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今回紹介いたしますのはこちら。

「諸星大二郎劇場 第2集 オリオンラジオの夜」 諸星大二郎先生 

小学館さんのビッグコミックススペシャルより刊行です。



さて、17年の「雨の日はお化けが出るから」以来、久しぶりの続巻となる本シリーズ。
第1集は単行本未掲載作を中心に、時期や掲載誌がバラバラの作品を集めたものとなっていました。
ですがこの第2集では、表題作である連作「オリオンラジオの夜」をはじめ、近年ビッグコミックで掲載された短編がメインとなっています。
今回もその独自の魅力があふれる作品となっている本作、気になるその内容はと言いますと……



ケンジとリョータは、四つの草原を二人で歩いていました。
空には満天の星。
天の川が良く見え、景色は抜群。
ですがリョータの目的はその抜群の景色ではありません。
空飛ぶ円盤を見たい。
そんな子供らしいものでした。
最近相次いで報告されている空飛ぶ円盤の目撃例、リョータはそれに続けとばかりにケンジを連れてやってきたのです。
ですが同時に女の幽霊が出る、と言うありがたくない噂話も存在しておりまして……
怖いから自分を誘ったんだろう、とケンジはいうのですが、あくまでリョータは空飛ぶ円盤を見た時の証人として欲しいんだ、と言い張るのでした。
ちなみにケンジの本当の目的はと言うと、受験勉強の疲れを紛らわすちょっとした息抜き。
空飛ぶ円盤も女の幽霊も特に求めておらず、リョータに付き合ってあげながら、夜の星空に輝く天の川を見て、心を癒すのでした。

その時の事でした。
どこからともなく、音楽が聞こえてきたのは。
空飛ぶ円盤や幽霊がBGM付きで出てくるのは映画の世界だけで十分。
音の出どころを探りながら歩いていきますと、ほどなく寂しげな顔を浮かべながらたたずんでいる少年を発見します。
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その少年、二人の友人の田村でした。
いったいこんなところで何をしているんだと問いかけますと、彼はラジオを聞いていたのだ、と答えました。
何やらこの辺りでないと入らない放送があって、その放送を聞きたいがためにわざわざここに来ているらしいのですが……その放送は一回しか聞けたことないのだsぷです。
周波数を弄りながら、その放送を探す田村。
お目当ての放送局はなかなか見つかりません。
ラジオと格闘する彼を見て……ケンジは田村と親しくなった、こんな出来事を思い出していました。
それは当時同じクラスながら、あまり親しいとは言えなかった田村から、ケンジに話しかけてきたことから始まります。
お前んちって、レコードプレーヤーある?
今度行っていいかな、かけてみたいレコードがあってさ。
そう言って、田村がケンジの家で描けたレコードは「サウンド・オブ・サイレンス」。
それ以来ちょくちょくプレイヤーを使わせてもらいに来た田村でしたが、かける曲はいつもその「サウンド・オブ・サイレンス」なのでした。

ですが、そもそもなぜプレーヤーを持っていない田村がレコードを持っていたのでしょう。
聞くところによりますと、そのレコードは二年前行方知れずとなった、田村の兄が持っていたレコードなのだと言います。
田村はそんな兄の痕跡を求め、プレーヤーを借りて曲を聞いていたのですが……
今日ここでラジオを調整しいるのもその一環のようです。
3年前、田村の兄が春休みに一度だけ、ここに連れてきてくれたことがあったそうで。
その時にちょうど今日のような綺麗な天の川の下で、「夜中にしか入らないラジオ」を一緒に聞いたのだとか。
彼は今、兄の聴いていたそのラジオが流れる放送局を探して森をさ迷い歩いているのです。

田村の兄は、集団就職で東京に上京し、ある日突然蒸発しました。
その後連絡は一切つかず、会社は彼を解雇。
それでも依然、兄の消息は途切れたままです。
両親は、いろいろ辛いことがあったのか、それなら帰ってくればいいのに、などと話し合うのですが……
そんな兄の聴いていた、謎のラジオ。
田村はその電波を探し求め、去年事故があって立ち入り禁止になっている地区にまで踏み入ります。
しばらくすると、聞きなれない曲がちょうど終わり、聞きなれない言語での会話が続く、聞きなれない放送に当たります。
一体ここはどこの局なんだろう。
そんなことを考えながら、流れてきた曲を聞く一同、
流れる曲はケンジたちは知らない局ばかりですが、なかなか素敵な曲ばかりです。
田村の兄も、ちょくちょくここにきてこのラジオを聞いていたのでしょうか。
田村の記憶の中では、一度だけこのラジオを一緒にいた兄はこんなことを言っていたと言います。
この放送局、どこにあるんだろうな。
出来たら行ってみたいな、せめて電波がもっとはっきり入るところへ。
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この放送局は、冬の晴れている夜に見つかりやすいとのこと。
田村も時折ここにきて、この放送を聞いていたようです。
彼の兄も今、どこかでこの曲の放送を聞いているような、そんな感覚を覚えながら。

