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今回紹介いたしますのはこちら。

「異世界ちゃんこ 横綱目前に召喚されたんだが」第1巻  林ふみの先生 

竹書房さんのバンブーコミックスより刊行です。


さて、漫画家でありガチの好角家である林先生。
その趣味を生かした「好角家 愛敬紗英 今日の一番」は残念ながら単行本1巻分で連載が終了となってしまったようですが、その相撲愛がひしひしと感じられる愛のこもった作品でした。
そんな林先生の得意とする相撲要素と料理漫画要素、そして最近はやっている異世界転生系のお話をミックスした、とんでもない作品となっているのが本作!! 



大相撲初場所、千秋楽。
大関の高良山は、かつてない大一番を迎えていました。
全勝で迎えたこの日の取り組みは、これまた全勝の横綱が相手。
先場所優勝している高良山、この大一番を制して優勝を果たせば、文句なしに横綱の座を手に入れることとなります!
一進一退の攻防が続きましたが、高良山は一瞬の隙をついて廻しを引き付け、一気に前へ出ました!!
そのまま横綱は土俵を割り、会心の寄り切りで高良山の勝利!!
見事な全勝優勝で、見事な優勝を果たした高良山。
これで念願だった横綱の座をその手にしたも同然……だったのですが。
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その時突然、高良山の足元に魔法陣的な何かが現れ、光り始めたではありませんか!!
目を瞑って感動に浸っていた高良山は、その異常に気が付きません。
何かがおかしいと分かったのは、耳に届いてくる大歓声が、獣のほえるような声に変わった為。
高良山が目を開けますと、そこにいたのは牙をむき出しにしていまにも襲い掛かって来ようという大きな熊!!
しかも周りはなじみの土俵ではなく、木の生い茂る森の中のような風景が広がっているのです!!
何が起こっているのかさっぱりわからない高良山でしたが、後ろから何やら黄色い悲鳴めいた声が聞こえてきます。
せっかく召喚魔法を使ったのに、どう見ても裸のおじさんだよ、あんなのでキラーベアを倒すなんて無理だよ!
……裸のおじさんって俺のことか、とその声のする方を見ますと、三人の年若い女の子が何やら口論をしている様子。
魔法が失敗したかなんてまだわからない、それに呼んどいて逃げるなんてできるわけないでしょ!!
そう叫んだポニーテールの女の子が、高良山をびしっと指差してこう命じてきました。
召喚したんだからとっととキラーベア倒しちゃって!
……倒せ、と言われても……相手は熊。
普通に考えれば戦いたくはない相手なのですが……何せその熊、キラーベアはもう完全に臨戦態勢。
後ろには自分を頼っている様子の女の子が三人いるわけですから、ここで逃げるわけにはいきません。そうこうしている間に、キラーベアは高良山に向かって突進してきます!!
覚悟を決めた高良山、腰を落として立ち合いのような姿勢を取って迎え撃ちます。
するとどうでしょう、突進してくるキラーベアの前に、何やら奇妙な表示が現れるではありませんか!
キラーベア [獣タイプ]
HP:125 MP:3 攻撃力:162 防御力:43 素早さ:53
[スキル]毒爪 LV.3 特攻 LV.3 [ドロップ]獣の皮 血肝 獣肉
……まるで、高良山も子供のころ遊んだ経験のある、テレビゲームのステータス表示のような……?
なぜこんなものが見えるのかはよくわかりませんが、ともかく「毒爪」とあるからにはその爪には気を付けた方がよさそうです。
そこで高良山は、キラーベアののど輪に右手をあてがい、のけぞらせました!!
更に両手で下から突き上げて上体を起こし、反発して頭を下げてくる力を利用して引き落としのように地面にたたきつけようとする高良山!!
しかしキラーベアもすんなりと投げられてはくれず、腕で高良山の背を殴りつけてきて……!!
そこで高良山はとっさに右腕でキラーベアの左前足を抱え込み、体を開いて腕を極めたまま地面にたたきつける
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小手投げを敢行!!
頭からたたきつけられたキラーベアは、その自重もあって脛骨を損傷。
高良山は熊を相手に見事な白星をあげるのでした!!

