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今回紹介いたしますのはこちら。

「転生悪女の黒歴史」第1巻 冬夏アキハル先生 

白泉社さんの花とゆめコミックスより刊行です。 


冬夏先生は15年にLaLaの新人賞を受賞してデビューした漫画家さんです。
デビュー後読みきりの発表を経て16年より同誌にて「 アイドルDTI」の連載を開始。
そちらの作品はアプリゲーム化やCDが発売されるなど人気を博しましたが、17年にwebコミックサイトに移籍後しばらくして連載は中断、そのまま宙に浮いた状態になってしまっております。

そんな冬夏先生の最新作となる本作は、昨今流行の異世界転生もの。
ですがその主流である主人公が元の世界で持っていた能力や転生先で手に入れたスキルで大活躍するタイプのお話ではないようで……?



佐藤コノハは、中学生の時に夢中になっていたのは、物語を書く事でした。
自分と同じ名前の美少女が活躍する、恋と魔法の冒険ファンタジーを。
夢中になってその物語をしたためていますと、お母さんからはそんなことやってないで勉強しろと怒られたりもするのですが、彼女はこう返すのです。
大切なのは学力じゃなくて、魔力なんだから、と……!!

当時のコノハは、いつか自分が異世界に召喚されるものだと信じて疑っていませんでした。
いつ異世界に呼ばれるかわからないから、と異世界に行く旨をしたためた手紙を残してみたり、異世界に行ったらどうなるのかを妄想してみたりしながら、日々を過ごしていたのです。
彼女が物語を書いていたのも、異世界召喚に備えた予行演習的な気持ちで行っていたこと。
妄想ははかどり、異世界に行ったら当然名前はそのままの美少女に生まれ変わるんだろうな、などという都合のいい要素も盛り込まれていたのですが……

そんな日々からもう10年の月日が経っていました。
すっかり大人になったコノハは、社会人となって一人暮らしを始めています。
ある時お母さんから、コノハが実家から出たから彼女の部屋の押し入れを整理したい、と電話がかかってきました。
必要なものは持って出たから大丈夫、と答えたコノハでしたが……その押し入れの中には例の物語が記された封印されしノートが入っていることをすっかり忘れていたようです。
そのノートを発見したお母さん、中学生のころ必死に書いていたこれはいったいなんだったんだ、と開いてみたのですが……
ちょうど時を同じくして、コノハの方にとんでもない出来事が巻き起こっていたのです!
暴走したトラックに撥ねられる、という……まさにテンプレ的な出来事が!!
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跳ね飛ばされ、宙に舞ったコノハ。
彼女の脳裏によぎる走馬燈は、くしくも例の物語のことでした。

魔法王国に住む伯爵令嬢、コノハは妹の婚約者候補として訪れたギノフォードという青年と出会い、恋に落ちてしまいます。
そんな様子を快く思わなかったのが、コノハの妹であるイアナ。
イアナは悪女として周囲に知られている女性で、姉や周囲に嫉妬しては騒ぎ散らすような仁ブルでした。
イアナの存在によってコノハはギノフォードと大手を振って会うこともできず、婚約の発表もできずにいたのですが、それでもコノハはイアナを愛しい妹として可愛がっていたのですが……
そんな彼女の思いも知らず、イアナはコノハに嫌がらせを繰り返し……さらにそれだけにとどまらず、その命まで狙いだすのです!
イアナが手に入れたのは、目にしたものの精神を崩壊させるという魔の書物、その名も「黒歴史」!
これでコノハを始末できると笑うイアナだったのですが、その際誤って黒歴史のページが開かれ、イアナはその中身を目の当たりにしてしまいました。
彼女の中を駆け巡る、奇妙な映像。
いつ異世界に呼ばれるかわからないからと両親あての手紙を書いたこと。
異世界に行ったら名前は今と同じでやっぱり美少女になるよね、と都合のいい設定をしたこと……!?
その奇妙な記憶に襲われたイアナは悶絶して倒れこむのですが、そこに王国の衛兵たちがなだれ込んできました!!
イアナ・マグノリア、殺害未遂の容疑で逮捕する!!
衛兵たちに連れられ、イアナは東国のみとなるのですが……
そのときすでに、イアナは今までのイアナではなくなっていたのです。
この場面知ってる。
イアナって、私が考えた物語の悪役の名前。
なんで私、佐藤コノハなのに、悪役の名前で呼ばれてんの!?
さっきまで会社帰りで、お母さんと電話してたはずなのに……!!
……そこで、「今の」イアナは気が付くのです。
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私、転生してる!!
この世界は中学から高校にかけて私が作り上げた妄想の産物。
これは黒歴史のプロローグだ。
自分と同じ名前のコノハというヒロインが、多くのイケメンに助けられながら世界を救うというリア充ストーリー。
でも、私が転生したのはその敵役、悪の妹、イアナだ!!

