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今回紹介いたしますのはこちら。

「さくらのはなみち」第1・2巻 原作・希戸塚一示先生 漫画・西山田先生 

GOTさんのMeDuコミックスより刊行です。


希戸塚先生は本作が連載デビューとなる漫画原作者さんです。
16年にウェブマンガの賞で本作の原型となる「女将の綱取り」で最優秀賞を受賞、その後女相撲を題材にした「はなみち」を発表、そちらご好評を博して本作の連載を開始されました。

西山先生は05年にヤングマガジンの新人賞、06年にモーニングの新人賞で奨励賞を受賞。
その後新聞掲載の漫画を10年近く連載しつつ、希戸塚先生とタッグを組んで前述の二作品を発表、17年より本作の連載を開始されました。

そんなお二人が描く本作、掲載サイトが紆余曲折あったものの、この度ようやく単行本化。
その内容は、最近人気が再燃した相撲を取り扱ったものなのですが、いうなればまっとうな相撲漫画である「火ノ丸相撲」「バチバチ」シリーズなどとは少し違った変化球の作品となっています。
とはいえ「愛敬紗英」「異世界ちゃんこ」といった林先生作品のような超変化球でもない、すこし切り口の違う相撲漫画となっているのです!



私なら横綱を作れる。
そう豪語するのは、浜松部屋の娘、常盤桜子です。
自分ならば昔ながらの一辺倒な偏りある稽古をさせず、いや、そもそも連れてくる人材から……とぶつぶつ言いながら、部屋のけいこを見つめている彼女。
彼女の仕事は、スポーツ新聞の記者です。
今日はわんぱく相撲の取材に来ていたのですが、どうにも彼女のテンションは上がりません。
相撲が嫌い、と言うわけではなく、むしろ彼女は相撲が大好き。
ですが、一緒に取材に同行した後輩カメラマンにはっきりこう言ってしまうのです。
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私、デブはキライなの、と。
そんな彼女に、わんぱく相撲の出場者らしい一人の少年がやってきて、サインをねだってきます。
実は桜子、かつて世界王者にも付いた女相撲の元選手でして。
相撲界ではまだまだその名はちょっとしたもので、こうしてファンがサインをねだってきたりするのです。
ところでそのサインをねだってきた少年、とても相撲を取るとは思えないほどの細身でした。
桜子はそんな少年を値踏みするようにじろじろと見つめ、まだ勝ち残っているのかと尋ねだします。
少年は、一応勝ち残ってはいるが……と、次の試合をする選手には勝てっこない、と弱気なことを行ってきました。
それもそのはず、その対戦相手は少年の倍、いや、3倍はありそうな超巨漢!!
桜子はその巨漢少年を見て舌打ちをすると、細身の少年に何やら耳打ちをして……?

細身の少年、なんと次の試合に勝ってしまいます。
流石元世界王者、何やら的確なアドバイスをしたのでしょう。
その結果にご満悦の桜子なのですが……ふくよかな少年三人組がやってきて、僕たちにもアドバイスをください、と言われるとまた、的確なアドバイスをしてあげました。
痩せなさい、死ぬわよ。
……人生においての、的確なアドバイスですが……

細身の少年は健闘し、3位入賞を果たします。
後輩に、やっぱり部屋でもコーチしたりするんですか、と尋ねられるのですが、大相撲と言うのはそう簡単にコーチ出来るものではないのです。
三役以上、幕内20場所、十両以上30場所。
条件によって少し緩和されることもありますが、要するにトップクラスの地位に就くか、テレビに映るような上位に3年以上いなければ親方にはなれず、親方になれなければ相撲部屋の指導はできないのです。
桜子にはまぎれもなく、高い技術と豊富な経験があります。
だと言うのに、大相撲に堂々とかかわることは出来ない……
もったいないなとぼやく後輩ですが、桜子はもっと複雑な思いを抱いていることでしょう。
私が男だったら、横綱に成れたかな。
桜子は、未だネット上に残る現役時代の自分の画像を見ながら、そう呟くのでした。

