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今回紹介いたしますのはこちら。

「秋の鹿は笛に寄る」第1巻 きづきあきら先生+サトウナンキ先生 

集英社さんのyんぐジャンプコミックスGJより刊行です。


さて、「ボクはイケメン」で描きたかったと言う非イケメンが主人公の物語を描き切ったきづき+サトウ先生。
今回はその活躍の場を集英社さんにうつし、意外な気がする初の集英社さんでのコミックス初刊行となりました。
きづき+サトウ先生と言えば、クズ人間が絡むエロスとバイオレンスでインモラルなドラマと言うイメージがありますが、今回の作品はと言いますと……?



車の中で、鹿島は同僚の女性、春日凪にこんなことを言われていました。
鹿島君は今つきあってる彼女さんと、結婚するつもりなんだ。
すてき!
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ねえ、私と、セッ……セックスしてもらえないかな……?

鹿島が家に帰ったあとしばらくしますと、同棲中の結婚も秒読み段階と言っていい彼女のまつりが帰ってきました。
今日の食事当番はまつりなのですが、鹿島は急に早くおわたから簡単なのを作ったよ、と夕食をふるまいます。
まつりはその料理を一口味見して、腕を上げたね、私もう負けちゃう、とほほ笑んでくれまして。
そんな彼女の顔を見て、すこし言葉に詰まる鹿島なのですが……すぐに幸せだな、と思って、とその間をごまかします。
そのまま二人は夕食を取り、そして夜の関係もつつがなく行いまして……
俺はまつりちゃんが好きだ、何の不満もない、俺は彼女を大事に思ってて、結婚する。
そう思いなおすのですが……どうしても鹿島の脳裏には、あの凪の言葉が思い浮かんでしまいます。
同僚と言うだけで特別何かがあったわけではない彼女は、なぜ突然なんなことを言い出すのか?
そんなことを考えてしまうこと自体が、祭りへの裏切りになるような気がしたのでしょうか。
ダメだ、考えるな、何もなかった、何もなかった。
鹿島は必死に凪の言葉を頭の中から不利はr他王とするのでした。

凪は先日、同僚の中でも一つ頭の抜けた仕事をして見せ、早くもプロジェクトのチームリーダーを任されていました。
同じ立場であるはずの鹿島にとって、それはプレッシャーにならないわけがありません。
おまけに仕事だけでなく、あのわけのわからない提案でプライベートまで脅かしてくるなんて、と、鹿島の心は乱れまくり。
翌日の出勤時、凪と顔を合わす際にも緊張を隠せないのですが、彼女はまるで何事もなかったかのようにあいさつをしてきて、普通に仕事をこなしていきます。
……当然昨日のお誘いはお断りした鹿島ですから、断られて気まずかったから、無かったことにしてくれと言う事なんだろう、と解釈。
仕事を終えた後、彼女を送っていく車の中で、一年目なのにチームリーダーなんてすごい、協力するし、何かあったら相談にのるよ、と自分も昨日のことはなかったことにして話しかけるのですが……
そこで凪は、突然人気もなく、車通りも少ない道で止まってくれと言いだしたのです!
とりあえず車を止め、どうしてこんなところでと尋ねる鹿島ですが、凪は髪を下ろして尋ねてきます。
検討してくれました?セックス。
……彼女は全く機能の事をなかったことになどしていなかったのです!!
何故自分を、それもつきあっている結婚まで考えている女性がいる自分にそんなことを言うのか。
車の中で身をよじって精一杯距離を取りながらそう尋ねる鹿島に、凪は言うのです。
だからしてほしい、と。
凪が言うにはこうです。
自分は赤ちゃんが欲しい。
でも、鹿島……夫はいらない。
いくら能力があって、出世に手が届きそうになっても、旦那の反対や、家事による消耗、仕事は忙しくて不仲になり子供を抱えて離婚、と相手が重荷になって人生の邪魔をされてしまう。
お互いを高め合え、支え合える相手を探したい人には必要なシステムだが、時間の割にはずれを引くリスクが高すぎる。
恋愛も結婚も、自分にとってはただの時間の浪費だ。
……でも、子供だけはほしい。
それなら、恋愛や結婚に咲くリソースを全部省いて、子供だけ作ってくれる相手を探す方が合理的だ。
…………どうやら鹿島は、そんな彼女のお眼鏡にかなったようなのです。
改めて断った鹿島なのですが、そこで凪はさらにとんでもないことを言いだしました。
せっかく今は排卵日なのに、時間を無駄にしたくない、相手を探さないといけないから、使ったことはないけどマッチングアプリで……
いくらなんでもそんなムチャクチャを見逃すわけにはいきません。
異を唱える鹿島なのですが、凪の決意は固いようなのです。
子供と自分を守るために出世したい、でも出世して責任が重くなるほど子供は作りにくくなる。
先延ばしにして失敗したら取り返しがつかない、私には時間が足りない。
……一人で子供を育てるのは簡単ではないことは、凪もわかっています。
ですがその難しいあれこれは、お金さえあればだいたいのことがどうにかなるわけで。
だからこそ出世と、早いうちの出産を求めていると言う事のようです。
鹿島はまつりがいるわけですから、その誘いに乗ることは出来ません。
しかし、マッチングアプリを使うなどと言うやけっぱちの行動を見過ごすわけにも……
結局その場は、返事は保留と言う感じになってしまうのです。

