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今回紹介いたしますのはこちら。

「もういっぽん!」第1巻 村岡ユウ先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。


村岡先生は04年にヤングマガジンの漫画賞を受賞してデビューされた漫画家さんです。
その後様々な賞を受賞し、様々な雑誌で作品を発表、10年にようやくヤングジャンプの「馬鹿者のすべて」で連載デビューを果たしました。
そんな村岡先生はスポーツ漫画を得意とされておりまして、本作が連載されている週刊少年チャンピオンでは13年に「ウチコミ!!」を連載。
そちらは柔道漫画だったのですが、なんと本作も柔道漫画だったりします!
同じ雑誌で続編ではないのに二作連続して同じジャンルと言う快挙(?)を果たした本作、気になるその内容はと言いますと……?



まだ10秒ある!逆転できるよ!!
園田未知の元気な声が響き渡ります。
未知最後の中学柔道大会、今は唯一のチームメイトである滝川早苗の応援をしていました。
残り十秒に逆転を狙い、必死に大外刈りを狙う早苗。
ですがその決死の大外刈りは相手にこらえられてしまい、逆に大外刈りの餌食に。
早苗は背中から畳にたたきつけられてしまいます。
一本、と言う審判の高らかな声とともに、早苗の敗北は決定。
同時に、未知達の学校の敗退も決定してしまうのです。
なにせ未知達の学校は女子柔道部員がたった二人。
三人制の団体戦は常にいっぱいのアドバンテージをおった状態での勝負となり……この敗戦は、未知の最後の試合が消化試合になってしまうことを意味しています。
眼鏡をかけながら中学最後の試合が敗戦処理になっちゃった、と申し訳なさそうに謝る早苗ですが、未知はほとんど気にしていない様子。
おかげで緊張しなくて済むわ、と体をほぐし……
中学最後じゃなくて人生最後だし、スパッと一本勝ちで終わりにする!とガッツポーズを取るのです!
早苗はそんな未知の笑顔を見て、自身の頬も視線と緩ませ……うん、見たい!と送り出すのです!

対する相手は、あまり見覚えのない氷浦永遠と言う選手でした。
迷っていても仕方ありません。
とりあえず気合一発組み手争いに行くわけですが、永遠は速いし力もあるしと、開始数秒でその実力がうかがえる実力者の様子!
早速相手の投げを喰いそうになり、何とか一本は逃れたものの、技ありを取られてしまうのです。
すぐに身を翻して寝技に持ち込まれる最悪の展開は避けることができまして、再び気合とともに襟を取りに突進するのですが……
永遠の伸ばした手が未知の顔面を直撃!!
未知は思いっきりのけぞってしまうのですが……すぐに跳ね起きて、オッケー、気にすんなし!と笑顔を見せるのです!
ですがその笑顔から、つー、と鼻血が垂れてきてしまいまして……
結局鼻にティッシュを詰めての再開となるのです!!

まだまだ闘志満々の未知。
袖釣り込み腰、大外刈り、となぜか技名を叫びながら攻撃を仕掛けていきます。
その方が気合が入るとのことですが、流石に試合中にそれはいただけません。
結果「指導」をもらってしまうわけですが……
クライマックスは残り三十秒にやって来ました。
永遠の投げを喰ってしまった未知ですが、自らくるりと回って空中で一回転!
逆に永遠を投げるような形になったのです!!
早苗は思わず、背中から落ちた、一本一本!と叫び……
未知も、一本!?と喜んでしまいました。
が、審判の判断は技あり。
あれ?と戸惑う未知にできた隙を永遠は見逃しませんでした。
後ろからがっしりと未知を捕え、胴着を使った絞め技を決めたのです!!
早苗の無理しちゃダメ、参ったして!と言う叫びが聞こえているのかいないのか、ぐっと耐える未知なのですが……人間、首への絞め技と言うのは根性とかそう言うものでは絶対どうにもならないわけで。
すぐに
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コテ、と首を倒し、失神してしまうのでした!!

一本と勘違いしての失神一本負け。
我ながらあほすぎる、と後悔する未知なのですが、さらにその失神シーンが何者かによってネットに動画であげられてしまうのです!
相当へこむ状況でしょうが、そこはあまり堪えていないらしい未知。
それよりも、最後の試合くらい一本勝ちで終わりたかった、もう長い間投げて一本勝ちしていなかった、と言う事の方が悔いが残るようで。
結構頑張って龍守だったけど、あんまり強くなれなかったねえ。
未知は、寂し気にそう漏らすのです。

未知と早苗は、中学で柔道をやめることにしていました。
会場を後にしようと歩きながら、未知はこう早苗に語りかけます。
近くにある高校、青葉西に行く。
もう骨折も失禁(失神の事の様子!)もしない、しんどいから部活もしない、彼氏作っていっぱい遊ぶ!
きっと早苗をほったらかしにするから今から謝っとくごめん!
そんな妄想を膨らませているせいか、背後に先ほど試合をした永遠が近づいてきていることに気が付きません。
永遠は何かを話しかけようとしているようですが、ちょうどその時、未知達に話しかけて行く別の女子が現れてしまいます。
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彼女は南雲安奈。
未知とは小学生時代からの付き合いですが、南雲はずっと剣道部です。
同じ会場の隣の棟で剣道の試合があったようで、ここに来ていたのですが、南雲は準決勝まで進んだのだとか。
2回戦負けの未知は羨ましがるばかりなのですが……南雲はそんな未知をなぜか剣道の道に誘い込もうとことあるごとに勧誘しているようです。
さらに、あんたの頭じゃ青葉西に入れないんじゃないか、なんなら学年5位のこの南雲安奈が勉強に付き合ってやってもいい、と絵にかいたようなツンデレ感を出していく南雲。
なのですが、未知の隣にいる早苗は学年2位だったりしまして。
早苗に教えてもらうからいい、と冷たくあしらわれてしまうのです。
ちょっと冷たい感じのやり取りが多い南雲相手の未知ですが、決して仲が悪いわけではなく、この後一緒にご飯を食べに行く仲良しな三人。
そんな三人と、永遠を含めた四人が出会うことから……物語は動き出すのです!!