急な出来事ではありましたが、見事召喚する原因となったピンチを打破した高良山。
じゃあこの世界から、もといた世界に戻してくれとお願いするのですが……
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なんと召喚したその少女、召喚魔法なんて使ったのは初めてだから勝手に帰ってくれるものだと思っていた、と言い出すのです。
……いきなり見知らぬ世界に放り込まれ、帰れなくなってしまった高良山。
この世界はいわゆる剣と魔法のファンタジー的な世界で、もとの世界とは全く違う世界。
せっかく横綱昇進を決めたも同然の優勝を果たしたというのに、そこでこんな世界に取り残されるという事態になってしまうとは……
とはいえ高良山、さすが横綱になるほどの男。
自分がここに来たことで少女たちを助けられたならそれでいい、いずれもとの世界に変える方法も見つかるだろう、と気を取り直したのです。
そこでまず現状の整理をする高良山。
どうやら高良山には、この世界に来た時に二つのスキルが身についたようです。
ひとつは「ステータス開示」。
この世界ではなかなかレアな能力の様で、先程のキラーベアのように、人間やモンスターのステータスを見ることのできる能力だとの事。
その能力で、先程助けた三人の少女が、とある村で定食屋を営んでいた、エリーセ、イーリス、フランカという三姉妹であることを知ることができました。
更にその三姉妹、HP表示が黄色く染まってい事に気が付きました。
要するにHPがMAXから結構減っている状態なのですが……これはダメージを負ったからではなく、空腹のせいだとの事。
何でも三姉妹、長女のエリーセがカジノで大損して怪しい所からお金を借り、その取立てから這う這うの体で逃げたせいで食料も満足に持ち出せなかったとか。
正直あまり同情できない気がしますが……そこはともかく、この森の中で食料がほとんどないということも問題でしょう。
どうにかしてやりたい、と高良山が周囲を見回しますと……いつの間にか、もとの世界で高良山が愛用していた風呂敷が落ちていることに気が付きます。
そしてその包みの中には、ちゃんこ作りに活躍していた料理器具が満載!
ですがその中に、「ちゃんこ横綱」と書いてある見慣れない容器が入っているではありませんか。
中には……灰のようなよくわからないものが入っていて……?
そうしていますと、高良山のもう一つのスキルが突然発動しました。
「ちゃんこレシピ」。
そのスキルが発動すると、空中にステータス表示のようなウインドウが現れ、見慣れない食材を使った何らかの料理のレシピが表示されたのです。
そのレシピに並んだ食材について、三姉妹に尋ねてみますと……どうやら先程倒したキラーベアをはじめとした、この辺りで採取できる野草や山菜の様で。
それらの食材はかなりあっさりと、十分な量手に入れられました。
……これはつまり……こういう事でしょう!!
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キラーベアの「熊肉ちゃんこ」でメシにしよう!!
高良山は大関になった今でもたまに弟弟子の為に腕を振るう料理自慢。
彼が作るちゃんこならば……異世界の食材の味がよっぽど悪くない限り、それなり以上のものになるはずです!!
手際よく料理を作っていく高良山ですが……問題は味付け。
臭みのある獣肉には味噌味が合うはずですが、異世界に都合よく味噌があるとはさすがに考えづらく……どうしたものかと考えていますと、あの「横綱ちゃんこ」の容器が光を放ち……!?




というわけで、異世界に召喚されてしまった力士が、モンスター退治に料理にと二つの意味で腕を振るう様子を描いていく本作。
異世界転生(転生はしてませんけど)であり、料理漫画であり、相撲漫画ともいえる、ハイブリッド作品となっております!!
この後物語は、三姉妹と高良山が利害の一致で共に行動をすることに。
高良山はこの異世界できっといるはずの、自分を元の世界に戻す方法を知っている誰かを探すため。
そして三姉妹は旅も道すがら高良山の料理の腕を生かした料理屋を開いてがっぽりもうけ……もとい、知名度を上げて高良山の人探しをしやすくする手伝いをするため。
様々なモンスターと料理、人との出会いが待つ冒険が始まるのです!!

あまりよく知られていないことかもしれませんが、「ちゃんこ」というのは鍋のことではありません。
言葉の由来は諸説あり、相撲部屋の師匠と弟子が「ちゃん(父)」と「子」のように囲むものだから、とも言われておりまして……
相撲取りの食事ならば、鍋だろうが揚げ物だろうがステーキだろうが、極端に言えばヨーグルトそのままだろうが、全てちゃんこなのです。
それだけに料理のレパートリーは豊富そのもの!!
ファンタジー世界の料理物も「ダンジョン飯」以降増えてまいりましたが、そこにさらに相撲・ちゃんこという要素を加えた、独特の味わいの作品なのです!!

ちなみに本作、まんがライフストーリアという萌え要素の強いウェブコミックで連載されておりまして、女性キャラは大目になっています。
が、高良山が絶対的な存在感を誇っておりまして……そちらの萌え要素は少なめのような……!
女性キャラよりも高良山の強さ、料理の腕、切れる頭、以外に女性慣れしていない可愛い所など、高良山に萌える漫画になっていたりするのです!!




今回はこんなところで!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!