kg0
今回紹介いたしますのはこちら。

「絢爛たるグランドセーヌ」第11巻 Cuvie先生 

秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。


さて、フランスへの短期留学にやって来た奏。
短い間ではありましたが、奏は確実に次への一歩を踏み出すことができました。
ですがその留学の間に一緒にホームステイしていたアンドレアとは今一つ仲良くなり切ることができず……?



奏が短い期間の中でたくさんの経験を積んで戻ってきたころのことです。
ドイツに留学していたさくらはと言いますと、あまりいい表情をしているとは言えません。
レッスンはそつなくこなしているものの、レッスン終了後に同じレッスンを受ける仲間から、ご飯に行かないのかと尋ねられても、一言「あとで」と返事するだけで全くコミュニケーションをとらないのです。
そんな仲間たちのいなくなったレッスン場で、桜は一人練習を続けていました。
ですがその時、ポアントが滑り、バランスを崩してしまいました。
尻もちをつくように座り込んださくらは、トウシューズを脱ぎ捨てると、その手に持ち……ガンガンとつま先を床にたたきつけ始めるのです!
kg1
ポアントを柔らかくするため……と言うよりもむしろ、さくらの中に渦巻くやり場のない苛立ちをぶつけているようにしか見えません。
うっすらと涙を浮かべながらシューズを振り上げるさくらでしたが、その時彼女の携帯にメッセージが届いたのです。
さくら元気?
そんなメッセージを送ってくる相手など……はっきり言って奏しかおりません!
私は昨日帰国したよ、同じヨーロッパだったけど流石に会えなかったね。
留学してみないとわかんないことあるってホントだね、さくらの言ったとおりだった。
……精神的に参っていたこともあったのでしょう、さくらはこんなメッセージを返します。
何が一番大変だった?と。
やっぱり言葉の違いかな、なかなか仲良くなれなかった子がいてさ、留学先でルームメイトがベネズエラの子だったの、さくらも知ってるよね。
奏のその返答を見て、すぐにさくらは自身に大きなショックを与えたあのアンドレアであると直感!
思わずその時のことを思い出してしまうさくらでしたが、すぐに奏は桜の顔を見て話をしたい、とビデオ通話のお誘いをしてくるのです。
ここで断るのもおかしな話。
さくらはすぐに涙をぬぐい、ついでに逆光風にして顔をよくわからない状態で通話を始めることにします。
さっそく奏からすっごい逆光なんだけど、とツッコミが入るものの、さくらはいつもの調子でそれがどうしたのか、こっちからはそっちの締まりのない笑顔がちゃんと見えてるよ、と憎まれ口で返しました。
そんないつも通りの彼女の様子をみて、さくらは相変わらずだね、変わってなくて安心したよ、と返す奏。
そこでさくらは、気になっていたアンドレアの事を聞くことにします。
アンドレアはすごい、と手放しで絶賛する奏。
そしてさくらは、学校の公演でお客さんの入る舞台に立っているし、アンドレアも代役とはいえプロの公演に立った、二人に距離を開けられていて、おめでとうと悔しさの混じった気持ちが凄い、と続けました。
と、そのあとすぐに奏はこう言うのです。
さくらは大丈夫?自分の気持ち言葉で伝えられてる?
……まるで先ほどまでの自分を見ていたかのような言葉に、思わず一瞬間が空いてしまうさくら。
何でそんなことを聞くわけ?と問いかけますと、奏はこう言うのです。
さくら、日本語でも誤解されがちだから心配。
……自分の事を、もしかしたら自分よりもよくわかってくれた上でのその言葉。
kg2
さくらの目には自然と涙があふれてしまい……とっさに携帯のカメラを隠し、その表情を見られないようにしてしまいました!!
それでもしっかり取り繕い、私だって、カナがYAGP本戦で年間スカラを取れるのかマジで心配してるんだからね!と見事にいつも通り……いや、いつもよりちょっぴり優しい言葉をかけるさくら。
う、それは……頑張るよ、とりに行きます!と図星をつかれた感じの奏でしたが……最後にさらに、こんな言葉を残して通話を終えるのです。
それじゃまた、そーだ、友達と仲良くね!
……おせっかい、またそんな甘いこと言って。
奏の底抜けな人の良さにあてられたさくらの体の中に、確実に力が戻り始めました。
その力は、励まされたことによる復活だけではなく……
kg3
ムカつく、カナにできて私にできないとかありえない!という、彼女らしいプライドの復活でもあったのです!!
そしてさくらはそこで今まで張り詰めていた意地を少し緩め、ドイツ語をさらに勉強、同じレッスンの仲間たちと積極的にコミュニケーションを取ることにしたのです!!
結果、今まで伝えきれなかったことも伝えられるようになり、さくらの気持ちとともにバレエの腕前も再びみるみる上昇!
さくらは認めないかもしれませんが、確実に奏のおかげで彼女はさらなるステップアップを果たせたのでした。

そしてまた、現在の奏と同世代の少女の中で実力ナンバー1と言っていい、絵麻にも動きがありました。
最初はそれほどバレエが好きではなかったかのような行動をとっていた彼女でしたが、やはり奏によって変化が現れていました。
本格的に留学に備えて言葉の勉強にも本腰を入れているのですが……
問題は、普通の家である絵麻の家の経済状況です。
今までとはまるで違う表情でバレエに打ち込む絵麻。
後は家族の支えが得られるかどうかと、やはりスカラシップがとれるかどうかです。
普通の家に住む子供たちが、バレエの名門に入るにはやはりスカラシップを取るのが最も確実な道でしょう。
ですがスカラシップの席の数は決まっているわけで……
奏、絵麻、そして翔子、数多くのバレエの道を志す少年少女達。
果たして誰がその年間スカラシップを獲得し、その先へと進めるのでしょうか?
奏達の運命を決めるYAGP本戦は、間近に迫っているのです!!



と言うわけで、プロの道に進む少女達の奮闘を描いていく本作。
今巻は久しぶりのさくらの出番となりましたが、あのさくらでもこうして悩む大変な様子が描かれます。
そして、才能に関してはおそらくさくら以上な絵麻の過程の事情が描かれたり、アンドレアと奏の関係を描く短期留学編の決着編など、各キャラにスポットライトを当てた展開を収録。
そんなそれぞれのエピソードが終わったあとは、いよいよYAGP本戦編がスタート!!
今巻ではその序章ともいえる、準備的なパートまでとなっておりますが、奏達がそれぞれの気持ちや仕上がりを確認する様子や、エンターテインメントの本場であるアメリカでの素晴らしい体験など、試験以外のあれこれがたっぷりと描かれているのです!!
一体だれがYAGPで評価を得て、年間スカラを得るのか?
そして審査員の目に個人的に目に留まる人物はいるのか?
奏と浅からぬ関係であるニコルズ先生の同行は……?
派手な物語の動きはない巻ですが、その分次の一歩への期待がさらに深まっていく一冊となっているのです!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!