瞬く間に時間は過ぎ、9ヶ月が経ちました。
未知は早苗や南雲と一緒の青葉西高校に無事入学。
部活もしないから青春を謳歌しようと意気込むのですが、そこで南雲が中学までと同じように道を県道に誘いに来るのです!
初めて会った時に見た、余興のリンボーダンスをしていた未知の柔軟性を見て、きっと剣道にも役に立つと確信した、と力説する南雲。
未知が柔道をもうやらないつもりであることも知らず、強引に武道場に連れて行きます。
ところがそのとき武道場では、ちょっとしたトラブルが起きていました。
実は今年、部員がゼロになってしまった柔道部。
その為剣道部が武道場を全面使うことになり、畳を片付けようとしていたのですが……その畳片づけを、一人の女子が阻止しようとしていたのです!
そしてその女子は……あの、永遠ではありませんか!!
先生に聞いたの、三人いれば部活、できるって。
そう言って三本の指を立てて見せる永遠。
彼女の言わんとしたことがわかった南雲、未知や早苗の話も聞かず、未知は剣道部に入るんだ、とグイッと引っ張りました。
永遠もとっさに満ちの袖をつかみ……なぜか未知の取り合いに!?
未知はうちがもらう、と言う南雲に、一歩も引かずに引っ張る永遠。
その様子をみて、早苗の眼鏡がきらりと光りました。
直後、早苗は南雲の足を素早く払います。
バランスを崩した南雲の体は宙を舞い、転倒。
勢いよく引っ張っていた永遠は、未知の袖をつかんだまま、一緒に柔道しよ、と……なぜか投げを打つのです!!
が、未知はそこで何とか踏ん張り、
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逆に永遠を綺麗に投げて……!!
その投げを見た、その場にいた全員、南雲までもが思わずこう言ってしまいました。
一本、と!!

日焼けすると胴着がこすれてい痛いし、寝技で髪の毛抜けまくるし、寒稽古辛いし、胴着重いし、鼻血は出るし、骨折するし失神するし。
対して強くなれなかったからもうやらないって決めたの。
だから思い出させないでよ、「一本」の気持ちよさ。
その表情は、未知がやっぱり柔道が大好きで、本当は続けたいという気持ちがありありと浮かんでいるもので。
そんな表情を見て、早苗は思い起こすのです。
未知はきっと、後ろの席の子だからと何気なく声をかけたのであろう、女子少ないから柔道部はいらない?一本っつってさ、最高に気持ちいいよ!と言う明るい誘いの言葉。
早苗が今まで柔道をやってきたのは、そんな明るい未知に誘われたからなのです。
そんな早苗が、今度は未知にこう言うのです。
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未知、もっかいやらない?
寒稽古なんかなしで良い、土日も休みでいいじゃん。
怪我とか、失神も気をつけてさ。
日焼けもしないように、海なんか行かなきゃ大丈夫。
と、そう言いかけたところで、未知は口を開きました。
海は行く。
日焼け止めめっさ塗る!
柔道もする、彼氏も作る!!
そんな未知の彼女らしい言葉を、早苗は笑顔で聞くのでした。




と言うわけで、一度やめたはずの柔道を再び始めることにした未知達青葉西女子柔道部の物語を描いていく本作。
本作はしっかりとした柔道ものでありながら、スポ根感だけではない、ホンワカした雰囲気を併せ持った日常ものでもある作品となっています!
なんといっても、未知をはじめとした主要キャラたちが魅力的なのが本作の目を引くところ。
明るく元気で、前向きに気持ちのいい「一本」を目指す未知。
そんな未知に引っ張られながら、彼女をしっかり理解し、自分の意思も通す早苗。
実は引っ込み思案で気の弱いところがあるものの、それでも勇気を出して新生柔道部を立ち上げようとした永遠。
そんなそれぞれ違う魅力を持つ三人に、剣道部でありながら未知が好きすぎてちょっかいを出したり、励ましてくれたりする南雲を加えた四人を中心に、物語はうごいていくのです。

第一話から胸に来るもののある展開を見せてくれた本作ですが、この後も早苗や永遠を掘り下げる話を早速繰り広げてキャラクターにより感情移入をしやすくしてくれます。
そこから部活には欠かせない顧問の登場、そして柔道部の本格始動!!
この第1巻、熱血でありながら緩さもあり、薬と来る笑いと胸にジンと来る展開まで詰め込まれた、クオリティの高い一冊と言えましょう!!
柔道の試合自体はこれからが本番と言ったところですが、そのあたりもしっかりとした柔道漫画の経験がすでにある村岡先生ですから心配は皆無!
様々な味わいが楽しめる本作のこれからに期待しかありませんよ!!


……ちなみに個人的には南雲がすごく好きなんですが、このまま彼女は剣道部のまま一歩引いた立場で道を応援していくことになるのでしょうか?
柔道部に転部するのもちょっと違う気もしますし、それはそれでありな気もします。
ですがただ未知大好きっ子な彼女の、あんな表情やこんな表情がこれから先も見られることだけは確実でしょうから……南雲さんの活躍も超期待しております!!!!!



今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!