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今回紹介いたしますのはこちら。

「前科者」第2巻 原作・香川まさひと先生 作画・月島冬二先生 

小学館さんのビッグコミックスより刊行です。


さて、コンビニのアルバイトをしながら、仮釈放の前科者たちを更生に導く保護観察官のボランティアを行う女性、阿川佳代。
彼女の元にやって来る前科者は程度の差はあれやはり曲者ぞろい。
今回やって来る人物も、一癖ある人物のようで……



いつものように、手作りの牛丼を作って担当の前科者を待つ阿川。
ですが今回の人物は、いつもとは様子が違うようです。
予定の時間をだいぶ過ぎてもやってこないその人物ですが、阿川は食卓に正座したまま本を読み、ひたすら待ち続けています。
食事も冷めきった16時を回ったころ、流石に外の様子を見に行く阿川なのですが、同時に玄関の方から「こんちーす」と言う軽い挨拶が聞こえてきました。
やってきたのは、恐喝と傷害で2年の懲役を受けた女性、斎藤みどり。
ですが彼女、軽いのは挨拶だけではないのです!
出所の際、何も食べないで行った方がいい、と言う係員の話を無視して大好きな塩ラーメンを食べ、それだけならまだしも、その足でそのまま美容院に向かって髪の毛をしっかり脱色。
鮮やかな金髪にしてきたのです。
しかも手持ちが足りず、3000円貸してといきなり阿川にお願いしてきて……
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立場上当然お金を貸すことは出来ない阿川なのですが、みどりとともにわざわざやってきてお金を取りに来た美容院の方を追い返すのはもっとできない事。
平謝りしながらお金を払っておりますと、みどりはその間に家に上がり込み、阿川の寝室にまで入り込んでおりました。
寝室の中には本棚がずらりと並び、その蔵書量に驚くみどり。
ですがその興味はすぐ別に移り、レイプ犯とか担当したら怖くないか、他に今誰か担当しているのか、などといろいろと質問してくるのです。
とりあえずそれを当たり障りなく受け流す阿川、今度はご飯を食べないかと逆に尋ねるのですが、残念ながら彼女はラーメンを食べてお腹はいっぱい。
そこで今度は、銭湯のサービス券を出しますと……今度は素直に、くれ!と手を出すのでした。

銭湯で、ご機嫌に汗を流すみどり。
風呂上がりにマッサージチェアでくつろいでおりますと、お風呂上がりの親子の会話が聞こえてきました。
コーヒー牛乳飲んでいい?
まかしときな、パート代入って金持ちだ。
お母ちゃんは世話好きだねえ。
そうだよ、金持ちで世話好きだ。
そんな仲の良い親子の姿を……みどりは冷めきった瞳で見つめています。
あの子は知らねんだろうな。
この世には冗談ひとつ言ってくれない、世話嫌いの母親が存在するってことを。

コーヒー牛乳を堤防で飲みながら物思いにふけるみどり。
やっぱり自分で買ったコーヒー牛乳はうまくない。
そんなことを考えながら海を見ていますと、
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同じ堤防に座り、一人本を読んでいる女子中学生を見つけます。
彼女を見つけたみどり……それ!マンションのヤツじゃん!その感じ、高級マンションのCMみたいじゃん、海辺の町に引っ越してきましたって、1億円くらいの!と、なんだかすごい切り口で彼女に話しかけて行くのでした!!

そしてそのまま、みどりは本を貸してあげるから、と阿川の家に彼女を連れて行きます。
堤亜美、と名乗った彼女、緑のパワーにあっけにとられ、そのままついてきてしまった様子。
一連の話を聞いた阿川、彼女をむげにするわけにもいかず、あの寝室に連れて行き、海を見ながら読んでいた本は何なのか、と尋ねてみました。
彼女が取り出したのは……「杜子春」。
かの芥川龍之介の名作です。
芥川が好きなのかと尋ねますと、彼女は何やら答えづらそうに、好き、なのかな、とうつむいて……?

