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今回紹介いたしますのはこちら。

「ノラと雑草」第1巻 真造圭伍先生 

講談社さんのモーニングKCより刊行です。


真造先生は08年にデビューした漫画家さんです。
その後09年に「森山中教習所」で連載デビュー、さらに同作は映画化を果たします。
12年には「ぼくらのフンカ祭」で文化庁メディア芸術祭漫画部門新人賞を受賞するなど、様々な評価を獲得していらっしゃいます。

そんな真造先生の最新作となる本作は、一人の少女と、一人の中年男性を中心にしたドラマを描く作品となっています。
その背後に大きな影を感じさせる二人の紡ぎ出すドラマとはどんなものなのでしょうか……?



女子高生と個室で二人きりになり、肩たたきやマッサージなどするサービス、JKリフレ。
ですがその中には、メニューには明示していないものの、さらにお金を出すことによって性的なサービスを受けることのできる違法な店舗も存在します。
そんな違法な店に、捜索に入るタイミングをうかがっている警察が二人。
45歳、うだつの上がらない中年の山田警部補と、ノリの軽いいい加減そうな三上です。
そんな二人が張りこんでいることも知らず、中に入っていく客らしき男。
三上はそれを見て、あーあカワイソ、あと10分で着手だってのに、まああの中にいる男は全員クズっすもんね、と軽口をたたくのでした。

最後に入っていった男は、えみると言うショートカットの女子高生とプレイに興じていました。
興奮する男は、早速裏メニューでも一番金額のはる、最後まで行くコースを選択。
すぐさまキスから始めようと、えみるの顔に手をやるのですが……
その時のえみるが自分を見つめるそのまなざしに、いい様のない戦慄を覚えてしまうのです!!
そうして怯んでいる間に、山田と三上が突入。
あっさりとこの店にいた全員がお縄となるのでした。

その時店にいた少女達の身分を検めていた山田ですが、その時彼に衝撃が走りました。
あの、えみると言う働いていた少女。
彼女の本名は海野詩織と言うらしいのですが……その顔は、山田の良く知るある人物にそっくりだったのです。
身分証ではなく、実際の詩織の顔を見てみると……
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山田の口からは、思わず声が漏れてしまいました。
こずえ、と。

仕事を終えた後、山田は時折見かける野良猫に餌をあげてから、自宅へと帰ります。
弁当を置いて、まず行うのは……写真に線香をあげ、手を合わせること。
その写真に写っているのは、詩織が何歳か若かったらこうだろう、と言うような少女が映っています。
ただいま、こずえ。
……あの詩織と言う少女は、山田が失ってしまった一人娘、こずえにそっくりだったのです。
家出少女だったという詩織ですが、もちろんこれ以上山田がどうにかすることはできません。
どうかこずえの分まで幸せになってくれ。
写真に向かって、祈るようにそう言うほかないのでした。

ですがこずえは、とても幸せには慣れそうもない人生を送っています。
警察に連れられて家に送り届けられたものの、迎えてくれたのは母親一人。
そしてその母親は、警察が帰ったとみるや、小さく震えている詩織に手を上げて……!!
詩織の居場所は自宅にはないのでしょう。
雨の降りしきる中、再び詩織はあてどもなく外へ出て行きました。
傘もささずとぼとぼと歩く詩織でしたが……たまたま自宅が近くで、一人ファミレスで食事をしていた山田が彼女の姿を見かけたのです!
彼女はこずえではなく、他人。
管轄も違う。
彼女とは無関係なんだ。
そう言い聞かせようとする山田ですが……
ついにいてもたってもいられず、彼女の姿を追いかけてしまうのです。

公園に一人座っていた詩織に声をかける山田。
傘持ってないみたいだけど大丈夫?
そう声をかける山田の脳裏には、幼い日のこずえの思い出がフラッシュバックするのですが……詩織の口からはとんでもない言葉が返ってきました。
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おじさんち、泊めてくれませんか?
ただとは言わないんで、お金はほとんど持ってないんですけど、その、そう言うことしてもいいんで。
つーか、それ目的でしょ?
思いもよらない言葉をかけられて硬直してしまう山田。
そのとき、詩織もようやく山田があの時踏み込んできた警察だと気が付きました。
詩織はさっと飛びのき……
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ものすごい目で山田をにらみつけながら、ちょっと親と喧嘩しただけなんで、ちゃんと帰るんで大丈夫です、とその場を立ち去ってしまうのでした。
……山田は、呆然と立ち尽くします。
娘の面影を求めていないと言えばうそになるでしょう。
そんな彼女から、憎悪すら感じられる視線と、あまりに予想外な言葉を投げかけられてしまい……
山田のショックなど知る由もない詩織は、携帯電話をつかい、SNSで呼びかけるのです。
高一女子です、さっき家出しました、誰でもいいので助けてください。
それは自らの体を汚すことすら厭わず、その場しのぎの逃避を求める要求にすぎず……




と言うわけで、娘を亡くし、生き甲斐をも感じなくなってしまった男、山田と、どこにも居場所がなく、ありとあらゆるものから逃げている少女、詩織の出会いから物語が幕を開ける本作。
この詩織は親からひどい仕打ちを受けているようで、家出をしてはいわゆる神待ちなどをしてその日ぐらしをしています。
ですがそんなことをしていれば、いずれ危険な目に会ってもおかしくはないでしょう。
彼女の境遇を察し始めている山田は何とかしたいと思いはするものの、管轄が違うからには警察としてはうごけません。
だからと言って個人的に手を差し伸べてしまえば、未成年を保護者の許可なく止めるという犯罪を自ら興してしまう事にもなるのです。

そしてこの後も、詩織には苛烈な出来事が次々に降りかかります。
行き場もお金もない少女は、どこにたどり着くのか。
そんな彼女に、山田は……?
二人の今と未来、そして過去が動いていく本作から、目が離せませんね!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!