監獄に繋がれることになるはずのイアナでしたが、すぐにそこから救い出されることとなります。
それはすべて、そんな悪の妹に対しても限りなく優しい、美少女ヒロインの「コノハ」の働きかけのおかげでした。
大丈夫?心配したわ、一緒に帰りましょう。
そういってイアナを抱き寄せるコノハ……
中身がコノハのイアナは、その光景に戸惑うやら感動するやら。
自分の作りだしたキャラと実際会ってふれあっている。
いい声でいい匂いで非の打ちどころのない善人……マジ天使じゃん!と自分がなるはずのヒロインだけに、イアナは一気に彼女に心酔しきってしまうのです。
と、そこに今度やってきたのはメインヒーローのギノフォード!!
自分の理想のすべてを詰め込んだ存在だけに、それはもう素敵極まりない彼なのですが、その口から出てくる言葉は辛辣です。
コノハ、どうしてその女を殺さなかった!!
そいつは舞踏会の夜お前の馬車に暗殺者を仕向け、使用人に金を握らせて毒を盛ろうとし、ありも市内噂話を流して困らせ、今回は「黒歴史」でお前の精神を壊そうとした。
お前の馬と牛を入れ替えたのもこいつだぞ!!
……そう、コノハ(前世)はイアナにこれでもかと悪役要素を詰め込んでおりまして、相当あくどい事を大量にさせていたのです!!
結局コノハはそれでもイアナをかばい、ギノフォードが俺はお前がいなければ生きていけないんだ、と盛り上がってくれたおかげでイアナはとりあえず死刑やら投獄やらを逃れることに。
ですがおとがめなしとはいかず、伯爵家の所有する辺境の領地で三か月間の謹慎処分となったのです。

そんな辺境の土地に向かう馬車の中、イアナはというと……にっこにこでした。
ザ・ヒロイン、コノハの優しさに触れ、その命を救われたことに感動していたのです。
更にこの三か月の謹慎期間は、慣れないこの世界でのイロハを知るのに最適。
うまくすればこのまま物語からフェードアウトし、穏やかな余生を過ごすこともできるかもしれません。
……が、そこでイアナははたと気が付いてしまうのです。
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確かイアナは、伯爵家にやとわれたある男に、謹慎中に殺されてしまう……!!
このままでは、転生した早々ほとんど何もせず死んでしまうのです!!
その雇われた男というのは、子供のころ奴隷として売られているところをコノハに助けられて以来、ずっとコノハを慕い、彼女を守りたいと願っている人物。
そして、その辺境の屋敷でイアナの使用人として付き従うことになる、ソルという男なのです!!

屋敷にはやはりソルがおりました。
自分を殺す相手と、素直に同居し続けられるでしょうか?
いや、とてもじゃありませんがそんなことはできません。
しかしだからと言って、いきなりこいついやだと言って使用人を首にすることも無理というもの。
そこでイアナは何とかあの黒歴史の物語の全容を思い出し、自分が殺されるきっかけとなるフラグを回避し、さらに自分がコノハに対してもう害為すつもりがゼロであることを照明しようと思い立つのです!!
そうすれば死ななくて済む……!!
ソルに何かと警戒しながら、死亡フラグを回避し、あわよくばどこかの地味系貴族と結婚して平和な人生を歩む!!
人生丸ごと修正だ!!!
イアナは早速、コノハとギノフォードの結婚を認め、今までの非礼をわびる書状をしたため始めるのです!!

……が。
ソルによってその手紙が手渡されたのは、ギノフォードの元でした。
今まで散々元々のイアナに悩まされてきたギノフォードからすれば、突然そんな改心しました的な手紙を見せられても信じることなどできるはずもなく。
改心などあり得ない、だませるとでも思ったのか、愚かな女だ、とその書状を破り捨ててしまうのです!!
ですがソルは、イアナがただの「愚かな女」ではない、とギノフォードに告げるのです。
わずかな殺気にも敏感に反応していた彼女の勘の良さは侮れない。
ソルが自分を殺すために作られたキャラだ、ということを今のイアナは知っている……等ということを知るはずもないソルは、その情報ゆえに怯えまくっていただけの彼女の様子を「侮りがたい勘の鋭さ」と認識してしまったようです。
……そして、ソルはこう続けました。
あなたもそう思うから、
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謹慎中の暗殺を指示されたのでしょう?ギノフォード様。




というわけで、自分の描いた黒歴史的ストーリーの中の、途中で死ぬ悪役キャラに転生してしまうというまさかの物語となる本作。
イアナ(元コノハ)は、なんとかその死の未来を回避し、平和な人生を手に入れようと奮闘するのです。
そのために重要なことは、やはりまず自分が書いた物語のすべてを思い出すこと。
そして……最も危険な存在であるソルを説得といいますか、改心したと納得させること!
とは言いましても、今回のような書状一枚でどうにかなるほど簡単なことではありませんで。
ではどうすればいいのでしょう。
イアナはおぼろげながら徐々に思い出していく物語の展開と、その物語を作り出した自分に対しての感情などが過ぎり、この後一つの決心をすることとなるのです!
その決心から起こす行動が、イアナの運命を自分の望んでいた方向とはだいぶ違う方向へ進めてしまうこととなるのですが……
イアナには悪いものの、そのおかげで物語は予想しづらいものになっていきまして、より興味深い内容になっていくのです!!
はたしてイアナはこの世界で平和な余生を過ごすことができるのか?
そして徐々に変わっていってしまっているこの物語を、彼女の望むように修正していくことができるのか!?
気になる物語に、必死なイアナのコミカルな様子や、少女漫画らしく恋愛要素も混ぜ込まれ、イアナも読者も目の離せない展開が連続するのです!!

ちなみにこちらの単行本、190ページほどなのですが、表題作は130ページほどの収録となっています。
残りのページはといいますと、デビューからそれほど経っていない時期に発表された読み切り、「降霊の男子生徒(ブラックマント)」が掲載されているのです。
こちらは完全にシリアスな霊能アクションなのですが……
女子の中二心がくすぐられそうな要素がたっぷり盛り込まれたこちらの作品が、黒歴史をメインに据えた本作と同時に収録されているというのも何と言いますか……ある意味でベストマッチしている、のかもしれません!!


今回はこんなところで!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!