その日の夜、ちょっとしたことでまつりと喧嘩をしてしまいます。
理不尽に感じないでもない彼女の怒りに、釈然としないものを感じながらも頭を下げる鹿島。
そこで返ってきたのは、
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しょうがない、許してあげる、とどこまでも上からの彼女の言葉で。
……むくむくと鎌首を擡げてくる、疑問。
嫌なことだって大変なことだってあるけど、それが家じゃないから皆恋愛したり結婚したりするんだ。
でも、本当にそう自分は思っているんだろうか。
いつから思っていた?
大学の時まつりと知り合って、恋愛して付き合って、いつの間にか結婚するのが当たり前で。
……でも、それって、俺の意思だったのか……?
一旦不満と疑問を持ってしまえば、もう後は坂を転がり落ちるだけ。
ただでさえ凪は魅力的な女性で……
鹿島は翌日、急な接待が入ったとまつりにうその電話をかけ……
凪と、契約を結ぶのでした。

一度だけの過ちだった。
「今回ははずれだった」と言う凪の報告を聞き、胸をなでおろし、危うく隠し子ができるところだった、と自分の行動を反省する鹿島。
ですが……凪はその報告とともに、問いかけます。
そろそろ次の排卵日だけど、どうする?
……行き当たりばったりで、流されるままだった自分。
おそらくそれは、鹿島をリードしているつもりであろうまつりも同じ。
同僚たちも、まだ入社してそれほど立っていない今を生きることで精一杯でしょう。
そんな中で……彼女だけが本気で計画を立てている。
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プロジェクトは、走り出してしまったんだ。
鹿島は、凪の誘うままに……更なる一歩を踏み出してしまうのです……!!




と言うわけで、先生らしいインモラルエロスな物語となる本作。
今までに比べると主人公とその周囲の人物のクズさ加減は控えめではありますが、だからこそこの行動が齎すかもしれない破滅の恐ろしさが浮き彫りになるわけです!
この後も秘密の逢瀬を重ねていく二人ですが、そのまま無事に関係が終了するわけがありません。
凪がこの後さらに重ねてくる契約事項、彼女の見えない底を知らされる万端さ。
それだけではなく、この契約に首を突っ込んでくるある人物の登場などもあり、物語はいやおうなしに深まっていくのです!!
そしてこう言った作品で本来最も大きな山場になるであろう、二人であっているときにまつりと出くわす、と言うイベントまで今巻のうちで遭遇!!
深みにはまり続けて行く本作、さらにその後も次々と物語が転がっていきまして、先の展開が気になって仕方がなくなってしまうことでしょう!!
きづき+サトウ先生ならではの、エロスと予想を超えるドラマが展開する本作も、やはり目の離せない作品となっています!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!