
大きな声を張り上げて優男を呼ぼうとする保奈美なのですが、一向に返事は返ってきません。
その間も鋏の男は襲い掛かってきます!
と、その時、保奈美の目に信じがたいものが飛び込んできました。
鋏の男の顎にある……ほくろ。
そして、あの男の持って来ていたキャリーケースの中に入っている、袋詰めの髪の毛が!!
と言う事は、もしかしなくてもこの鋏の男があの優男!!
保奈美は男を突き飛ばしてどう言う事なんだ、あんた刑務所いきだよ、と告げるものの……男の口からは理解できない言葉しか出てきません。
常人の精神からは出てこないであろう男の言葉から辛うじてわかるのは……おとこは人毛を何やら妄信していて、保奈美に映えている家と言う毛をすべて刈り取ろうとしているらしい、と言うことでした!!
鋏を振りかざして襲い掛かってくる男を目の前にした保奈美は、身の危険を感じ、手近にあった灰皿をつかんで頭に一撃!!
それでも男は動きを止める気配がなく、もう一撃加えると……男は、倒れ込んだまま動かなくなってしまったのでした。
たまらずホテルから逃げ出し、路地裏で震える保奈美。
真だよ、絶対死んだ、刑務所怖い、イヤだイヤだ。
正当防衛じゃん、だってそうじゃん、人殺しになっちゃったじゃん、お母さん……!
悲観に暮れて縮こまってしまう保奈美ですが……そこに、
あの男が忍び寄っていたのです!!どこまで逃げても追いかけてくる。
警察に言うと言っても全く話を聞かずに襲い掛かって来る。
もう手の打ちようがないかと思われたその時のことでした。
鋏男だけでもとても現実とは思えない状況だと言うのに、今度は見るからに怪しい二人組。
さらにその二人組の女性のほうは、気にしないで続けてくれ、でもあんなちゃっちい鋏で切り刻めると本気で思ってるのかしら、ととんでもないことを言い始めたのです。
すると鋏の男は、仮面の女性の髪の毛の方に目移りしたようで。
今度はその女性に襲い掛かるのですが……
その後に待っていたのは、目を疑うような光景でした。
執事が鋏の男をかかと落としで一撃のもとにダウンさせたかと思うと、今度は鋏の男に火をつけ、燃やしてしまったのです!!
苦悶の絶叫とともに歩き回る鋏の男……!!
執事は肉の焼ける匂いを避けるためにハンカチで口元を覆ってその様子を眺めています。
そして仮面の女性は……
その光景を見て、ナルホドナルホド、と何かを納得したかのような声をあげ、けたたましく笑い続けるではありませんか!!
……とうとう限界が来たのでしょう。
保奈美の意識は、そこでぷっつりと途切れてしまいました。
……ですが目の前で繰り広げられた以上極まりない出来事は、現実そのもの。
そしてその悪夢のような現実はこれで終わることはなく……
保奈美はこれから先、さらなる悪夢のような現実に苛まれることとなるのです!!
と言うわけで、奇妙極まりない「都市伝説」を間近で体験してしまった保奈美。
この後保奈美はどうしようもない事情を抱え、仮面の女こと不識誘(ふしきいざな)の命令に従い、都市伝説のレポートを認めて行くこととなるのです。
ですがそのレポートと言うのは、ネットや聞き込みなどで収集した情報をただ書くだけではありません。
実際に都市伝説を体験し、その息遣いまで聞こえてくるような「恐怖」の文章を書く。
そんな仕事を強いられるのです!
と言う事はつまり、彼女はこれからことあるごとに都市伝説を実際に体験する羽目になるわけで……!!
この後も保奈美を悩ます都市伝説は目白押し。
「鍵の男」「宇宙の男」「あいのりの女」と、なんだか名前を聞くだけで嫌な予感がしてくる連中が続々登場し、保奈美を悩ませ、そして誘(と読者)を楽しませてくれるのです!!
そんな都市伝説の恐ろしさ、気味悪さはもちろん言うまでもないのですが、謎に包まれた誘周りの物語も注目せずにはいられないでしょう!!
謎多き誘と執事の大竹の素性や目的とは一体!?
保奈美が解放される時はやって来るのか?
そんなメインとなるお話にも要注目です!!
今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
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