その後、みどりの押しに負けて夕ご飯も食べて行くことになった亜美。
牛丼に一口も手を付けないうちに七味をかけようとしたみどりに、亜美は食べる前にそれは失礼ですよ、と声をかけました。
素直にその指摘を受けるみどり、そうか、刑務所の牛丼はちょっと薄かったからつい癖で、とあっけらかんとつぶやくのですが……
当然、普通の子がいきなり出てくる刑務所と言う言葉に引っかからないわけがありません。
阿川はとっさにごまかそうとするのですが、みどりはいち早くその空気を察し、机をたたいて……
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ごまかそうとすんじゃねえよ、と指摘。
その恐ろしいまなざしを一瞬で元の人懐っこい顔に戻し、刑務所帰りでーす!とあっさりカミングアウト。
働いていた店の同僚が店長の愛人で、相当嫌な奴だったから、ボコって金をとったら逮捕された、とただ事ではない事情も包み隠さず話すのです。
すると亜美は……引いた様子でもなく、まっすぐみどりを見ながら質問をしてきました。
刑務所に行く人ってどんな人ですか?と。
みどりはすこし考えた後……
完全なワルが1割。
ズルいクズが5割。
哀しいみじめなのが3割。
あと1割が普通かな。
そう答えたのですが……亜美はすぐ、みどりさんはどれですか、と質問を続けるのです。
流石に湿原だと気づいたのか、失礼なことを聞いてますねと謝罪する亜美。
みどりは、別にいいよとことわり、そして……物憂げな瞳で、つぶやくように、私は普通、と答えるのでした。

その後、結局本を借りず帰っていった亜美。
また来ていいですか?と尋ねてきた彼女に、もちろん、と答えて阿川とみどりは彼女を見送ります。
そして彼女がいなくなると、みどりは阿川にこう語りかけるのです。
何か感じたんだよね、放っておいちゃいけないって。
特に何も感じなかった阿川は驚くのですが、みどりはアンタ保護司やってるのに鈍感だね、とチクリとやった後、問題大ありだ、と亜美の中の闇が根深いものであると確信しきった言葉でしめるのでした。

……二人と別れた後。
亜美は、SNSでつぶやきながら自宅らしき家へと帰っていきました。
そのつぶやきはこんなもの。
刑務所帰りの女の人と知り合いました。
刑務所にいる人間は、完全なワルが1割、ズルいクズが5割、哀しいみじめなのが3割、あと1割が普通だそうです。
そう言う自分は普通だそうです。
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バーカ!!!おまえもクズだろーが!!!
そう呟いた彼女がついたのは、超高級マンションの上層階。
そして今度は誰に聞かせるともなく、自分の口でこう呟くのです。
1億円のCM?
ここ、2億円なんですけど。




と言うわけで、いつもの前科者だけでなく、亜美と言うイレギュラーな存在も絡んだ問題が巻き起こる今巻。
第1巻では、愛憎関係入り混じる前科者とその関係者を、サスペンス調で描いていくストーリーが展開しました。
ですが今回は、また違った味わいのお話になっています。
亜美、みどり、阿川。
それぞれ違う生い立ちをしてきた三人ですが、実は三人とも、共通点のある問題を抱えていることがこの後わかります。
その問題は、亜美が読んでいた「杜子春」に関係する、難しい問題で……!!

大人しい深窓の令嬢に見えた亜美の、裏でみどりを罵倒する顔。
彼女は表では仲の良いふりをして何を狙っているのでしょうか?
自由人すぎるちゃらんぽらんな人間に見えるみどりの、意外な側面を見せつつ。亜美の問題に切り込んでいく物語となるこのシリーズ。
と同時に、阿川の抱えている問題も明かされていき……
三人が抱える問題は、すぐに解決する類のものではありません。
お話が進んでいくにつれ、逆にこじれて行くような様子もあります。
その中で、三人は立ち塞がる問題をどうやって潜り抜けて行くのか、あるいは向かい合っていくのか……
今巻も、読み応えある人間ドラマがしっかりと描写されている、名編となっております!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!