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今回紹介いたしますのはこちら。

「明日のエサ キミだから」第1巻 若杉公徳先生 

講談社さんのヤンマガKCより刊行です。


若杉先生は98年にヤンがマガジンの漫画賞で奨励賞を受賞し、同年にデビューしたベテランの漫画家さんです。
代表作はやはり数々のメディア化を果たした「デトロイト・メタル・シティ」でしょう。
その後も「みんな!エスパーだよ!」をはじめ、数々の作品を継続的に発表されています。

そんな若杉先生、やはりギャグマンガ家と言う印象をみなさんお持ちではないでしょうか。
本作は、タイトル的にもどことなくそっち系の印象を受けるものの、その内容はちょっぴり毛色が違うようで……?



俺は食われないぞ、ほら来い、終わりにしてやる。
そう言いながら、何やら瓶の巻き付いた棒を構えている少年。
ヘルメットに、野球のキャッチャーがつけるような防具をつけている彼は、学校の庭のような場所で「何か」に立ち向かっているようです。
俺が終わりにしてやる、俺が終わらせる!!
その台詞が終わる前に
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彼の人生が終わりました。
「怪物」としか形容できない、巨大な口を持つ得体のしれない生物に、一口で呑み込まれて。

ゆっくりとその少年を味わった怪物は、その小さな瞳で学校の教室の一つを見つめています。
その教室には、怪物のエサになるであろう人間の姿がいくつか見て取れます。
怪物はゆっくり、その巨大な口を大きく開いたかと思うと……
ゲップを一つして、前足をなめ始めるのです。

そんな一連の出来事を眺めていたのは、怪物の見つめていた教室にいた数名の生徒たちでした。
生唾を飲み込む笹塚と、その友人である万田。
彼の死にざまを見て大笑いする不良の大久保は、結局硫酸の瓶落としてんじゃねーか、最後まで使えねえ奴だったな、と暴言を吐くのです。
その暴言を諫めることはなく、硫酸攻撃失敗したのか、バケモノでも生物だから流石に硫酸喰ったら不味いはず、行けるはずなんだけど、と例刻に冷静な分析をするのは酒井です。
大久保の暴言を少しだけ諫めたのは、整った顔立ちの女子、江藤。
そしてひたすらサンドバッグをたたいて体を鍛えているショートカットの山吹に、一連の出来事をひたすら撮影している政井。
その7人のメンバーが、この学校の「生き残り」です。

あの怪物が突如として学校に現れ、大変な事態が巻き起こりました。
結果として残された道は籠城。
その籠城が始まって早くも60日が経過しようとしています。
なぜかネットや電話は繋がらず、怪物は後者のそばを離れる気配なし。
怪物は人間を食い尽くすまでここを離れることはなく、助けを呼ぶ手段はない。
そこで笹塚達は、助けが来るまで籠城し続けることを選びます。
勿論何もしなかったわけではありません。
当初は怪物に立ち向かうもの、隙をついて逃げようとするものもいましたが、多くの死者が生まれるだけの結果に終わり……
気が付けば、生き残りはたった7人になってしまっていました。
いや、気が付けばと言うのは誤りでしょう。
次々に犠牲が出るなかで、生き残りはあることに気が付きました。
それは、一日一人人間を食えば、怪物はとりあえず得物を探して校舎に侵入してくることはない、と言う事。
つまりこの生き残った7人は……
一日一人、生贄を捧げ続けて残った7人なのです!!

必要ない人物から生贄にする。
そんな冷酷な判断をしたのは、実は一度だけヘリが球場にやってきたから、と言う理由もあります。
そのヘリは負傷者を積み込んで飛び立ったきり二度とやってはきません。
それでもまたきっとくると粘り続け……頭脳派リーダーと暴力で押さえつける役割の、酒井と大久保が生贄を選び続けてきたのです。
笹塚と万田は、甲斐甲斐しく雑用をしたり、漫才まがいのやり取りをして生き残りを楽しませることで生贄を逃れ続けてきました。
ですがそれももう限界が来たようです。
酒井によって……とうとう、
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明日のエサは2人のどっちかね、と言われてしまったのです。
逆らいたいところですが、大久保の腕力には逆らえません。
首根っこをつかまれながら、俺が今ここでぶっ殺してやろうか、とすごまれては……何もできないのです。

その夜、笹塚と万田の二人はこんな会話をしました。
もっと早く餌にされると思ってた、笹塚のおかげだ。
でも死ぬまでに一回くらい、経験してから死にたかった……
……そう呟いてなく万田の気持ち、笹塚は痛いほどわかります。
そこで……大久保の彼女である江藤はさすがに無理なので、もう一人の女子である山吹にお願いに行きました。
あの、明日僕らエサなんで。
僕らのどっちかと、してもらえませんか。
……もちろんそんなとんでもないお願い、受け入れてもらえるわけがありません。
笹塚に強烈なボディブローを放った山吹、万田にも膝蹴りを入れた後、こう言い残して去って行くのです。
人間はエサなのか。
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戦え、生きろ。

その一言で、わずかながら闘志がよみがえる万田と笹塚。
このままではいずれにしろ明日か明後日には死んでしまうわけで。
そこで、一か八か怪物に立ち向かおうと言う事になりました。
その作戦はこう。
足の速い笹塚がおとりになって逃げている間に、万田が怪物の大きな口に硫酸の瓶を投げ込む!!
……勝算は少ないかもしれませんが、ゼロではなさそうです。
翌日、二人はしっかり打ち合わせをし、確認。
他の生き残りも、成功すれば儲けものとばかりに成り行きを見守ります。
怪物の待ち構える庭に降り立ち……生きて会おうぜ、と拳を合わせた二人。
まずは予定通り笹塚が怪物の気を惹きつけるためにダッシュで近づきます!!
俺達はお前なんかに負けない、生きるんだ!
そう怪物に怒鳴りつけて、自分に向かってくる怪物から逃げるように軌道変更、さらに猛ダッシュで加速!!
後は万田のタイミングだけ……と思ったその時でした。
硫酸の入った瓶の巻きつけられた棒がその場に落ちていて、
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万田が一人、梯子を上って逃げ出していたことに気付いたのは……



と言うわけで、いきなり残り数日のリミットから始まる本作。
そして主人公と思われていた笹塚がいきなり大ピンチに追い込まれて物語は始まることとなります。
このどうしようもなさそうな大ピンチを、笹塚は乗り越えることができるのでしょうか?
それとも……!!

この後も勿論物語は続いていきます。
メインキャラとして7人がとりあえず登場した本作ですが、キャラを掘り下げていくとかそう言うことは必要最小限のまま進み、驚くほどの早さで次々に犠牲者が出て行ってしまいます。
一体最後まで生き残るのは誰なのか、救助は来るのか、「明日のエサ」はだれなのか。
そんな緊迫感溢れる展開を、若杉先生の少しだけコミカルさを残したリズムでテンポ良く描いていきます。
そしてその犠牲者が出て行く流れの中で、この事件の始まりや、籠城するまでに何があったのか、籠城している最中に何があったのか、と言う物語のディティールが描かれていき……
さらに数名存在する、謎の多い人物の得体のしれなさにも少しだけ触れて行くのです。
ですがこのテンポで進んでいくと、物語は早々終わってしまいそう……と思ったところで、今巻のラストが待っています。
まさかの展開に驚きつつも、この怪物の正体が何となく見えてしまう気がするこのラストもまた非常に気になるもので……!!
コミカルとショッキング、怪物と人間、二つの面を描いていく本作にこれからも目が離せませんね!!




今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!