ですが田村は、急にこんなことを言いだしました。
今夜はよく聞こえるな、もうここに来れないかもしれないからよかったよ。
田村は4月から、親の仕事の都合で遠くに引っ越すのだそうです。
そうなれば、夜中にここに来ることもできないでしょう……
急に打ち明けられた別れに驚くケンジとリョータですが……その時、件の放送局から急に日本語が流れてきたではありませんか!!
こんばんは、今夜もオリオンラジオにようこそ。
これからしばらくの時間を音楽とともにお過ごしください。
「オリオンラジオ」。
この放送局はオリオンラジオと言うようです。
そんな局があることなど聞いたこともありませんが……
日本の放送局なのか、とその放送を注意深く聞いておりますと、「真夜中の三塁手」からのリクエストだと言う曲が流れ始めます。
その曲は何と
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「サウンド・オブ・サイレンス」!
田村はハッとして、これは自分の兄かもしれない、兄は昔野球をやっていて三塁手だったんだ、きっとこれは兄のペンネームだ、と言いだしました。
いくらなんでも気のせいではないかと思うケンジですが、その後放送から流れてきたこんなコメントもそれを裏付けているような気がします。
「故郷で聞いているかもしれない弟へ」。
やっぱり兄ちゃんだよ。
じっとラジオを見つめながら、田村はそうつぶやくのでした。

そうこうしている間に、放送はいよいよ佳境に差し掛かったようです。
そろそろお別れの時間が参りました。
今夜は晴れて天の川もオリオン座もよく見えたので、放送も綺麗にお聴きいただけたのではないかと思います。
放送が終わる前に、西の空を見ていただければ私とお会いできるかもしれませんね。
そんな放送の声に導かれるように、西の空を見上げる三人。
すると何と言う事でしょうか。
満天の星空の中に、
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にこりと笑う巨大な女性の顔らしきものがあるではありませんか!!
さらにそのすぐ横から、空飛ぶ円盤と思しき物体が飛んでいき……!!
それを見た瞬間、ケンジとリョータもあのリクエストが田村の兄のものであると確信できました。
夜空に浮かぶ、「女の幽霊」と「空飛ぶ円盤」。
そんなものを見せられては……「奇跡」と言うものは、世の中に存在するのだ、と信じざるを得ないのですから!!
円盤が消えた後、夜空の女性の顔もきれいさっぱり消えてしまっていました。
もう何事もなかったかのような、満天の星空。
ですが三人の中には、しっかりと「奇跡」の感触が残っているのです……




というわけで、不思議なラジオ、「オリオンラジオ」を巡る不思議なお話が収録された本作。
ケンジ、リョータ、村田の三人がしっかりと聞いた、「オリオンラジオ」。
それは、この時の三人が知る由もないものの、時空を超越した不思議極まりないラジオなのです。
ですがラジオがいかに普通ではなかろうと、リスナーにとってはそこはそこまで重要ではありません。
重要なのは、ラジオを通して大事な人物と繋がりあえるかどうか。
この後も、オリオンラジオによってつながる、様々な人物の物語が描かれていきます。
諸星先生ならではと言っていい、寂寥感ある人間同士のドラマ、オカルト的な恐ろしさ、そしてバリバリのSFと、先生らしい要素が詰め込まれた、6つのエピソードは秀逸そのもの!!
連作とはいえ1話完結型で読みやすく、どれも違った味わいが楽しめる名作となっているのです!!

そして「オリオンラジオの夜」シリーズではないお話も収録されています。
こちらも諸星先生の得意ジャンルを活かした、不思議な映画館を舞台にしたコメディとなっています。
不思議な力を持つその映画館で、少年はある少女に気に入られてしまい……?
ドタバタとほっこり、そしてマイナーすぎる映画のちょっとしたうんちくなども楽しめる、映画館にまつわる2編の短編も必見ですよ!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!