翌日、桜子は父である親方、元大関の浜桜と大げんかしてから仕事に向かうことになりました。
その喧嘩の内容はもちろん、指導方針について。
正直言ってあまり教えることには向いていない天才タイプの力士だった浜桜、先人の築き上げた稽古をただただ繰り返させることしかせず、桜子はその体たらくに不満が隠せなかったのです。
自分が指導できれば、横綱だって出せる。
「条件」はあるけど。
そう呟きながら、自分の部屋にいる力士たちでは無理だと毒づく桜子。
そうこうしている間に、凶取材する対象の試合が始まりました。
今日はボクシングミドル級8回戦マッチ、田村VS藤原。
田村は五輪金メダリストで、ここまで3戦3勝3KO、相当な注目株です。
対する藤原は、6戦1勝3敗2引き分け、とあまりにもパッとしない選手で……身長は相当高いものの、噛ませ犬にしか見えません。
試合も見栄え良いものではなく、結果3-0で田村の判定勝利。
ピリッとしない結果に会場からはブーイングが飛ぶのですが……それを見て、桜子は目を輝かせるのです!!
見つけた。
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彼なら、きっと横綱に……!!
一も二もなく駆けだした桜子!!
彼女が飛び込んでいったのは、もちろん先ほどの試合をした選手の控室で……!!

翌日、桜子は親方にはっきりとこう言いました。
逸材を見つけた、彼なら横綱になれる。
その言葉を聞いて、物凄い体格のいい若者を思い浮かべる
親方なのですが……やって来た人物を見て驚くばかり。
なにせその男、
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スケボーでやって来たあげく、体勢を崩して窓に突っ込むと言うエクストリーム入門を果たしやがったのですから!!
勿論そんな男が、あの金メダリストなわけはありません。
その男は……あの噛ませ犬ボクサー、藤原だったのです!!
慎重は高いものの、ミドル級ボクサーと言う事もあって痩身の藤原。
ボクシングでも大した結果は残していない彼が、横綱を目指せる逸材……?
一体桜子は何を見込んで彼をスカウトしたと言うのでしょうか!?




と言うわけで、相撲の稽古の在り方に切り込んでいく相撲漫画となる本作。
相撲の稽古と言えば、すり足にてっぽう、四股の基礎運動に、ぶつかり稽古と言った反復練習がほとんどすべて。
今でこそウェイトトレーニングを導入している力士も少なくはありませんが、少し前まではそう言ったものもすべて否定、相撲で使う筋肉は相撲の稽古で突ける、と言う考え方が主流でした。
そこにメスを入れ、もっと効率よく、もっと的確な指導をすれば、今以上に才能あるものを横綱にできるようになるだろう、と考えたのが桜子なわけです。
ですがその桜子の考えはなかなか理解するのが難しいものでして。
普通に考えれば相撲向きではなさそうな、長身痩躯のボクサーを横綱の器だと考えるのもそうですが、そんな彼を横綱にするための稽古もまた不思議なもの、
近代的な稽古をさせる、はずが、昔のスポーツ漫画のような、相撲に直接関係あるとは思えない他のスポーツをさせてみたり、アルバイトをさせてみたり、到底理解できない命令をしてきたりするのです!!
そんな昔のスポ根漫画的な要素を組み込みつつ、相撲のあまり知られていない新弟子検査や前相撲、給与形態などの最近多くなってきた職業の裏側を描く要素も取り入れているなど、懐かしさと新しさを兼ね備えた作品と言える内容になっています!

基本はコミカルながら、しばらくするとヒールキャラの登場や、見るからに強そうなライバルになりそうなキャラ、ある人物が悩みを抱えるシリアスな展開も見え隠れ。
これから先の展開も気になること間違いなしです!!

さらに第2巻の巻末には過去編と題し、「はなみち」として掲載された桜子の現役時代のお話も収録。
まさしく見どころ満載の2冊同時刊行と言えましょう!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!